17 ジュウナナ

ガランドウ

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第1章 真木 陸斗

第7話 赤髪のゼファ

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 公園の中心が円形の更地になっていて、その中心に一本の外灯がそびえ立ち、辺りを照らす。
 
 リクトが思った「赤い」は、その外灯に並び立つ人の髪が赤く、とても印象的だったからだ。
 
 「やぁやぁ、待ってたよぉ・・いや待ってた?違うな、探してたんだった、いや探してた?違う気がする・・そう、そうだ逢いたかった、だ!」
 言葉選びを声に出し、そして辿り着いたのだろう言葉を吐いた時には、三文役者のようにオーバーアクションで、リクトを迎え入れるように右手を差し出す。
 
 「新たな17席の人、逢いたかったよ!!」
 続けて吐かれた言葉に、時間が止まったかのように一時の静けさが通り過ぎる。
 
 「えっと、どちら様で?」
 顔を傾け、とぼけて見せながらリクトは思考を巡らせる・・・。


 (新たな17席とか言う時点で意味はわからないが、何となくリョウと同類、いや今じゃあ俺もその一員か)

 (そういった点では他人ではないのだろう)

 (だが情報が無さ過ぎるのと、どこか得体の知れなさがある)

 (ならば、言葉のやり取りを優先させたい)
 

 「んん?なにその反応。白けるなぁ・・いや違うか、虚しい?これも違うなぁ・・そう、悲しいだ!」
 赤髪の言葉選びがまた始まった。
 
 「僕は悲しいよ!新たな・・」

 「あーすいません、すいません」
 リクトは赤髪の言葉を、最後まで聞かずに言葉を被せた。
 
 「突然なのでびっくりしちゃって、初めましてですよね?俺はリクト、マキリクトっていいます」
 ベンチから立ち上がり、礼節に乗っ取り腰を折る。
 
 「お、リクト君っていうのか、どうでもいい名前、いや違った、いい名前だね、これだ!」

  (こいつ・・心の声がだだ漏れってやつか?)
 赤髪の言葉選びの理由わけをリクトはなんとなく察した。

 「あなたはあの議事場に関係する人ですよね?お名前伺っても?」
 「いい名前だね」と言われる前に、先に質問をぶつける。
 
 「いいなま・・ん?・・ぐぬぬ」
 言おうとした言葉を潰され狼狽え出すが、赤髪はコホンと咳払いをし冷静さを取り戻す。
   
 「名乗ってなかったね、僕の名前はゼファ。よろしくねじゃない、今後とも、いや以後よろしく・・もういいや」
 
 改めてゼファと名乗る人物を眺める。

 印象的な赤髪、線が細い体躯で、リクトよりも背が高い。

 因みにリクトの身長は170cmほどで、ゼファは180cmは優に超えている。

 顔は整った顔立ちで彫りは深く、ハーフと言っても通じるほどの男前だ。

 前のボタンを全て閉め、襟を立てたグレーのロングコートのポケットに両手を突っ込んでいるが、なぜかスキがないように感じる。
 
 「さぁやろう!・・って違う、殺す!いや違うだろ・・戦おうか!」
 物騒な事を言い出すっていうか考えてるのか、ゼファは少し体重を前に乗せているが、手はコートのポケットの中にあり、構えがない。
 
