高校生とUFO

廣瀬純七

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下校中の二人

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放課後の夕暮れ、静かな校舎を背に、高校生のカオルとリョウは並んで歩いていた。二人は幼馴染みで、毎日のように一緒に帰っていたが、この日はいつもと何かが違うと感じていた。どこか重苦しい空気が辺りに漂っているようで、普段なら明るいカオルもどこか黙りがちだった。

「今日、空が変じゃない?」カオルが立ち止まって上を見上げる。

「本当だ。何だろう、あの雲…」リョウもその視線を追うと、奇妙にねじれたような形の雲が空に浮かんでいるのに気づいた。

しばらく見つめていると、その雲の影が徐々に大きくなり、彼らの真上に広がっていった。冷たい風が吹き、辺りの木々がざわめく。二人は息をのんだ。

「う、嘘だろ…?」リョウが震える声で言った。

巨大な円盤状の物体が、ゆっくりと姿を現したのだ。それは彼らが見たこともないような無機質な銀色に輝いていて、辺りの景色を不気味な青白い光で染め上げていた。車一台どころか、学校のグラウンドを覆い尽くすほどの大きさだった。

「UFOだ…」カオルが震えながらつぶやいた。

円盤の中央部分が光を放ちながら、まるで何かを探すように二人の頭上をゆっくりと旋回している。彼らは立ちすくんだまま、視線を逸らすこともできなかった。

「逃げよう、カオル!」リョウがカオルの腕を掴んで引っ張ろうとしたが、彼女は動こうとしなかった。

「待って、リョウ。何か…呼ばれてる気がする。」

カオルの目は、青白い光の中心を見つめていた。何かが心に直接響いてくるような不思議な感覚が彼女を包んでいた。それは恐怖とも興奮とも違う、不思議な安らぎをもたらしていた。

「カオル、何言ってるんだ!」リョウが焦る。

しかし、その瞬間、円盤の光が強く輝き、二人はまるで磁石に引き寄せられるかのように浮かび上がった。地面から足が離れ、彼らは光の中に吸い込まれていった。

気が付いたとき、二人は見知らぬ場所に立っていた。円形の白い部屋で、柔らかな光が辺りを照らしている。壁には何の装飾もなく、ただ静寂だけが支配していた。

「ここは…どこ?」カオルがリョウにしがみついた。

すると、奥から背の高い生物がゆっくりと現れた。人間に似ているが、目が大きく、細長い四肢を持っていた。二人は声も出せずに震えた。

その生物は、何も言わずに手を差し伸べてきた。そして、頭の中に直接響く声が聞こえた。

「怖がらないで。我々はただ、あなたたちに会いたかっただけだ。」

言葉ではなく、まるで心が直接触れ合ったかのような感覚だった。カオルは、不思議と恐怖が消え、ただ目の前の存在を見つめた。

「なぜ私たちを…?」

「あなたたちは特別な存在だ。我々にはわからないが、あなたたちの心の奥には、我々と同じものがある。」

二人は理解できないまま、ただその言葉を受け止めた。やがて再び青白い光が彼らを包み込み、次の瞬間には校舎の前に立っていた。

「あれは…夢?」リョウが呆然とした表情で呟いた。

しかし、カオルは首を振った。「違うよ。ちゃんと、あの人たちがいた。…私たち、選ばれたんだと思う。」

その言葉を聞きながら、リョウもまた心のどこかに奇妙な感覚が残っているのを感じていた。二人は再び空を見上げたが、そこにはもう何もなかった。ただ、二人の心の中にだけ、あの青白い光と未知の存在の記憶が深く刻まれていた。
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