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キャバクラ禁止令
しおりを挟む沙織(拓也)は思わず聞き返した。
「モテたってどういうこと!?」
「いや、だから……キャバクラに行ったら、**なぜかめちゃくちゃチヤホヤされて……**」
「なぜかって 何したの!?」
「何もしてないわよ!!」
拓也(沙織)は、手を振って必死に否定する。
「お前、俺の体で色目使ったんじゃないの!?」
「違うわよ! なんか勝手にモテたんだって!!」
「……はぁ?」
沙織(拓也)はジト目になり、腕を組んで拓也(沙織)をじっと睨んだ。
「つまり、俺の体でお店に行ったら、キャバ嬢たちにカッコいいとか、育ちが良さそうとか言われてチヤホヤされたってこと?」
「……うん、まぁ、そんな感じ?」
「……」
沙織(拓也)はふぅっとため息をついて、頭をポリポリ掻いた。
「……ま、まぁ、それは仕方ないかもね。」
「え?」
意外にも怒るどころか、納得している様子の沙織(拓也)に、拓也(沙織)は驚く。
「だって、私、女の子が好きなタイプのモテる男になってるわけでしょ?」
「……う、うん?」
「つまり、私の中に眠っていた『理想の男』が、私が演じる拓也ってことよね!」
「……な、なるほど?」
沙織(拓也)はよくわからないが、とりあえず肯定しておいた。
「まぁ、でもモテるのは良いとして、変なことしてないよな!?」
「してないわよ!!」
「本当に!?」
「本当よ!」
沙織(拓也)はじーっと拓也(沙織)を睨み、少し考えた後、ニヤリと笑った。
「……じゃあ、証拠として、キャバ嬢からもらったLINEとか、名刺とか全部見せてよ!**」
「えっ!? ちょ、ちょっと待って!! そんなの……」
「あるんじゃん!!」
「いや、これはあの、その、断れなくて!」
「言い訳無用!!今すぐ全部消去して!!」
拓也(沙織)は渋々スマホを取り出し、キャバ嬢たちから送られてきたLINEや名刺を一つずつ削除した。
「もう……まったく……」
沙織(拓也)はため息をつきながらも、なぜかちょっと満足そうに微笑んでいた。
「ふふ……まぁ、私の魅力は侮れないでしょ?」
「……まぁな……」
(正直、俺が思ってたより遥かに男としてのモテるスペックが高かったことを認めざるを得ない……)
「でも、もうキャバクラは禁止だよ!! わかった!?」
「……はい……」
こうして、沙織のキャバクラデビューは一瞬で幕を閉じたのだった。
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