スワップライフ

廣瀬純七

文字の大きさ
2 / 4

入れ替わりの一か月

しおりを挟む
田中優太と佐々木美咲は、恋人同士として順調に付き合いを続けていた。しかし、ある日から、彼らは異常な体験をするようになった。それは、エッチをする度に体が入れ替わるという現象だ。最初は戸惑いと恐怖があったものの、時間が経つと、彼らはその現象をある程度受け入れるようになった。

そしてある日、二人は大胆な決断を下した。「一か月間、入れ替わったまま生活してみよう」と。通常なら体は数時間後に元に戻るのだが、二人は意図的に入れ替わりを維持することにしたのだ。

---

「それじゃあ、今日から私が優太として生活するってことだね。」美咲は優太の体で微笑んだ。その表情は慣れ親しんだ彼の顔なのに、そこに宿るのは自分自身の心。それが何とも不思議な感覚だった。

「そういうこと。俺が美咲として過ごす。正直、怖いけど、ちょっと楽しみでもあるよ。」優太は美咲の声でそう答えたが、その口調には少し緊張が滲んでいた。普段は自分のやっていることだが、彼女の仕事や日常を体験するというのは別物だ。

---

初日の朝、優太(美咲の体)は、彼女のワードローブを開け、何を着るべきか悩んでいた。美咲のファッションセンスは自信があったが、男性としてはどの服が適切なのか分からなかった。最終的に、美咲から事前に教わった通りに服を選び、メイクもしてみたが、完成した姿にどこかぎこちなさが残る。

「私が毎日どれだけ時間をかけてるか分かったでしょ?」と、優太の体で余裕の笑みを浮かべる美咲(優太)。

「うん…これは思った以上に大変だ。」と、優太(美咲)はため息をつきながら応えた。彼は、メイクや髪の手入れが日々のルーチンの一部であり、それがどれだけ手間がかかるかを初めて実感した。

一方で、美咲は優太の仕事に挑んでいた。彼は営業職であり、外回りやプレゼンが中心の仕事だ。普段、美咲はデザイン関係のクリエイティブな仕事をしているため、ビジネスの世界にはあまり馴染みがなかったが、この一か月間は優太として働かなければならない。

初めてのプレゼンの日、スーツを着た美咲(優太)は緊張しながら会議室に向かった。優太の同僚たちは、いつも通りの「田中優太」だと思っているが、その中身は全くの別人だ。

「落ち着いて、練習したことを思い出して…」心の中で自分に言い聞かせながら、彼女はプレゼンを始めた。資料を見ながら、優太が彼女に教えてくれた内容をできる限り忠実に伝える。しかし、途中で少しつまずき、言葉が詰まってしまう場面もあった。それでもなんとか切り抜け、同僚たちにそれなりの評価を得た。

---

その一か月間、二人はお互いの立場で日々の生活を送った。美咲は、優太のストレスの多い仕事を理解し、彼の抱えているプレッシャーを身をもって感じた。一方、優太は、見た目を保つために日々どれだけの努力が必要か、また女性としての日常がどれほど繊細で複雑かを学んだ。

夜、二人は一日の出来事を共有する時間を楽しみにしていた。美咲は優太の体で「今日、上司にちょっときついことを言われたけど、耐えたよ!」と報告し、優太は美咲の体で「メイクがまだ慣れないけど、頑張ってる」と笑った。

---

一か月が経ち、ついに二人は元に戻ることにした。最後にもう一度エッチをして、再びお互いの体へ戻った瞬間、彼らは安堵の表情を浮かべた。

「やっぱり、自分の体が一番だな。」優太は、久しぶりに感じる自分の声に笑った。

「うん、本当に。でも、この体験をしてよかったかも。」美咲も頷いた。

お互いの立場に立って見た世界は、これまでの二人の関係に深い理解と信頼をもたらした。入れ替わりという奇妙な体験を通じて、二人はただの恋人以上に、互いを支え合う「パートナー」としての絆を強めたのだった。

そしてこれからも、どんな困難があろうと、二人なら乗り越えていけるという確信を持って、彼らは日常に戻っていった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

兄になった姉

廣瀬純七
大衆娯楽
催眠術で自分の事を男だと思っている姉の話

BODY SWAP

廣瀬純七
大衆娯楽
ある日突然に体が入れ替わった純と拓也の話

バーチャル女子高生

廣瀬純七
大衆娯楽
バーチャルの世界で女子高生になるサラリーマンの話

身体交換

廣瀬純七
SF
大富豪の老人の男性と若い女性が身体を交換する話

未来への転送

廣瀬純七
SF
未来に転送された男女の体が入れ替わる話

性別交換ノート

廣瀬純七
ファンタジー
性別を交換できるノートを手に入れた高校生の山本渚の物語

秘密のキス

廣瀬純七
青春
キスで体が入れ替わる高校生の男女の話

リアルメイドドール

廣瀬純七
SF
リアルなメイドドールが届いた西山健太の不思議な共同生活の話

処理中です...