入れ替わりのモニター

廣瀬純七

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洗髪のレッスン

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「はぁ……今日は本当に大変だった……。明日も拓也の仕事しないといけないし……」  

そんなことを考えながら目を閉じ、ゆったりとした気持ちになったその時——。  

**ガラッ!**  

「おい、沙織!」  

突然ドアが開き、またしても沙織の体になった拓也がバスタオル姿で現れた。  

「えぇっ!? ちょ、また入ってくるの!?」  

「いや、違う違う! 風呂に入りたいんじゃなくて、ちょっと助けてほしいんだ!」  

「助けて……?」  

拓也(沙織)が怪訝な顔をすると、沙織の体の拓也は、少し恥ずかしそうに髪を指でくるくると弄りながら言った。  

「……**髪の洗い方が分からないんだけど!**」  

「は?」  

「いや、ほら! 俺の髪、こんなに長いの初めてだし、シャンプーしても全然泡立たないし、指通り悪いし……どうすればいいのか分からないんだよ!」  

「……そんなことでお風呂に来たの?」  

「そんなことじゃない! 女の髪って、すっごく絡まるんだぞ!? 変にゴシゴシ洗ったらダメな気がするし、リンスとかトリートメントとか何が違うのかも分からんし!」  

拓也(沙織)は呆れつつも、確かに気持ちは分からなくもなかった。  

「……まあ、確かに女の髪の毛のケアって慣れないと大変かもね。」  

「だろ!? だから教えてくれよ!」  

「分かった分かった、そこに座って!」  

拓也(沙織)は仕方なく、シャワーの前に座るよう指示した。沙織の体の拓也が素直に浴室の椅子に腰掛ける。  

「まず、しっかりお湯で流して予洗いするのよ。」  

「ふむふむ……」  

「それから、シャンプーを手に取って泡立てる。直接髪につけるんじゃなくて、手で泡立ててからね。」  

「なるほど……」  

「そして、爪を立てずに指の腹で優しくマッサージするように洗うの。ゴシゴシこすったらダメ!」  

「へぇ……思ったより繊細なんだな……」  

「で、すすぎをしっかりして、次はコンディショナー。これは頭皮にはつけないで、毛先中心になじませるの。しばらく置いてから流すのよ。」  

「えっ、リンスとコンディショナーって違うの?」  

「基本的には同じだけど、トリートメントはもっと補修効果があるのよ。」  

「お、おう……奥が深い……」  

沙織の体の拓也は感心しながら、言われた通りに髪を洗い始めた。  

「ほら、慣れれば簡単でしょ?」  

「……いや、やっぱり難しい! もういっそ洗ってくれない?」  

「は!? 何甘えてんのよ! 自分の体なんだから自分で洗いなさいよ!」  

「でも、今の俺、沙織の体だぞ!? つまり、お前の髪なんだから、お前がちゃんと洗うべきじゃないか?」  

「理屈がおかしいわよ!」  

「ちぇっ、仕方ねぇ……じゃあもう一回やってみる!」  

そう言って、沙織の体の拓也は真剣な顔で再びシャンプーを泡立て始めた。  

拓也(沙織)は、それを見ながら思わずクスッと笑ってしまった。  

(こんなことになるなんて思ってもみなかったけど、意外と楽しいかも……)  

そんなことを思いながら、拓也(沙織)は再び湯船に身を沈めたのだった。  
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