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4.救われた先で
死んだのだと思った。
ふわふわとした意識の中で亡くなったはずの母の声が聞こえてきたから。
「もう大丈夫。苦しいのも悲しいのも全部おしまいよ」
頭を優しく撫でてくれる感触に涙が溢れる。
「お母様、会いたかった」
そう呟けば母が微笑む気配がした。
「私も会いたかったわ。もう大丈夫だから、今はゆっくりおやすみなさい。これからはきっと、あの人が守ってくれるわ」
また優しく頭を撫でられる。
ここはきっと天国なんだ。
私を哀れんだ神様が頑張って生きてきた私にくれたご褒美に母のもとに導いてくれたんだと思った。
母の言うように今はゆっくり眠ろう。
今日は……いや、母がいなくなってからずっと頑張ったから疲れていたんだ。
でもあの人って、誰のこと……?
疑問に思いながらも、母の温もりに包まれるような感覚に私はぐっすりと眠った。
◇◇◇
目が覚めると見知らぬ部屋を朝日が照らしていた。
木で出来た簡素なベッドと椅子と小さなテーブルが一つだけの部屋。
意識がはっきりしてくると同時に自分が男達に追われ川に落ちた事を思い出す。
まさか捕まってしまったのかと自分の体を見下ろせばシンプルなワンピースに着替えさせられていただけで、特に暴行を受けた痕はない。
と言うことは誰かに助けられたのだろうか。
(お母様の所には……行けなかった)
母の声が聞こえたのは夢だったのだろう。
少し残念に思いながら起き上がるとカシャンと何かが床に落ちた。
リエナが持たせてくれた母のロケットペンダントだ。
それを拾い上げて両手で包み込む。
(きっとお母様が助けてくれたのかしら)
母は私が生きることを願っているのかもしれない。
心の中で母に礼を述べていると不意に木のドアが軋んだ音を立てて開かれた。
「あら……」
顔を向ければそこには女性が一人立っていた。
白髪を後ろでひとつに結んだ姿勢のいい初老の女性だ。
「目が覚めた?」
優しい微笑みが母と重なりつい目頭が熱くなる。
こみ上げる感情を押さえ込んでベッドから立ち上がると私は女性に向かって頭を下げた。
「助けていただきありがとうございます」
「あらあら、しっかりしたお嬢さんだこと。痛いところや苦しいところは無いかしら?」
ベッドに座るように促され大人しく腰掛けると女性は木の椅子に腰掛け、私の体を気遣ってくれた。
「はい。大丈夫です」
迷惑をかけて申し訳ないと思いながらそう告げると女性は微笑みながら頬に手を当て首を傾けた。
「子供が気を使うことなんて無いのよ。まだ起きたばかりなのだから無理は駄目。そうだ、スープを作ったのだけれど気分が良ければどうかしら?」
「そこまでお世話になる訳には……」
助けてもらい食事まで施してもらっても、今の私には返せるだけのお金がない。
そう思い断ろうとした瞬間。
ぐうぅ、きゅるる
随分間の抜けた音がした。私の腹の虫は正直らしい。
ぶわりと頬が熱くなり慌ててお腹を押さえる。
「私もこれから朝ごはんなの。一緒に食べましょう?」
くすくすと笑う女性に私は羞恥に耐えながら小さく頷いた。
女性は私の体を気遣い、わざわざ部屋までスープを運んできてくれた。
二人分の器をテーブルに置いてそのうち一つと木のスプーンを差し出してくれる。
ふわりとした優しい匂いに催促するようにお腹が鳴った。
「い、いただきます」
「どうぞ召し上がれ。お口に合うといいのだけど」
スプーンでスープを掬う。
ポタージュの様にとろみがついていたが味付けはそんなに濃くはない。
空腹だったこともあり、私はあっという間に器を空にしてしまった。
「ご馳走さまでした。すごく美味しかったです」
器をテーブルに置いて礼を述べると女性は安心した様に微笑む。
「よかった、食欲があるなら大丈夫ね」
「何から何までお世話になってすみません……」
「気にしなくていいのよ、私も可愛らしいお嬢さんのお世話ができて嬉しいのだから……もしよかったら何があったのか教えてくれる?」
女性の問い掛けに頷き、私はこれまでの経緯を簡単に説明した。
ふわふわとした意識の中で亡くなったはずの母の声が聞こえてきたから。
「もう大丈夫。苦しいのも悲しいのも全部おしまいよ」
頭を優しく撫でてくれる感触に涙が溢れる。
「お母様、会いたかった」
そう呟けば母が微笑む気配がした。
「私も会いたかったわ。もう大丈夫だから、今はゆっくりおやすみなさい。これからはきっと、あの人が守ってくれるわ」
また優しく頭を撫でられる。
ここはきっと天国なんだ。
私を哀れんだ神様が頑張って生きてきた私にくれたご褒美に母のもとに導いてくれたんだと思った。
母の言うように今はゆっくり眠ろう。
今日は……いや、母がいなくなってからずっと頑張ったから疲れていたんだ。
でもあの人って、誰のこと……?
