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相方の拓也
しおりを挟む「はい!じゃあ次のアイテムいってみよかー!」
いつものようにテンション高めでカメラに向かって叫ぶユカタン。その手にあるのは、やたらと近未来的なデザインのチューブ。パッケージには、クセの強いフォントで『パーツ交換クリーム ~あなたのパーツ、交換します~』と書かれている。
「いや、交換てなんやねん!」
と、セルフツッコミを入れつつ、彼女は笑いをこらえられない。
「これ、ネットで見つけたときは『うそやろ!?』って思ってんけど…気になるやん!?」
カメラにグイっとチューブを寄せると、しっかりラベルを見せる。
「塗ったとこ、好きな人のパーツと交換できるんやって!」
目をキラキラさせながら説明していると、後ろからボソッと声が飛ぶ。
「で、誰のパーツと交換するつもりなんですか…」
カメラの向こうから顔を覗かせたのは、ユカタンの相方、木島拓也だ。音響からカメラ、動画編集まで全部担当する裏方男子。
いつも無表情で、黒縁メガネの奥から淡々とユカタンを見守っているが、実は彼、ユカタンの暴走を止める最後の砦でもある。
「いや、木島くんやろ!」
ユカタンはニヤッと笑って、チューブを振る。
「お揃いの目とか、めっちゃ再生数伸びるって!目って一番印象変わるし!」
「……なんで僕なんですか」
「いや、うちが信頼できる目って言ったら、木島くんしかおらんし!」
ちょっと照れくさそうに言うユカタンに、木島はふっとため息をつく。
「どうなっても知りませんよ」
***
というわけで、撮影は続行される。
まずはユカタンが木島の瞼にクリームを塗る。彼の目元に指を近づけると、木島はわずかに身を固くする。
「おーい、そんな緊張せんでもええって!ほら、じっとして!」
「いや、普通怖いでしょう…目ですよ、目」
でも、彼は目を閉じる。
ユカタンは慎重に、でもワクワクを隠しきれない様子で、彼のまぶたにクリームをぬりぬり。
「はい、次うちの番や!」
木島は無言でクリームを取り、ユカタンのまぶたにも塗り込む。
「なんか、冷たいな…」
「それ、心の声じゃないですよね」
「ちゃうちゃう、物理的に冷たい!」
しばらくすると、両目がじんわりと温かくなり始めた。
「え、これマジでなんか来てる気する!」
ユカタンが目を開けた瞬間――木島の落ち着いた黒目と、形の整った一重まぶたがそこにあった。
「え!?これ、木島くんの目やん!」
「いやいや、ユカタンの目も僕についてますけど」
木島も鏡を覗き込んで、ぱちぱちと瞬きをする。彼の目には、ユカタン特有のパッチリとした二重、茶色がかった瞳が反映されていた。
「うわー、変な感じする!視界が、なんか高解像度っていうか…」
「それ、僕の視力のおかげですね」
「うわ、地味にショック!」
二人は顔を見合わせて、大笑いする。
***
その後、ユカタンと木島は交換したまま一日過ごすことになり、
「なんか、編集してても目が合う気がして無理!」
「それ、こっちのセリフやから!」
と、編集部屋でもケンカのような掛け合いが続く。
動画のラストでユカタンはカメラに向かってピースサイン。
「みんなもパーツ交換、してみたくなったやろ!?(※自己責任でな!)」
木島はため息をつきながら、カメラの録画を切った。
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