 「いきなりだな、ゼファさん。戦う理由が俺には分からないが、聞かせて貰えない?」
 リクトはそう来たかと思える自分に驚きはない。
 
 せめて戦う理由だけでも聞くことが出来れば、リクト自身のこれからを見出す手掛かりにはなるだろう。
 
 ゼファはそこで初めてポケットから手を出し、考えるように頬に手を当て首を傾げる。
 
 「理由?理由ねぇ・・色々あるよ、ある?言っていいのか?いや」
 うんと一人頷き、拳を前に突き出す。
 
 「言葉なぞ無粋!男なら拳で語れ!」
 その言葉は多分用意してたんだろうと、詰まらないで言った事が物語る。
 
 「色々理由はあるんだな?ゼファさんはそれでも語らないと。けどその文句セリフ、俺は嫌いじゃないぜ」
 
 リクトは着ていたダウンジャケットを脱ぎ捨て、数歩ゼファとの間合いを詰めた後、半歩左足を引き右足に体重を乗せて立つ。だが、両腕はだらりと下げたままだ。
 
 「始めようか、アンタから洗いざらい聞き出してやるよ」

 2人の距離はおおよそ10mはある。

 お互い構えらしい構えを取っていないが、視線は絡み合っている。
 
 初動はゼファ。

 身体を揺するように前後に動かし、一定のリズムを刻んだ後、後ろに飛んだ。
 
 一瞬リクトは「逃げ?」と思い、距離を詰めようと体重を乗せた右足に力を込め、飛ぼうとしたが、リクトの右肩口に何かが通り抜けた。
 
 「ほう、よく避けたね。見えてたか?いや、見えてないだろう」
 着地したゼファは、今の一手を考察を口にする。
 
 その通り、リクトは見えていなかった。

 鋭利な刃物で切られたようにパーカーの肩口が切れ、うっすらと血が滲む。
  
 偶々たまたま飛ぼうと身体が沈んだことで、肩をかすめる程度で済んでいたのだ。
 
 (何か投げてるんだろうが、全く見えねぇ)

 リクトは下げていた両腕を、身体の前に上げる。
 
 右手が上、左手が下。

 両手は開き手刀ようにした手の構えは、その手に剣が握られれば正眼の構えである。
 
 それが無手であっても剣の道を極めるべく、人生のほとんどを剣に捧げてきたリクトが構えれば、見えるはずもない剣が幻視する。
 
 「ほう」とゼファはその姿に感嘆する。

 「リクト、キミの技能はそれか、なるほど、いや何?、わかった!」
 
 ゼファはまた何度か身体を揺すった後、今度は距離を詰めるように前に飛ぶが、コートのポケットから右手を出し、リクトへてのひらを前に突き出す。
 
 リクトは正眼の構えのまま、動かない。
 
 ゼファは着地する寸前、突き出していた掌を自分の胸に引き戻し、握り込んだ。
 
 リクトは着地する寸前を狙っていた。

 だが正眼の構えから下段、脇構えへ移行した瞬間、左二の腕が切り裂かれる。
 
 「また避けられた。見えてないよね?いや、さすがに見えてるな」
 着地と同時に数歩飛んで下がりながら、また考察をしている。
 
 これもまたリクトには見えてなかった。というより、攻撃が後ろから来たのだ。

 そしてまた偶然、脇構えから逆袈裟切りへ持って行こうとした為に、左足を下げ、半身になった事で攻撃が逸れたのだ。

 だが腕に負った傷は、肩よりも深く切り裂かれている。
 
 「待つよ。いらない腕落としたら?いや、止血?そう止血したらいい」

 リクトは「ども」と軽く頭を下げ、その言葉に甘える。
 
 切られた袖を引き千切り、それを使って傷口に巻き付け引き絞り、腕を何度か回し具合を確かめる。
 
 ゼファの攻撃は見えない。いや、見えていなかった。というのも後ろからの攻撃を喰らう前、右手の甲に何かに当たり、一瞬であったが見たことのある白い線となった記号列が浮かんだのだ。
 
