ユーチューバーのグッズ

廣瀬純七

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お尻の交換

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「――というわけで、今回は目の交換に続きまして!」  
ユカタンは、いつものようにハイテンションでカメラに向かって叫ぶ。

「なんと!パーツ交換クリーム、第二弾!交換するのは…お尻!!」  
部屋のど真ん中で両手を広げる彼女の後ろには、例によって無言の木島拓也が控えていた。  
彼の顔は、目に見えてうんざりしている。

「やっぱりやるんですね、これ」  
「そらやるやろ!」  
ユカタンはドヤ顔でクリームのチューブを掲げた。「こんなネタ、見逃すわけないやん?」  
「いや、誰得なんですか、これ…」  
「ええやん!検証系ユーチューバーとしての使命や!」

***

今回の舞台は、ユカタンのスタジオじゃなく、なぜか「整体院みたいなセッティング」にしている。  
「こっちのほうが雰囲気出るやろ!」  
「いや、説得力はゼロですけど」

そう言いながらも、木島はちゃんとカメラの位置を調整し、照明も絶妙に当たるようにセットしているあたり、プロフェッショナル。

「じゃあ、木島くん…準備はええか?」  
「準備というか…精神的には無理ですね」  
「大丈夫大丈夫!サクッと終わらせるから!」

ユカタンがクリームを手に取ると、木島は表情を無にしてうつ伏せになる。  
「これ…絶対カットした方がいい部分ですよね」  
「視聴者さんが“知りたい”って思うトコだけ残すから!」  
言いながら、ユカタンは木島のお尻にぬりぬり。  
「あれやな…木島くん、思ったより筋肉あるわ…」  
「……褒められてる気がしない」

次はユカタンの番だ。  
「ほな、頼んだで」  
「え、僕も塗るんですか?」  
「せやろ。公平にせんと」  
木島はまた無表情で手にクリームを取ると、ユカタンのお尻にも塗る。  
「……ユカタン、なんでこんなモチモチしてるんですか」  
「おお!それ褒め言葉やな!」  
「いや、褒めてるわけじゃ…いや、もうなんでもいいです」

***

クリームを塗り終えた後、二人はしばらく無言。  
「……これ、ホンマに交換されるんかな」  
ユカタンは不安そうに自分のお尻をポンと叩いてみる。  
「お?なんか…感覚が違う気がする!」  
木島もそっと立ち上がり、自分のお尻に手を当てた。  
「これ…絶対僕のじゃない」  
「やんな!?めっちゃプリっとしてる!」  
ユカタンは笑いながら木島を指差す。「木島くん、ええ感じやで!」  
「いや、嬉しくない…!」

試しに椅子に座る木島。  
「なんか…クッション性が増してる…」  
「やろ?それ、うちの自信作やからな!」  
逆にユカタンは椅子に座ってみると、  
「うわ、ちょっと引き締まってて、硬め…!」  
「ちゃんと鍛えてるんで」  
「これはこれでアリやな…!」

***

その後、二人は撮影が終わっても交換したまま作業を続けることになった。  
「座り心地が落ち着かん…」  
「普段どんだけ柔らかいんや、ユカタン…」  
「いやいや、木島くんが固すぎんねん!」  
「トレーニングの成果なんで」  
二人はそんなやりとりをしながら、編集作業を進めていく。

***

動画のエンディング、ユカタンは満面の笑みでカメラに向かってピースサイン。  
「というわけで!今回は『お尻パーツ交換クリーム』を試してみたけど…」  
木島が後ろでボソッと呟く。  
「正直、人生で一番無駄な経験だった気がします」  
「ちゃうちゃう!めっちゃ貴重な体験やん!みんなもぜひ試して――(※自己責任でな!)」  
ユカタンの声に、テロップがデカデカとつく。  
【※メーカーは一切責任を取りません】  
【※返品不可】

木島はため息をつきながら録画を止めた。  
「次は、もっと普通のアイテムにしてください…」  
「それは木島くん次第やな!」  
ニヤリと笑うユカタンの目は、次なるターゲットを探し始めていた。
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