疑問に思いながらも、母の温もりに包まれるような感覚に私はぐっすりと眠った。
◇◇◇
目が覚めると見知らぬ部屋を朝日が照らしていた。
木で出来た簡素なベッドと椅子と小さなテーブルが一つだけの部屋。
意識がはっきりしてくると同時に自分が男達に追われ川に落ちた事を思い出す。
まさか捕まってしまったのかと自分の体を見下ろせばシンプルなワンピースに着替えさせられていただけで、特に暴行を受けた痕はない。
と言うことは誰かに助けられたのだろうか。
(お母様の所には……行けなかった)
母の声が聞こえたのは夢だったのだろう。
少し残念に思いながら起き上がるとカシャンと何かが床に落ちた。
リエナが持たせてくれた母のロケットペンダントだ。
それを拾い上げて両手で包み込む。
(きっとお母様が助けてくれたのかしら)
母は私が生きることを願っているのかもしれない。
心の中で母に礼を述べていると不意に木のドアが軋んだ音を立てて開かれた。
「あら……」
顔を向ければそこには女性が一人立っていた。
白髪を後ろでひとつに結んだ姿勢のいい初老の女性だ。
「目が覚めた?」
優しい微笑みが母と重なりつい目頭が熱くなる。
こみ上げる感情を押さえ込んでベッドから立ち上がると私は女性に向かって頭を下げた。
「助けていただきありがとうございます」
「あらあら、しっかりしたお嬢さんだこと。痛いところや苦しいところは無いかしら?」
ベッドに座るように促され大人しく腰掛けると女性は木の椅子に腰掛け、私の体を気遣ってくれた。
「はい。大丈夫です」
迷惑をかけて申し訳ないと思いながらそう告げると女性は微笑みながら頬に手を当て首を傾けた。
「子供が気を使うことなんて無いのよ。まだ起きたばかりなのだから無理は駄目。そうだ、スープを作ったのだけれど気分が良ければどうかしら?」
「そこまでお世話になる訳には……」
助けてもらい食事まで施してもらっても、今の私には返せるだけのお金がない。
そう思い断ろうとした瞬間。
ぐうぅ、きゅるる
随分間の抜けた音がした。私の腹の虫は正直らしい。
ぶわりと頬が熱くなり慌ててお腹を押さえる。
「私もこれから朝ごはんなの。一緒に食べましょう?」
くすくすと笑う女性に私は羞恥に耐えながら小さく頷いた。
女性は私の体を気遣い、わざわざ部屋までスープを運んできてくれた。
二人分の器をテーブルに置いてそのうち一つと木のスプーンを差し出してくれる。
ふわりとした優しい匂いに催促するようにお腹が鳴った。
「い、いただきます」
「どうぞ召し上がれ。お口に合うといいのだけど」
スプーンでスープを掬う。
ポタージュの様にとろみがついていたが味付けはそんなに濃くはない。
空腹だったこともあり、私はあっという間に器を空にしてしまった。
「ご馳走さまでした。すごく美味しかったです」
器をテーブルに置いて礼を述べると女性は安心した様に微笑む。
「よかった、食欲があるなら大丈夫ね」
「何から何までお世話になってすみません……」
「気にしなくていいのよ、私も可愛らしいお嬢さんのお世話ができて嬉しいのだから……もしよかったら何があったのか教えてくれる?」
女性の問い掛けに頷き、私はこれまでの経緯を簡単に説明した。
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