とある会社の秘密の研修

廣瀬純七

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玲奈の選択

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結衣は湯船に肩まで浸かり、静かに目を閉じた。  

体の力を抜いて湯に身を委ねると、じんわりと温かさが染み渡っていく。バーチャルの世界のはずなのに、お湯の感触も湯気の匂いも、あまりにもリアルだった。  

(……本当に、ここはバーチャルなのかな……)  

玲奈から「この世界に住み続けることもできる」と言われてから、結衣の心はずっとざわついていた。  

「ねえ、ちょっといい?」  

ふいに、背後から玲奈の声がした。  

振り向くと、玲奈が髪をまとめながら湯船へと入ってくるところだった。  

「玲奈さん、お疲れ様です。」  

「ふふっ、お風呂の中でまでそんなにかしこまらなくていいわよ。」  

玲奈は結衣の隣に座り、ふぅっと満足そうに息をついた。  

しばらく二人でお湯に浸かりながら、湯気の中でのんびりと時間が過ぎていった。  

玲奈がふと、ぽつりと呟いた。  

「実はね……私、一年前にこっちの世界で生きることを選択したのよ。」  

結衣は思わず玲奈を見つめた。  

「えっ……玲奈さん、リアルには戻らなかったんですか?」  

玲奈は静かに頷いた。  

「うん。もともとはリアルで会社に入って研修を受けていたんだけど……気づいたら、こっちの世界が心地よくなってね。悩んだ末に、正式にバーチャルの住人になることを選んだの。」  

「そんなことが……」  

玲奈は笑顔を浮かべながら、続けた。  

「そしてね、今付き合っている人と来月、結婚するのよ!」  

「えっ!? 玲奈さん、結婚するんですか!?」  

驚く結衣を見て、玲奈はくすくすと笑った。  

「うん、そうよ。もちろん、相手もこの世界の人。リアルの人間が操作しているけど、同じようにこの世界で生きることを選んだ人なの。」  

「……すごい……」  

バーチャルの世界での結婚。リアルとは異なるけれど、それもまたひとつの人生の選択肢なのだと、結衣は初めて実感した。  

玲奈はお湯にゆっくりと手を浸しながら、優しく言った。  

「結衣も、まだ迷っているでしょ? ここにいることが本当にバーチャルなのか、リアルなのか……」  

結衣は湯の中で手をぎゅっと握りしめた。  

(……私も、この世界に残る選択をすることになるのかな……?)  

玲奈の言葉が、結衣の心の奥深くに響いていた。
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