入れ替わり夫婦

廣瀬純七

文字の大きさ
11 / 20

新しい洋服と下着

しおりを挟む

 湯上がりの脱衣所は、白い湯気がまだほんのり漂い、二人の頬を赤らめていた。タオルで髪を拭きながら、隆司の姿をした美咲がにやりと笑う。

「じゃあ、試してみよっか!」

 リビングに持ち込んだ紙袋を開けると、今日ショッピングモールで買ったワンピースやブラウス、そして――ランジェリーの袋が顔を覗かせる。思わず二人は同時に袋を見つめ、そして顔を見合わせて、声を揃えて笑った。

「……やっぱり、ちょっと恥ずかしいな」
 美咲の姿をした隆司が、タオルで頬を隠しながらつぶやく。

「今さらでしょ? お店であんなに堂々と選んでたくせに」
 隆司の低い声で笑いながら、美咲は袋の中から水色の下着セットを取り出した。蛍光灯の下でやけに鮮やかに映える。
「はい、まずはこれ!」

「えっ、いきなりそっち!?」
 隆司が目を丸くする。
「服の前に下着から着けるのが基本でしょ?」
「いや、まあ……そうだけど……」

 結局押し切られる形で、二人はお互い背中を向けて着替え始めた。カサカサと袋から取り出す音、布を身にまとう気配。静かなリビングに、妙に生々しい音だけが響く。

「な、なんか……変な感じだな」
 隆司は鏡に映る自分――正確には美咲の身体に、可愛らしい水色の下着をまとった姿を見て、思わず頬を押さえた。
「意外に似合ってる……って、自分で言うのも変だけど」

「ほらね、私が選んだんだから!」
 振り返った隆司(美咲の体)は、シンプルなワンピースの下に白いキャミソールを着ている。長身に柔らかい服が不思議と映えて、まるでモデルのように見えた。
「すっごく似合ってるよ!」

「からかわないでくれよ……」
 そう言いつつも、隆司はまんざらでもなさそうに鏡を見直した。

 次は買った洋服に袖を通していく。隆司(美咲の体)は女性らしいワンピースに腕を通すと意外にすっきり見えることに驚いていた。
「へえ……着てみると、案外悪くないんだな」

 隆司(美咲の体)はブラウスとスカートに身を包み、照れながら裾を引っ張っていた。
「うわ……なんか、風通しが良すぎて落ち着かないな」
「スカートってそういうものよ。でも可愛い!」
「やめろって……!」

 鏡の前に立つ美咲の姿の隆司は普段の姿とはまるで違う。だが不思議としっくりきて、鏡に映る自分の姿を見ながら、くすりと笑った。

「なあ……本当に変な夫婦だよな、俺たち」
「うん。でも、それが楽しいじゃない」

 そう言って二人は笑い合いあった。
 その姿はきっと、どこから見ても“普通じゃない”。けれど当人たちにとっては、こんな体験もまた二人だけの秘密であり、宝物になりつつあった。

---
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

熟女教師に何度も迫られて…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
二度と味わえない体験をした実話中心のショート・ショート集です

夫婦交錯

山田森湖
恋愛
同じマンションの隣の部屋の同い年の夫婦。思いの交錯、運命かそれとも・・・・。 少しアダルトなラブコメ

BODY SWAP

廣瀬純七
大衆娯楽
ある日突然に体が入れ替わった純と拓也の話

あべこべな世界

廣瀬純七
ファンタジー
男女の立場が入れ替わったあべこべな世界で想像を越える不思議な日常を体験した健太の話

性別交換ノート

廣瀬純七
ファンタジー
性別を交換できるノートを手に入れた高校生の山本渚の物語

秘書と社長の秘密

廣瀬純七
大衆娯楽
社内の調査のため、社長・高橋健一はこっそり秘書・木村由紀と不思議なアプリで入れ替わることに。 突然“社長役”を任された由紀と、自由に動ける立場を手に入れた高橋。 ふたりの秘密の入れ替わり作戦は、どの様な結末になるのか?

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

処理中です...