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初めてのメイク
しおりを挟む研修が始まって10日ほどが経過し、結衣——健一は少しずつ「女性としての生活」に慣れてきていた。
最初は違和感ばかりだったスカートも、ヒールの靴も、今では自然に身につけられるようになった。
そして今日、ついに「次のステップ」に進むことになった。
「中村さん、そろそろメイクを覚えたほうがいいわよ。」
昼休み、社員食堂で隣に座っていた先輩社員の**三浦紗季**がそう言った。
「め、メイクですか……?」
「そうよ。今のままでも十分可愛いけど、社会人としては最低限のメイクくらいはできたほうがいいでしょ?」
「た、確かに……。」
結衣は思わず、自分の手をぎゅっと握りしめた。
もともと男性だった自分には、メイクなんてまったく未知の領域だ。
でも、このバーチャルの世界では**「女性社員として」**過ごすのが当たり前。
いつまでもノーメイクでいるわけにはいかないのかもしれない。
「よし、じゃあ今日は私が教えてあげる!」
「えっ!? で、でも、今からですか?」
「もちろん! 仕事が終わったら寮の部屋でやるから、楽しみにしててね♪」
結衣が返事をする間もなく、三浦先輩はニッと笑った。
そして、その日の仕事が終わった後——
**寮の部屋で、「はじめてのメイクレッスン」が始まった。**
◆◆◆
「まずは、**スキンケア**からね。」
そう言いながら、三浦先輩はクレンジングオイルを手に取る。
「これを顔に馴染ませて、優しくメイクを落とすのよ。」
「えっと……私、メイクしてないですけど……?」
「今はそうだけど、メイクをするならクレンジングもセットで覚えなきゃダメよ! それに、肌の汚れを落とすことも大事だからね。」
言われるがままに、結衣はクレンジングオイルを顔に馴染ませ、お湯で流す。
その後、化粧水をパタパタとつけ、乳液で保湿する。
「……なんか、ちょっと気持ちいいかも。」
「でしょ? じゃあ、いよいよメイクに入るわよ!」
三浦先輩は、笑顔でファンデーションを手に取った。
「まずは**ベースメイク**ね。これで肌を整えるの。」
パフでトントンと肌に塗ってもらうと、鏡に映る自分の顔が**ワントーン明るく**なった。
「す、すごい……!」
「でしょ? じゃあ、次はアイメイクね。目元は一番大事だから、ちゃんとやるのよ?」
アイシャドウを薄く塗られ、ビューラーでまつげを上げられる。
「うわっ、こわっ!!」
「大丈夫、力を抜いて。」
少しずつ慣れていくと、次はリップ。
ほんのりピンク色のリップを塗られ、三浦先輩は満足げに微笑んだ。
「よし、完成! 鏡を見てみて?」
言われて、結衣はゆっくり鏡を覗き込む。
「……!!」
そこには、**自分とは思えないほど綺麗になった「中村結衣」がいた。**
「す、すごい……!! これ、本当に私!?」
「ふふっ、ちゃんと可愛くなったでしょ?」
三浦先輩は、誇らしげに胸を張る。
**(……なんだか、本当に「女性になった」気分だ。)**
バーチャルの世界に来てから、ここまで自分が変わるとは思っていなかった。
**メイクをすることで、自分の「新しい一面」が見えてくる——。**
そう感じた瞬間、結衣はますますこの世界に馴染んでいくのを実感したのだった。
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