とある会社の秘密の研修

廣瀬純七

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リアルとバーチャル

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玲奈と木島の話を聞いた結衣は、心の中がざわざわと揺れていた。  

(バーチャルの世界で生きる……本当にそんな選択をする人がいるんだ……)  

研修が始まった頃の自分なら、そんな話は信じられなかっただろう。でも、今の自分はどうだろう? すでに二ヶ月以上、この世界で生活し、結衣としての毎日が当たり前になっていた。  

「……結衣、考え込んじゃった?」  

玲奈が心配そうに覗き込む。  

「いや……なんか、想像もしてなかった話だから……。」  

「だよね。でも、結衣ももう結構こっちの世界に馴染んできたんじゃない?」  

「うん……確かに最初に比べたら、もう違和感はほとんどなくなったかも。」  

自分の姿を鏡で見ても違和感を覚えなくなった。お風呂もトイレも、メイクも服選びも、今ではすっかり日常の一部になっている。  

それどころか、最近では健一とデートを楽しみにしている自分までいる。  

「結衣はさ、こっちの世界で特に大切にしたいって思えるもの、見つかった?」  

玲奈の言葉に、結衣はハッとした。  

「大切にしたいもの……?」  

「そう。私にとっては達也との関係が大きかったし、こっちの世界の生活が心地よくて戻りたくないと思うようになった。でも、結衣にとっては何が一番大事?」  

結衣はすぐに答えられなかった。  

今までは、研修が終わればリアルの世界に戻るのが当然だと思っていた。でも……本当に戻るのが自分にとって一番幸せな選択なのだろうか?  

「……まだ、わからない。」  

「うん、それでいいと思うよ。」  

玲奈は優しく微笑んだ。  

「私も最初から決めていたわけじゃないし。結衣も、ゆっくり考えればいいんじゃないかな?」  

玲奈の言葉に少しだけ気持ちが軽くなった。  

「ありがとう、玲奈さん。」  

「どういたしまして♪ それより、結衣の恋の方はどうなのよ?」  

玲奈がニヤリと笑い、話題を変える。  

「えっ、恋って……!?」  

「だって、もうすぐ健一くんとデートでしょ?」  

玲奈に言われて、結衣は顔が熱くなるのを感じた。  

(そうだ……次のデート……。)  

健一が「結婚を前提に付き合ってほしい」と言ってくれたことを思い出し、胸がドキドキする。  

「ふふっ、図星だね!」  

玲奈は嬉しそうに笑った。  

「まあ、結衣の選択がどうなるにせよ、恋は思いっきり楽しんだ方がいいわよ?」  

玲奈の言葉に、結衣は小さく頷いた。  

(私の選択……どうなるんだろう……。)  

バーチャルの世界で生きる道もある。  

でも、リアルに戻る道もある。  

結衣はまだ、どちらの道が自分にとっての「幸せ」なのか分からないまま、次のデートのことを考えていた。
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