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玲奈に相談
しおりを挟む寮に戻ると、結衣は自室に直行したものの、落ち着かない気持ちのままベッドに倒れ込んだ。
(健一から……結婚を前提に付き合ってほしいって……)
何度思い返しても、現実味が湧かない。
バーチャルの世界とはいえ、自分は本来男であり、ここでの生活もあと2か月で終わるはず。それなのに、本気で恋愛をするなんて……。
悶々と考え込んでいると、不意にドアがノックされた。
「結衣~? いる?」
玲奈の声だった。
「……うん、入っていいよ。」
玲奈が部屋に入ってくると、結衣の顔を見てすぐに異変を察したようだった。
「何その疲れた顔? もしかしてデート、上手くいかなかったの?」
「それが……」
結衣は玲奈に今日の出来事を話し始めた。
健一に夜景の綺麗なレストランに連れて行かれたこと。
楽しく食事をしていたら、突然「結婚を前提に付き合ってほしい」と告白されたこと。
どう答えればいいか分からず、とりあえず返事を保留にしたこと――。
一通り話し終えると、玲奈は少し驚いた顔をしてから、クスクスと笑った。
「な、何?」
「いや、ついに結衣もバーチャル恋愛の洗礼を受けたな~って思って。」
「洗礼って……笑いごとじゃないよ!」
玲奈はベッドの端に腰掛けながら、優しく微笑んだ。
「まあ、そりゃあ混乱するよね。でも、結衣にとって健一くんってどういう存在なの?」
「……え?」
「その告白を聞いて、どう思ったの?」
「それは……びっくりしたし、正直困惑してる。でも……嬉しくなかったわけじゃない。」
結衣はぽつりと呟いた。
健一と過ごす時間は楽しくて、彼の優しさや気遣いに何度も救われた。それは間違いない。でも、それが“恋愛感情”なのかどうかは分からない。
玲奈はしばらく結衣の言葉を噛みしめるように考えた後、ぽつりと言った。
「このバーチャルの世界ではね、本当の自分が何者なのか、時々分からなくなることがあるの。でも、それは悪いことじゃないんだよ。」
「……?」
「だって、結衣は結衣として生きているんでしょう? ここで感じること、考えることは、全部本物なの。リアルの性別とか、元が男とか、そういうことをいったん忘れてみたら?」
玲奈の言葉が胸に刺さる。
「私のアドバイスとしてはね……“今の気持ち”を大事にしなさいってこと。もし少しでも彼といたいと思うなら、それを素直に受け入れてみてもいいんじゃない?」
「……私の気持ち……。」
(私は、健一のことをどう思っているんだろう……?)
玲奈の言葉を噛み締めながら、結衣はまだ答えの出ない気持ちを抱えていた。
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