1 / 37
1.悪役令嬢の決心
しおりを挟む
『それ』はある日突然現れた。
「はじめまして、あなたが私のお姉様?」
ピンクブロンドのふわふわした髪と同系色の瞳、ふっくらとした薄紅の頬をもった美少女が私に微笑みかけている。
「スザンナ、今日からお前の妹になるマリーナだ。仲良くしなさい」
父に目の前の少女を紹介された時に私の中に渦巻いていた不快感が一気に膨れ上がり破裂した。
そして思い出してしまった。
(あぁ、そうか……私は『悪役令嬢』なんだ)
前世でプレイしていた乙女ゲーム、そのヒロインが目の前にいる少女マリーナ。
そして私はヒロインを貶める悪役令嬢。
他の事は思い出せないのにその知識だけが今、私の中に記憶として甦ってきた。
とても不思議な感覚で白昼夢でも見ているかのようだ。
「あの……お姉様?」
ぼーっとした私を心配するようにマリーナが手を伸ばしてくる。
「触らないで、妾の子の分際で」
ぱしんと手をはたき落とすとマリーナは瞳を潤ませて父の足元にすがりつく。
「スザンナ!妹に手をあげるとは何事だ!」
父の怒鳴り声に周りにいた使用人達が息を飲む気配がした。
ついさっきまでの私なら父に気に入られようと嘘でもマリーナに優しく出来ただろう。
けれどそんな事をしても無駄だと理解してしまった。
「あら、お母様に暴力を振るっていたあなたが言いますの?」
その瞬間父の顔色が変わったかと思うと左の頬に衝撃を受けた。
余程の力だったのだろう、私の体は軽く横に飛んだ。
薄れていく意識の中で誰かの悲鳴が聞こえた気がした。
◇◇◇
目が覚めるとそこは私の部屋だった。
「スザンナお嬢様……なんておいたわしい……」
啜り泣く声が聞こえそちらに視線を向けると侍女のリエナが私の頬を濡らしたタオルで冷やしながらはらはらと涙を溢していた。
「リエナ……私、どうなったの……」
頬が腫れているのか喋りづらい。
「旦那様に頬を叩かれて意識を失っていらっしゃったのです。自分の娘を思いきり叩くだなんて……なんて酷い」
「……寧ろ好都合だわ、決心がついたもの」
父に叩かれたにも関わらず不敵な笑みを浮かべた私にリエナは目を瞬かせる。
「決心、ですか?」
何の話をしているのか分からないと首をかしげたリエナに私はにっこりと笑って見せた。
「えぇ、私この屋敷を出て平民になろうと思うの」
「はじめまして、あなたが私のお姉様?」
ピンクブロンドのふわふわした髪と同系色の瞳、ふっくらとした薄紅の頬をもった美少女が私に微笑みかけている。
「スザンナ、今日からお前の妹になるマリーナだ。仲良くしなさい」
父に目の前の少女を紹介された時に私の中に渦巻いていた不快感が一気に膨れ上がり破裂した。
そして思い出してしまった。
(あぁ、そうか……私は『悪役令嬢』なんだ)
前世でプレイしていた乙女ゲーム、そのヒロインが目の前にいる少女マリーナ。
そして私はヒロインを貶める悪役令嬢。
他の事は思い出せないのにその知識だけが今、私の中に記憶として甦ってきた。
とても不思議な感覚で白昼夢でも見ているかのようだ。
「あの……お姉様?」
ぼーっとした私を心配するようにマリーナが手を伸ばしてくる。
「触らないで、妾の子の分際で」
ぱしんと手をはたき落とすとマリーナは瞳を潤ませて父の足元にすがりつく。
「スザンナ!妹に手をあげるとは何事だ!」
父の怒鳴り声に周りにいた使用人達が息を飲む気配がした。
ついさっきまでの私なら父に気に入られようと嘘でもマリーナに優しく出来ただろう。
けれどそんな事をしても無駄だと理解してしまった。
「あら、お母様に暴力を振るっていたあなたが言いますの?」
その瞬間父の顔色が変わったかと思うと左の頬に衝撃を受けた。
余程の力だったのだろう、私の体は軽く横に飛んだ。
薄れていく意識の中で誰かの悲鳴が聞こえた気がした。
◇◇◇
目が覚めるとそこは私の部屋だった。
「スザンナお嬢様……なんておいたわしい……」
啜り泣く声が聞こえそちらに視線を向けると侍女のリエナが私の頬を濡らしたタオルで冷やしながらはらはらと涙を溢していた。
「リエナ……私、どうなったの……」
頬が腫れているのか喋りづらい。
「旦那様に頬を叩かれて意識を失っていらっしゃったのです。自分の娘を思いきり叩くだなんて……なんて酷い」
「……寧ろ好都合だわ、決心がついたもの」
父に叩かれたにも関わらず不敵な笑みを浮かべた私にリエナは目を瞬かせる。
「決心、ですか?」
何の話をしているのか分からないと首をかしげたリエナに私はにっこりと笑って見せた。
「えぇ、私この屋敷を出て平民になろうと思うの」
326
あなたにおすすめの小説
婚約破棄で悪役令嬢を辞めたので、今日から素で生きます。
黒猫かの
恋愛
「エリー・オルブライト! 貴様との婚約を破棄する!」
豪華絢爛な夜会で、ウィルフレッド王子から突きつけられた非情な宣告。
