入れ替わりのモニター

廣瀬純七

文字の大きさ
12 / 32

色っぽい拓也

しおりを挟む
風呂場のドアが開き、湯気とともに拓也の体の沙織が出てきた。  

「ふぅ~、さっぱりした!」  

バスタオルを腰に巻き、まだ少し湯気が立ち上る体を軽く拭きながらリビングへ向かう。  

すると——  

「……えっ、何してんの?」  

ソファーに座っていたのは、**バスタオルを体に巻き、さらに頭にもタオルを巻いた姿の沙織の体の拓也** だった。  

「お風呂上がりにさ、こうやってタオル巻いたままでいると、なんかリラックスできるんだよね~♪」  

「いやいや、**何でパジャマ着てないの!?**」  

「え?」  

沙織(拓也)は目を丸くしながら、自分の姿をチラッと見てニヤリと笑った。  

「この格好って、色っぽいと思わない?」  

「……は?」  

拓也の体の沙織は、一瞬言葉を失った。  

確かに、女性がお風呂上がりにタオル一枚で髪にタオルを巻いている姿は、よくドラマや漫画で「色っぽい」とか言われる。  

でも、**今目の前にいるのは、中身が拓也なだけで見た目は完全に自分(沙織)の体である。**  

「……いや、そういうのは**中身がちゃんと女の子だからこそ**色っぽく見えるんであって、**拓也がやっても違和感しかない!**」  

「えぇ~、せっかく沙織の体なんだから、こういう色っぽい仕草も研究しとこうと思ってさ!」  

「ねえっ、それ研究する意味あるの!?」  

「まぁ、俺が戻った時に沙織が俺の色気にメロメロになっちゃうかもしれないし?」  

「なるわけないでしょ! 早くパジャマを着て!!」  

「えー、もうちょっとこのままでいいじゃん。」  

「**よくない!!** ほら、パジャマ取ってくるから待っててね!」  

呆れながらも、拓也の体の沙織はクローゼットへ向かった。  

すると、後ろから**くすくす**と笑う声が聞こえた。  

「……なに?」  

「いや、なんか俺たち、こうやってバカなこと言い合ってるのに、ちゃんと夫婦してるよなって思ってさ。」  

「……まぁ、それは否定しないけど。」  

拓也の体の沙織は思わず苦笑しながら、パジャマを手に戻ってきた。  

「はい、これ着て。」  

「はいはーい♪」  

沙織の体の拓也は、素直にパジャマを受け取ると、ようやくタオル姿を卒業することになった。  

——とはいえ、次は何をやらかしてくれるのか、油断はできないのだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

リアルメイドドール

廣瀬純七
SF
リアルなメイドドールが届いた西山健太の不思議な共同生活の話

ボディチェンジウォッチ

廣瀬純七
SF
体を交換できる腕時計で体を交換する男女の話

身体交換

廣瀬純七
SF
大富豪の老人の男性と若い女性が身体を交換する話

恋愛リベンジャーズ

廣瀬純七
SF
過去に戻って恋愛をやり直そうとした男が恋愛する相手の女性になってしまった物語

未来への転送

廣瀬純七
SF
未来に転送された男女の体が入れ替わる話

リボーン&リライフ

廣瀬純七
SF
性別を変えて過去に戻って人生をやり直す男の話

ビキニに恋した男

廣瀬純七
SF
ビキニを着たい男がビキニが似合う女性の体になる話

高校生とUFO

廣瀬純七
SF
UFOと遭遇した高校生の男女の体が入れ替わる話

処理中です...