夫の妊娠

再びの妊娠と入れ替わり

それから一年が経ち、穏やかな日常を取り戻していたある朝、浩太が目を覚ますと、またあの見覚えのない体の感覚がよみがえっていた。体が妙に重く、ふと腕を見ると細くなっている。驚いて跳ね起きると、目の前にいたのは…自分の顔をした妻の由香だった。

「浩太…また…？」由香の声で話す自分を見つめ、思わず顔を見合わせた二人は、沈黙のあと同時に深いため息をついた。

「なんでまた入れ替わってるんだ…？もうこれで最後だって思ってたのに！」浩太は頭を抱え、どうしてこんなことがまた起こるのかと嘆くが、由香も同じ気持ちだった。

それでもまずは状況を把握しようと、二人は病院で検査を受けることにした。受付ではまた変な目で見られつつも、なんとか検査をお願いすると、少し経って医師が結果を持って診察室に戻ってきた。そして、にわかに信じられない事実を口にした。

「…どうやら、由香さんの体は再び妊娠されていますね」

その瞬間、二人は言葉を失った。前回の入れ替わりも、そして今回の再入れ替わりも、どうやら「妊娠」が鍵になっているらしいと察する。

「つまり…妊娠したときに僕たちの体が入れ替わる可能性がある、ってことですか？」浩太は医師に向かって問いかけたが、医師も首をかしげ、言葉を探すように答えた。

「普通なら考えられない現象ですが、今回のケースからすると…そういう可能性もあるかもしれませんね。ただし、何が原因でこの現象が起きているのかは、やはり科学的に解明できないのが現実です」

またしても、二人は手を取り合いながら病院を後にした。そして帰り道、重くなった由香の体を労りながら歩く浩太に、由香がぽつりとつぶやいた。

「もう一度この体で出産まで頑張って、無事に赤ちゃんが生まれたら、また元に戻れるのかな」

「そうかもしれない。でも、もしこれが毎回の出産のたびに起きるんだとしたら…僕たち、ずっとこの繰り返しになるんだろうか？」浩太は不安げに言いながら、しかし心のどこかで、また二人で協力して新たな命を迎えることへの覚悟が湧いてきているのを感じた。

「今度も一緒に、できることを精一杯やるしかないね。君のためにできる限りのサポートをするから」由香の体でそう語る浩太に、由香は微笑んだ。

こうして、再び入れ替わったまま妊娠生活を乗り越えることになった二人。しかし、以前の経験があることで不安は少し軽くなり、むしろまた協力して新しい命を迎えられることへの静かな喜びさえ感じていた。

そしてまた、夫婦はこの新たな試練と共に成長しながら、入れ替わりと共に訪れる家族の形を前向きに受け入れていくのだった。