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妊婦になった男
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私は意識転送装置の椅子に座り、未来の自分に意識を転送する準備を整えた。興味は尽きない。この転送で、未来の私がどんな生活をしているのか、どれだけ成長しているのかを知れるのだ。
「準備はよろしいですか?」と、白衣を着た研究員が尋ねてきた。
「はい、大丈夫です」と私は返事をし、装置が作動するのを待った。数秒後、眩しい光に包まれたかと思うと、ふっと意識が遠のき、気がつくと見知らぬ部屋に立っていた。
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部屋には、やわらかい日差しが差し込み、落ち着いた空気が漂っている。温かみのあるインテリアと、花柄のカーテンがかかる窓がある。どうやら、未来の自分は素敵な家で暮らしているらしいと思ったのも束の間、体に違和感を覚えた。
まず目に入ったのは、ふっくらとした手。思わず手を見つめ、全身を確認しようと立ち上がろうとしたが、下腹部に圧迫感があって、スムーズに動けない。私は驚いてお腹を触り、鏡を探して慌てて歩き出した。
鏡に映っていたのは、知らない女性…いや、どうやら「未来の自分の妻」らしき妊婦の姿だった。
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「ま、まさか…」私は動揺を隠せず、再び自分のふっくらしたお腹をさすった。確かに、これは妊娠している体だ。お腹が重く、胎動を感じる。
「これは一体…」
呆然としながらも、ふと手を当てていたお腹から、小さな生命の動きを感じた。その瞬間、驚きが愛おしさに変わった。小さく感じる胎児の動きに、自然と涙が込み上げてきた。未来の自分には、家族がいるのだ。そして、今まさに、新しい命が生まれようとしている。
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その時、玄関が開く音がし、見慣れない男性…おそらく未来の「私」が入ってきた。彼、つまり未来の自分は、少し疲れている様子でスーツのジャケットを脱ぎながら微笑んで近づいてきた。
「ただいま、調子はどう?」
彼は優しく声をかけ、私のお腹に手を当てた。私は一瞬戸惑いながらも微笑み返し、「今日は…少し疲れちゃったかな」と口にしてみる。未来の自分は、安心させるようにそっと私の手を握り、リビングに誘導してくれた。
リビングのソファに座り、彼は手慣れた様子で私の足元に枕を置いてくれた。しばらく夫婦として過ごす時間が不思議で、幸せだった。
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それから数週間が経過し、私は未来の妻の体で、日々変わっていくお腹や、胎児の成長を感じ続けていた。胎動が日々強くなるたびに、どこか心が満たされていくのを感じた。誰かを守りたい、そんな感情がじんわりと湧き上がってくる。
そして、ある夜、急に激しい痛みが走った。どうやら「陣痛」が始まったらしい。私は耐えきれない痛みに、何度も深呼吸をしながらベッドにしがみついた。未来の「私」は焦った表情で医者に連絡し、励ましの言葉をかけ続けてくれたが、痛みは想像を絶するものだった。
それから何時間も陣痛に耐え、ようやく分娩室に運ばれた。汗だくになりながら、全身全霊で子どもを産もうと努力する。何度も何度も、もうダメだと思ったが、最後の力を振り絞って力を込めた瞬間、ふっと痛みが遠のき、赤ちゃんの産声が響いた。
小さくても力強い泣き声に、私は感動の涙を流しながら、その子を抱きしめた。肌に触れる温かさと柔らかさに、命の尊さを深く感じた。
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気がつくと、私は元の自分に戻っていた。意識転送装置の椅子に座り、元の体に戻った感覚を確かめながらも、あの感動は色褪せることなく心に残っていた。
未来で経験した母としての時間、そして命を育む奇跡の瞬間。たとえ一時的な体験だったとしても、その尊さを私はこれからも忘れないだろう。そして、いつかその日が来ることを心から楽しみにするようになった。
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