しかし、公爵令嬢エリーの心境は……「よっしゃあ! やっと喋れるわ!!」だった。
追放された悪役令嬢はシングルマザー
ララ
恋愛
神様の手違いで死んでしまった主人公。第二の人生を幸せに生きてほしいと言われ転生するも何と転生先は悪役令嬢。
断罪回避に奮闘するも失敗。
国外追放先で国王の子を孕んでいることに気がつく。
この子は私の子よ!守ってみせるわ。
1人、子を育てる決心をする。
そんな彼女を暖かく見守る人たち。彼女を愛するもの。
さまざまな思惑が蠢く中彼女の掴み取る未来はいかに‥‥
ーーーー
完結確約 9話完結です。
短編のくくりですが10000字ちょっとで少し短いです。
シナリオ通り追放されて早死にしましたが幸せでした
黒姫
恋愛
乙女ゲームの悪役令嬢に転生しました。神様によると、婚約者の王太子に断罪されて極北の修道院に幽閉され、30歳を前にして死んでしまう設定は変えられないそうです。さて、それでも幸せになるにはどうしたら良いでしょうか?(2/16 完結。カテゴリーを恋愛に変更しました。)
「可愛げがない」と婚約破棄された公爵令嬢ですが、領地経営をしていたのは私です
希羽
恋愛
「お前のような可愛げのない女との婚約は破棄する!」
卒業パーティの会場で、婚約者である第二王子デリックはそう宣言し、私の義妹ミナを抱き寄せました。 誰もが私が泣き崩れると思いましたが――正直、せいせいしました。 だって、王子の領地経営、借金返済、結界維持、それら全ての激務を一人でこなしていたのは「可愛げのない」私だったのですから。
「承知しました。では、あとはミナと二人で頑張ってください」
私は手切れ金代わりに面倒な仕事を全て置いて国を出ました。 すると、国境で待っていたのは、隣国ガルガディア帝国の冷徹皇太子ことクライド様。なぜか彼は私を溺愛し、帝国で最高の地位と環境を与えてくれて……。
愛を騙るな
篠月珪霞
恋愛
「王妃よ、そなた一体何が不満だというのだ」
「………」
「贅を尽くした食事、ドレス、宝石、アクセサリー、部屋の調度も最高品質のもの。王妃という地位も用意した。およそ世の女性が望むものすべてを手に入れているというのに、何が不満だというのだ!」
王妃は表情を変えない。何を言っても宥めてもすかしても脅しても変わらない王妃に、苛立った王は声を荒げる。
「何とか言わぬか! 不敬だぞ!」
「……でしたら、牢に入れるなり、処罰するなりお好きに」
「い、いや、それはできぬ」
「何故? 陛下の望むままなさればよろしい」
「余は、そなたを愛しているのだ。愛するものにそのような仕打ち、到底考えられぬ」
途端、王妃の嘲る笑い声が響く。
「畜生にも劣る陛下が、愛を騙るなどおこがましいですわね」
悪役令嬢発溺愛幼女着
みおな
ファンタジー
「違います!わたくしは、フローラさんをいじめてなどいません!」
わたくしの声がホールに響いたけれど、誰もわたくしに手を差し伸べて下さることはなかった。
響いたのは、婚約者である王太子殿下の冷たい声。
わたくしに差し伸べられたのは、騎士団長のご子息がわたくしを強く床に押し付ける腕。
冷ややかな周囲のご令嬢ご令息の冷笑。
どうして。
誰もわたくしを信じてくれないまま、わたくしは冷たい牢の中で命を落とした。
《完結》金貨5000枚で売られた王太子妃
ぜらちん黒糖
恋愛
「愛している。必ず迎えに行くから待っていてくれ」
甘い言葉を信じて、隣国へ「人質」となった王太子妃イザベラ。
旅立ちの前の晩、二人は愛し合い、イザベラのお腹には新しい命が宿った。すぐに夫に知らせた イザベラだったが、夫から届いた返信は、信じられない内容だった。
「それは本当に私の子供なのか?」
婚約破棄?王子様の婚約者は私ではなく檻の中にいますよ?
荷居人(にいと)
恋愛
「貴様とは婚約破棄だ!」
そうかっこつけ王子に言われたのは私でした。しかし、そう言われるのは想定済み……というより、前世の記憶で知ってましたのですでに婚約者は代えてあります。
「殿下、お言葉ですが、貴方の婚約者は私の妹であって私ではありませんよ?」
「妹……?何を言うかと思えば貴様にいるのは兄ひとりだろう!」
「いいえ?実は父が養女にした妹がいるのです。今は檻の中ですから殿下が知らないのも無理はありません」
「は?」
さあ、初めての感動のご対面の日です。婚約破棄するなら勝手にどうぞ?妹は今日のために頑張ってきましたからね、気持ちが変わるかもしれませんし。
荷居人の婚約破棄シリーズ第八弾!今回もギャグ寄りです。個性な作品を目指して今回も完結向けて頑張ります!
第七弾まで完結済み(番外編は生涯連載中)!荷居人タグで検索!どれも繋がりのない短編集となります。
表紙に特に意味はありません。お疲れの方、猫で癒されてねというだけです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる