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ノートの向こう側
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そのノートを拾ったのは、ありふれた雨上がりの午後だった。
どこにでもあるような、黒い表紙の古びたノート。道端の水たまりのそばで、まるで自分を拾ってほしいとでも言うようにそこに転がっていた。
斎藤優人(さいとうゆうと)はふと足を止め、それを拾い上げた。カバーは革のように見えたが、触ると妙に冷たく、軽かった。表紙には何のタイトルもなく、ただ無地のままだ。
家に帰ると、ノートの中は真っ白なページで埋まっていた。しかし、その最初のページの隅にだけ、小さな文字が記されていた。
> 「西暦を書け」
一瞬だけ、悪戯書きだろうと笑ったが、どういうわけか手は止まらなかった。興味本位でボールペンを取り出し、1970と書き込むと――
目の前が、真っ白になった。
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どこにでもあるような、黒い表紙の古びたノート。道端の水たまりのそばで、まるで自分を拾ってほしいとでも言うようにそこに転がっていた。
斎藤優人(さいとうゆうと)はふと足を止め、それを拾い上げた。カバーは革のように見えたが、触ると妙に冷たく、軽かった。表紙には何のタイトルもなく、ただ無地のままだ。
家に帰ると、ノートの中は真っ白なページで埋まっていた。しかし、その最初のページの隅にだけ、小さな文字が記されていた。
> 「西暦を書け」
一瞬だけ、悪戯書きだろうと笑ったが、どういうわけか手は止まらなかった。興味本位でボールペンを取り出し、1970と書き込むと――
目の前が、真っ白になった。
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