バーチャル女子高生

廣瀬純七

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イケメンにトキメク私

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**「仮想世界のときめき」**

放課後のアカシア学園。陽介は「朝比奈ひより」として生徒会の会議を終え、校庭を歩いていた。青空が広がるバーチャル空間の中、春風に乗る桜の花びらが舞い降りる。現実では味わえない、心地よい世界だ。

「ふぅ…これで今日のタスクも終わりか。」

ヘッドセット越しに画面を見る陽介の目は穏やかだった。だが、ひよりとしての意識で歩くうちに、現実のことを忘れかけていた。

そのとき、後ろから声がした。

「朝比奈さん、ちょっといい?」

振り返ると、そこには完璧なイケメンが立っていた。鋭い目元、柔らかそうな髪、そして白いシャツの袖をまくった爽やかな姿。アバターの作り込みが妙にリアルで、VRだと分かっていても息を呑むほどだった。

「あ、えっと…私に何か?」

陽介は慌ててひよりのキャラを保ちながら、少し高めの声を作った。しかし、内心ではドキドキが止まらない。

**「なんで男の俺が、こんな気持ちになってるんだ…?」**

---

その男子の名は「神谷涼」。学園内では有名な人気者で、成績も良く運動神経も抜群。ひよりとして接してきた生徒たちの間でも、彼の名前は頻繁に話題に上がっていた。

「生徒会の企画書、すごく良かったよ。朝比奈さんがまとめたんだよね?」

「えっ…あ、ありがとう…」

陽介は戸惑いながらも礼を言った。現実ではほとんど褒められることのない彼だが、ひよりとしての努力が認められたことが、なぜか胸を熱くした。

「君って、なんというか…話しやすい雰囲気だよね。俺、もっと話してみたいな。」

神谷の言葉に、陽介の仮想心臓がバクバクと音を立てる。冷静になろうとするが、VRの没入感は彼の感情をリアルに揺さぶってくる。

---

その後、二人は校庭のベンチに腰掛け、世間話を始めた。神谷の明るく自然な話し方に、陽介は次第に緊張を忘れ始めた。

「朝比奈さん、将来は何になりたいの?」

「えっ…」

陽介は一瞬言葉に詰まった。現実の自分はただのサラリーマン。それをひよりとして語るには、あまりにも遠い世界だった。

「…まだ決めてないけど、みんなの役に立つようなことをしたいかな。」

陽介はひよりらしい答えを絞り出した。すると、神谷はにっこりと笑った。

「いいね、朝比奈さんならきっと何だってできると思うよ。」

その言葉に、陽介の中の何かが揺れた。

---

その夜、ログアウトした陽介は、自分の感情に戸惑っていた。

「なんであんなにドキドキしたんだ…俺は男なのに…」

だが、同時に彼は気づいていた。現実では得られなかった、誰かとの「純粋なつながり」に心が惹かれているのだと。

仮想世界の中で交わした些細な会話が、陽介にとって現実以上の意味を持ちはじめていた。
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