バーチャル性転換システム

廣瀬純七

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突然のプロポーズ

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バーチャルな世界にログインするたび、幸一は女性として過ごす時間に不思議な安らぎを感じていた。そして最近は、バーチャルな世界の「幸一」とも頻繁に会うようになっていた。自分自身と会話するという奇妙さにも慣れ、むしろそれが心地よいと感じるようになっていた。

ある日、カフェで「幸一」がこう言った。

「今度、一緒にどこか出かけませんか?」  

バーチャルな世界でのデート――その響きに、幸一は一瞬ためらった。しかし、「自分」から誘われることの珍しさに興味が湧き、自然と頷いていた。

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### バーチャルなデート

デート当日、幸一はいつも以上に女性らしい服装を選び、少しだけ気分が高揚している自分に気づいた。「彼」が提案したのは、バーチャルな世界に広がる美しいビーチリゾートだった。  

「ここ、現実にはない場所だけど、リアルそのものだろ?」  

幸一はその景色に目を奪われた。夕陽が海に溶け込むように広がり、波音が静かに耳を包む。「自分」からのプレゼントのようなその景色に、幸一は心が洗われる思いだった。

二人はビーチを歩きながら、仕事のこと、日々の生活、そして現実では語らないような夢について語り合った。「彼」は自然体で、時折ユーモアを交えながら幸一を楽しませてくれた。  

「君といると、時間があっという間に過ぎるよ。」  

その言葉に、幸一は微妙な違和感を覚えながらも、どこか胸が暖かくなるのを感じた。

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### 帰り際の不意打ち

デートが終わり、夕闇に包まれた街を歩いていると、彼がふと足を止めた。  

「美由紀さん……いや、君に言いたいことがある。」  

幸一は「美由紀」と名乗った自分が、なぜか胸の奥でざわつくのを感じた。  

「俺は、君に出会ってからずっと考えていた。こんなに自然に話せる相手に出会ったのは初めてだって。」  

彼の真剣な表情に、幸一は息を飲んだ。  

「俺と……結婚を考えてくれないか?」  

その言葉が落ちた瞬間、時間が止まったように感じた。現実でもバーチャルでも、こんな状況を想像したことはなかった。

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### 困惑と葛藤

幸一はどう答えるべきかわからず、動揺を隠せなかった。この「彼」は自分自身――その事実が、彼の言葉をより重たく感じさせた。  

「……どうしてそんなことを?」  

「なんでって、君と一緒にいるときが、俺にとって一番幸せだからだ。」  

その答えに、幸一はさらに困惑した。自分が「自分」を愛しているのか――それとも、女性としての姿を持つ「別の存在」としての自分に惹かれているのか。その境界は曖昧で、答えを見つけるのは難しかった。

「答えを急がせるつもりはない。ただ、俺の気持ちは伝えておきたかったんだ。」  

「彼」の真剣な眼差しに、幸一は動揺を隠せないまま、ぎこちなく頷いた。

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### 現実に戻った後の余韻

現実に戻った幸一は、バーチャルでの出来事が頭から離れなかった。「自分」としての幸一が自分にプロポーズした――その体験は、現実でも心の奥に影響を及ぼしていた。

「俺は、一体どうしたいんだ?」  

美由紀との関係、バーチャルでの自分との関係――そのすべてが混在し、幸一は自分自身の在り方を問い直す必要に迫られていた。

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