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戻らないアレ
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ある日、健二という青年が山奥の秘湯を訪れた。その温泉には奇妙な伝説があった。噂では、「この温泉に入ると、ペニスが取れてしまう」と言われていた。誰もその噂を本気にしていなかったが、健二は好奇心と冒険心に駆られ、訪れることを決意した。
険しい山道を進むと、ついに彼は「ペニス取れ温泉」という古びた看板を見つけた。そこには、驚くほどシンプルな警告が書かれていた。
「この温泉に入ると、ペニスが取れることがあります。取れても、元に戻る場合がありますが、戻らないこともあります。入浴は自己責任で。」
健二は少し不安になったが、噂などただの作り話だろうと高をくくり、湯に浸かることにした。湯は滑らかで、驚くほど心地よく、最初のうちは何も異常がないように感じられた。
ところが、しばらくすると、下腹部に奇妙な感覚が走った。何かがふっと軽くなり、湯の中で浮かぶような感触だ。慌てて目を開けると――そこに浮かんでいたのは、自分のペニスだった。
「うわっ! 本当に取れたのか!?」健二は湯の中で混乱した。だが、すぐに冷静さを取り戻し、「どうせ元に戻るだろう」と楽観的に考え、湯の中に手を入れてペニスを探そうとした。しかし、湯の中を手探りしても、ぬるりと滑るだけで、肝心のペニスは見つからなかった。
「おいおい、どこ行ったんだよ?」と焦る健二。湯の中を何度も掻き回したが、ペニスはどんどん湯の中に沈んでいくような気がした。不安が膨らみ、彼は一気に温泉から飛び出した。だが、足元に転がっているはずのそれはどこにもなかった。
「まさか…本当に戻らないのか?」恐怖が健二の心を支配し始めた。体を確認するが、どうやらペニスは完全に外れてしまっていた。そして、不気味なことに、彼の体にはそれをくっつけ直すための「場所」すらなくなっていた。まるで、最初から何も存在していなかったかのような滑らかな肌が広がっている。
「いや、こんなの冗談だろ?」健二はパニックになり、温泉の周りを探し回ったが、ペニスはどこにも見当たらない。彼は呆然と立ち尽くした。どれだけ探しても、自分の大切な「部分」は消えてしまったかのように、もう手元には戻ってこなかった。
数時間が過ぎ、日が沈み始めたころ、健二は諦めたように温泉の看板を見つめた。
「取れたら戻らないこともある…か。」
彼はその言葉を、今になってようやく信じ始めた。
山を下りる途中、健二は自分がどんな顔をしているか分からなかった。ただ一つだけ確かなことは、もう二度と元に戻ることはないという事実だった。すべてを失った健二は、言葉を失い、ただ静かに家路をたどるしかなかった。
その後、健二は山奥の温泉について誰にも語らなかった。そして彼は、奇妙な静寂の中で暮らし続けることとなった。どこか心の奥で、失われたものが再び戻ってくることを待ちながらも、それが叶うことはないと知りつつ。
険しい山道を進むと、ついに彼は「ペニス取れ温泉」という古びた看板を見つけた。そこには、驚くほどシンプルな警告が書かれていた。
「この温泉に入ると、ペニスが取れることがあります。取れても、元に戻る場合がありますが、戻らないこともあります。入浴は自己責任で。」
健二は少し不安になったが、噂などただの作り話だろうと高をくくり、湯に浸かることにした。湯は滑らかで、驚くほど心地よく、最初のうちは何も異常がないように感じられた。
ところが、しばらくすると、下腹部に奇妙な感覚が走った。何かがふっと軽くなり、湯の中で浮かぶような感触だ。慌てて目を開けると――そこに浮かんでいたのは、自分のペニスだった。
「うわっ! 本当に取れたのか!?」健二は湯の中で混乱した。だが、すぐに冷静さを取り戻し、「どうせ元に戻るだろう」と楽観的に考え、湯の中に手を入れてペニスを探そうとした。しかし、湯の中を手探りしても、ぬるりと滑るだけで、肝心のペニスは見つからなかった。
「おいおい、どこ行ったんだよ?」と焦る健二。湯の中を何度も掻き回したが、ペニスはどんどん湯の中に沈んでいくような気がした。不安が膨らみ、彼は一気に温泉から飛び出した。だが、足元に転がっているはずのそれはどこにもなかった。
「まさか…本当に戻らないのか?」恐怖が健二の心を支配し始めた。体を確認するが、どうやらペニスは完全に外れてしまっていた。そして、不気味なことに、彼の体にはそれをくっつけ直すための「場所」すらなくなっていた。まるで、最初から何も存在していなかったかのような滑らかな肌が広がっている。
「いや、こんなの冗談だろ?」健二はパニックになり、温泉の周りを探し回ったが、ペニスはどこにも見当たらない。彼は呆然と立ち尽くした。どれだけ探しても、自分の大切な「部分」は消えてしまったかのように、もう手元には戻ってこなかった。
数時間が過ぎ、日が沈み始めたころ、健二は諦めたように温泉の看板を見つめた。
「取れたら戻らないこともある…か。」
彼はその言葉を、今になってようやく信じ始めた。
山を下りる途中、健二は自分がどんな顔をしているか分からなかった。ただ一つだけ確かなことは、もう二度と元に戻ることはないという事実だった。すべてを失った健二は、言葉を失い、ただ静かに家路をたどるしかなかった。
その後、健二は山奥の温泉について誰にも語らなかった。そして彼は、奇妙な静寂の中で暮らし続けることとなった。どこか心の奥で、失われたものが再び戻ってくることを待ちながらも、それが叶うことはないと知りつつ。
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