意識転送装置

廣瀬純七

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未来の夫になったOL

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未来の自分がどんな人生を歩んでいるのか、そしてどれだけ成長しているのかを知りたくて、私は意識転送装置を予約した。最新の技術で、未来の自分に短時間だけ意識を転送できるという。その日は朝からそわそわしっぱなしで、何度も時計を見ては心の準備を整えた。

「それでは、準備はいいですか?」

白衣を着た研究者がにこやかに質問してきた。私はうなずき、装置の椅子に座る。まばゆい光とともに意識がふっと薄れていき、気がついたときには見慣れない場所に立っていた。

---

そこは、広々としたリビングルームだった。木のぬくもりがある家具が整然と並び、窓からは緑の景色が広がっている。私は思わずうっとりと見渡した。どうやら未来の自分は、素敵な家で幸せに暮らしているらしい。

「……え?」

しかし、次の瞬間、驚愕の事実に気づいた。私の視界に映る手が、どう見ても男性の手なのだ。しかも、手を広げるとずっしりとした重さがあり、声を出してみれば低く響く男性の声。心臓がバクバクと高鳴り、鏡を探して部屋中を歩き回る。

やっと見つけた洗面台の鏡に映っていたのは、スーツ姿の見知らぬ男性の姿だった。まさか…これが私の未来の夫?

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その瞬間、リビングのドアが開き、女性が入ってきた。彼女は、見覚えがある顔をしていた。そう、まさに未来の「私」だった。彼女は私を見て微笑み、優しく声をかける。

「どうしたの? 今日は朝からぼんやりしてるわね。」

私の意識は混乱し、焦って彼女に答えようとするが、言葉が出てこない。これは意識転送装置の手違いなのか、それとも何かのバグなのか。

「あ…いや、何でもないよ。」低い声が自分から発せられ、ぎこちなく笑ってみせる。「ただ、ちょっと考えごとをしてただけだ。」

未来の「私」は心配そうに見つめながらも、夕飯の支度に向かう。その後ろ姿を見つめながら、私は改めて目の前の状況を整理し始めた。

どうやら、意識転送装置のミスで「未来の夫」の体に入ってしまったらしい。しかし、これが原因で装置が壊れたらどうしよう?「わたし」に戻れるのか、もはや自分でもわからない。

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夕食が終わり、二人でソファに座った。彼女は寄り添うように私に身を寄せ、自然な仕草で手を握ってきた。そのぬくもりを感じながら、不思議な感覚が心を満たしていく。愛されている、そんな気持ちが流れ込んでくるようだった。

未来の私は、こんなふうに「夫」として愛されているのだと知ると、胸がじんと熱くなった。

数分後、彼女は穏やかな笑顔を浮かべ、ふと私にささやいた。

「あなたがいてくれて、本当に幸せだわ。」

その言葉に思わず涙が込み上げてきた。未来の私は、愛されて、そして愛することを学びながら生きている。言葉にしきれない感情が溢れて、彼女を抱きしめる。

「……本当に、ありがとう。」

それが私が伝えられる精一杯の言葉だった。

---

翌朝、私は元の時間軸に戻り、自分の体に戻った。しかし、あの経験は決して忘れられない。愛することの深さ、そして愛されることの尊さを、私は「未来の夫」の体を通じて学んだのだ。

それ以来、私は毎日を大切に生きようと心に決めた。いつか出会うその人を思いながら。
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