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木村健一はAI?
しおりを挟む研修が終わり、結衣は疲れた体を引きずるようにして寮に帰ってきた。
食堂で軽く夕食を済ませたあと、ラウンジでくつろいでいると、玲奈先輩が隣に座ってきた。
「結衣ちゃん、おかえり。今日の研修、どうだった?」
「……それが、ちょっと不思議なことがあって……。」
結衣は、今日の出来事を玲奈先輩に話した。
——研修で高橋先輩から「木村健一」という男性を紹介されたこと。
——その木村健一が、リアルの自分と瓜二つだったこと。
——そして、彼が優しく「俺がフォローするからね」と声をかけてくれたこと。
玲奈先輩は、ふむふむと頷きながら話を聞いていたが、結衣が話し終えると、少し考えるように口元に指を当てた。
「……多分、その木村健一さんは、あなたを教育するためにAIで動いている人物なんだと思うわよ?」
「えっ……?」
思いもよらない答えに、結衣は驚いた。
「AI……ですか?」
「そう。バーチャルの世界の住人には、リアルの人間が操作しているアバターもいれば、完全にAIが動かしているキャラクターもいるでしょう?」
「……はい。」
「この研修では、あなたが**女性としての社会経験を積むこと**が目的よね。だったら、そのための『指導役』として、あなた自身のデータを元に作られたAIの木村健一が配置されていても、不思議じゃないわ。」
「……」
言われてみれば、それは納得のいく話だった。
バーチャルの世界では、人間とAIの違いを見分けるのは難しい。
それに、会社はリアルの自分のデータを取得しているのだから、「木村健一」というキャラクターを作ることは十分可能だ。
でも——
「なんか、変な感じですね……。」
「変な感じ?」
「自分が結衣としてこの世界で生活していて、目の前に『自分そっくりのAI』がいて……それが、まるで別の人格みたいに行動してるって……。」
玲奈先輩は、クスッと笑った。
「確かに不思議な気分かもね。でも、あなたにとって重要なのは、『木村健一』が本当にAIかどうかってことよりも——」
「?」
「**その彼との関わりが、あなたにどう影響を与えるか**じゃない?」
「……!」
結衣は、今日のことを思い返した。
「俺がフォローするからね!」と微笑んだ木村健一。
その言葉に、確かに自分は**安心感**を覚えた。
それは、誰かに支えてもらえることの心強さであり、同時に、**今まで自分が誰かに与えてこなかったもの**なのかもしれない——。
玲奈先輩の言葉は、そのことに気づかせてくれた気がした。
「……もう少し、彼のことを知ってみたくなりました。」
結衣は、そう呟いた。
「うん、それがいいわ。AIかどうかなんて関係なく、彼との関係から学べることはきっとたくさんあると思うから。」
玲奈先輩は優しく微笑み、結衣の肩をポンッと叩いた。
**——バーチャルの世界で出会った「木村健一」。
彼は一体、何を教えてくれる存在なのだろう?**
結衣の中に、新たな興味が芽生え始めていた。
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