入れ替わりノート

廣瀬純七

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歩美の憤慨

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午後の授業が終わり、教室で雑談していた歩美(朋美の体)は、隣の席の美咲から衝撃的な一言を聞いた。  

「ねえ、聞いた?北原さんが昼休みに男子トイレに入ったって話。」  

「…は?」  
一瞬、言葉の意味が理解できなかった。  

「しかも、小便器の前に立ってしていたから、隣にいた男子がめっちゃ驚いたんだって!」  
美咲がクスクスと笑いながら話すのを聞いて、歩美(朋美の体)は内心で爆発寸前だった。  
(ちょっと待ってよ…あのバカ、何やってんの!?)  

そのまま黙っていることができず、歩美(朋美の体)は隆司(歩美の体)の机へと向かった。  

「ちょっと、隆司、来て!」  
怒りを抑えきれない様子で、歩美は机をバンと叩いて隣の図書室に隆司を連れ出した。

「えっ、な、なんだよ…?」  
隆司は、いきなり怒鳴られて驚いた顔をする。  

「男子トイレに入ったって、本当なの!?」  
「え…あ、いや、それは…その…。」  
隆司は目を泳がせながら、言い訳を考えようとしたが、言葉が見つからない。  

「信じられない!ただでさえこの状況がややこしいのに、なんでそんな恥ずかしいことするのよ!」  

「いや、違うんだ!俺だってわざとやったわけじゃなくて、つい、習慣でさ…!」  

「つい!?どう考えても女子が男子トイレに入ったら変だって気づくでしょ!?」  
歩美は手を腰に当て、険しい表情で睨みつけた。  

「いや、だから、その…俺だって焦ったんだよ!隣に男子がいた時点で、すぐ女子トイレに入ったし…!」  

「それで解決したと思ってるの?周りがどう思うか考えてよ!」  
歩美の声は、さらにヒートアップしていく。  

「だって、仕方ないだろ!まだ慣れてないんだから!」  
隆司もついに反論し始めた。  

「慣れてないとか関係ない!これは私の体なの!もっと慎重に行動してよね!」  
歩美の言葉に、隆司は少し気まずそうな顔をした。  

「…悪かったよ。反省してる。」  
隆司は渋々頭を下げたが、その態度がまた歩美の神経を逆なでする。  

「反省してるって顔じゃないんだけど!これ以上私の体で変なことしないでよね!」  

「分かったってば!もう男子トイレなんか二度と入らない!」  
「当たり前でしょ!」  

---

周りのクラスメイトたちは、二人の激しいやり取りを興味津々に聞いていた。  
「ねえ、あの二人って、仲悪いんだか仲良いんだか、分かんないよね。」  
「でも、橘さんが男子トイレに入ったって話、ガチだったんだな…。」  

そんな周囲の視線を感じながらも、二人は気づかずに言い合いを続けていた。  

---

その日の放課後、帰り道で歩美(朋美の体)はため息をついた。  
「はあ…こんなことが続いたら、本当に元の生活に戻れなくなるかも。」  

「俺だって、好きで失敗してるわけじゃないんだぞ…。ただでさえ、この体に慣れるの大変なんだから。」  

「それなら、もっと慎重に行動してよね。」  

歩道を並んで歩きながら、二人は不安と苛立ちを抱えたまま、それぞれの家へと向かった。  

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