謎の寄生体

廣瀬純七

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ハートの寄生者

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 月曜日の朝。鳴り響くアラームを無視して三度寝した私は、左肩の違和感で目を覚ました。

「……またか」

 シャツの肩をずらして鏡を見ると、そこにはやや歪んだハート型の赤いシミが浮かんでいる。最初はただのアザかと思っていたそれは、ある日、突然語りかけてきた。

『おはようございます、田嶋彩香さん。本日は七時五十三分。遅刻ギリギリです。顔がむくんでいますが、気合で乗り切ってください』

「うるさい。あんた、私の一部のくせに妙に冷静だよね」

『私はあなたに寄生しているだけであって、同一ではありません。共生関係です』

 そう。これは夢でも妄想でもなく、現実だ。
 三週間前のある朝、肩に突然現れたこの“ハート型のシミ”は、次第に色濃くなり、声を持ち、考えを語り始めた。私は病院に行ったが、医者は「皮膚の炎症でしょう」と言って軟膏を出すばかりだった。
 だがその夜、シミが喋った。

『人類の皆様こんにちは。当方は〈エミル〉と申します。あなた方の文明に深い関心を持ち、あなたという個体に宿りました。観察と学習を目的としています。ご安心ください。痛みはありません』

 エミル。自称・異星生命体。人間の感情や文化に興味を持ち、特に「日常生活」こそが知的生命の神髄だと語る奇妙な存在。

 そして、こいつは私の会社生活を面白がっている。

『本日もあの部長の“意味のない朝礼スピーチ”を楽しみにしています。前回は“夢を持て”でしたが、今日は“初心を忘れるな”と予想します』

「予想するな。そういうところ、腹立つ」

 私は重たい身体を起こしながら、ふと思った。
 もし、こいつがずっとこのまま私の肩にいるとしたら──
 私の人生、ちょっとだけマシになるかもしれない。

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