バーチャル性転換システム

廣瀬純七

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二人の美由紀

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バーチャルな世界の公園は、現実では味わえないほど美しく整えられていた。青々とした芝生、鮮やかな花々、そして穏やかな風が、幸一の頬を優しく撫でていく。幸一は女性のアバターとしてこの世界に再び足を踏み入れ、「幸一」や他の人々との交流を楽しむ日々を送っていた。

その日、公園のベンチで本を読んでいる一人の女性が目に留まった。彼女は現実世界の恋人、中村美由紀のアバターだった。しかし、バーチャルな世界の美由紀は、現実の美由紀とはまったく別人のように見えた。彼女の目には温かさがあり、まるで初めて会う人のような新鮮なオーラを放っていた。

「……どうしよう、声をかけてみようか。」  

迷った末、幸一は意を決して彼女に近づいた。

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「こんにちは。」  

そう声をかけると、美由紀は顔を上げ、柔らかな笑みを浮かべた。

「あら、こんにちは。何かご用ですか?」  

その親しみやすい雰囲気に、幸一の緊張が少しほぐれた。  

「ここ、素敵な場所ですね。……隣、いいですか?」  

「ええ、どうぞ。」  

幸一がベンチに腰を下ろすと、美由紀は本を閉じ、優しい眼差しを向けた。  

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### 名前を名乗る

少しの沈黙の後、幸一は意を決して自己紹介をすることにした。

「私は……中村美由紀です。」  

その言葉を聞いた瞬間、美由紀の表情が驚きで固まった。

「えっ!?中村美由紀……?」   

すると、美由紀は声を上げて笑い出した。

「何だか運命みたい!私と同じ名前だなんて、すごく気が合いそうね!」  

その言葉に幸一は戸惑いながらも安堵し、笑顔を返した。

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### 意気投合

その後、二人は自然と会話を弾ませた。美由紀は、バーチャルな世界で過ごす楽しさや、現実ではなかなか出会えない人々と交流できる魅力について語った。幸一は、そんな彼女の無邪気な様子に、現実の美由紀では見られない新たな一面を垣間見たような気がした。

「美由紀さん……不思議なご縁ですね。」  

「ほんとね!こういうのもこの世界の醍醐味かもね。」  

美由紀の笑顔を見ながら、幸一は胸の奥に奇妙な感覚を覚えた。これは現実の美由紀ではない。しかし、この美由紀もまた、確かに一人の存在として目の前にいる。  

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### 別れ際の約束

日が暮れかける頃、二人はベンチを立ち上がった。  

「今日は楽しかったわ。また会える?」  

「ええ、もちろん。またお話ししましょう。」  

美由紀は幸一に向かって手を振り、夕陽に溶け込むように去っていった。その背中を見送りながら、幸一は不思議な感情に包まれていた。

「中村美由紀……現実の美由紀とは、どんな風に感じるんだろう。」  

彼女との再会を楽しみにしながら、幸一はその場を後にした。

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