 ならば・・。
 
 「ゼファ、もうアンタの攻撃は見切った!もう俺には通用しない」
 不遜な笑みを浮かべゼファを指差し、居丈高に宣言するが、半分ブラフなのは言うまでもない。
 
 「ふむ、なかなか出来が良いみたいだね。これのやり方教えて、いや身を持って?う~む、なんて言ったらいい?」

 (あ、ついに言葉選ぶの放棄しやがった)
  ヤレヤレと溜息を吐いたリクトだったが、ゼファの言葉に引っかかる。
  
 「教えるってどういう意味だ?」

 リクトの質問に、ニヤリと笑ったゼファが両腕を広げる。
 
 「ゼファさんや、人の話聞いてる!?」
 リクトは攻撃を警戒し、正眼に構える。
 
 広げた両腕を、オペ室に入る前の執刀医のように掲げる。

 ハッキリ見えてはないが、リクトはゼファが使う武器を見たことがある。
 
 2度の攻撃と触れた白い線、そこからリクトはその武器が何かを導き出していたが、憶測の域を出ない。
 
 そして今度は今までノーモーションで仕掛けて来ていたにも係らわず、予備動作を見せられ確信に変わる。
 
 リクトは「ヒュッ」と息を吸い込み、感覚を研ぎ澄ます。
 
 耳の奥で「キーン」と耳鳴りがし、その瞬間時間がゆっくりと流れだす。
 
 ゼファの予備動作が終わり、既に右腕を前方に投げ出している。
 
 それに合わせるように右手を左にスライドさせ、両腕をクロスさせながらさばくように左足を右後方に引く。
 
 スライドさせた手の平に何かの感触が伝わり、その瞬間見覚えのある白く光る記号で形作られた槍先が姿を現す。
 
 間髪を入れず、左腕を振るゼファ。
 
 右手を逆の右側にスライドさせ、また手の甲で捌く。

 スローな世界での攻防。
 
 2手を交え、ゼファの武器が姿を露わにする。
 
 「縄鏢ジョウヒョウ・・だよな?」
 リクトが問いかけた時には、槍先はゼファの手元に戻っている。
 
 「ふ、バレたか、いやよくぞ見破った!」
 両手に持った槍先を手放し、だらりと吊り下げる。
 
 「そう、これは僕が使うアルマだ」

 ゼファが使う武器縄鏢とは、槍先や棒手裏剣を紐でくくり、その槍先の重さを利用して振り回したり投げ出したりと、遠距離からも攻撃ができ、また槍先を直に持ち近距離でも対応したりする、中国武術で用いる武器の一種だ。
 
 「ふ~ん、けど俺が知ってる縄鏢の使い手は、もっとこう踊ると言うか、振り回すモーションが派手と言うか・・」

 ゼファは指を一本たて、左右に「チッチッチ」と振って、リクとの言葉を否定する。
 
 「何の為に僕達には、この力があると思ってるの?」
 右手の縄鏢を軽く振り上げ、リクトに飛ばす。
 
 「うお!あぶねぇ!!」
 仰け反るように避けるが、避けた眼前で槍先が止まっている為、そのまま尻餅を付く。
 
 「この武器は僕の生命エネルギーの一部で出来てる、だから動きの制御も自在。それと」
 ゼファは左手を突き出している右腕に添える。
 
 「こうして風を纏わせれば、不可視化にも出来る」
 リクトの頭上にあった縄鏢が消えた。
 
 リクトは立ち上がり、そこに在ったであろう縄鏢に触れてみる。

 だが透明化が解けない。
 
 「ただ触れるだけでは無理だよ、さっきみたいにトランスを纏わないと」
 
 「トランス?なにそれ?」

  ヤレヤレと言わんばかりに呆れ顔をするゼファ。
 「さっきのはでたらめ?いや、破れかぶれ?違うな、意図してない、だ」
 
 また始まった・・説明するときは普通に喋るのにこれだ。
 
 「さっきっていうのは、攻撃を受けた時に触れたのがそうなんだな?」
 
 リクトは感覚を研ぎ澄まし、これから行われる攻防を頭の中でトレースする。
 
 すると、刹那の時間が間延びする。
 
 言わばゾーンに入っている状態になるのだが、これのことを言っているのだろうか。
 
 「ふむ、まぁそれを意図して出来るのなら問題ない。僕はそれをトランスと呼んでいる」
 
 リクトは意図して出来ると言えば出来る。
 
 だがそれは勝負や正に今のような戦いの最中に起こる事象であり、常にゾーンに入ったままで居続けるわけもなく、不意を突かれたら何もできないだろう。
 
 「さぁ、やろう、じゃない続けようでもない、語り合おう、これだ!」
 
 ゼファは両手を掲げ、縄鏢を上に向けて伸ばしていく。
 
 もう不可視にする風を使う気はないようだ。
 
 先端の槍先が鎌首をもたげるように、リクトに狙いを定めた。

 「さぁ、語り合おう!」

 リクトは左足を少し引き、両腕をだらりと垂らしたまま少し腰を落とす。
 
 リクトに構えが無いのではなく、正眼に構えた両腕を下にしたノーガードのように見える構えが、リクトの最も得意とする下段、地の構えを無手に反映した結果、出来上がった構えだ。
 
 もう攻撃と防御にバランスの取れた正眼に構える必要はない。
 
 相手の手札は晒された。
 
 ならば仕留めるのみ。
 
 一瞬縄鏢の槍先が後ろに引き、勢いを付け真直ぐにリクトめがけて射出される。
 
 それは直線的で、リクトからすると、自分に迫る点だ。
 
 ゾーンに入り、刹那の流れが引き伸ばされる。
 
 リクトは踏み出し、点に向かって肉薄する。
 
 それを察知していたゼファが、もう一方の縄鏢を横に振る。
 
 リクトは目の端でその様を捉え、前方の槍先を右手甲で下から払い上げ、身体の軸回転を利用し、今度は左手で横から迫る縄鏢に対処しようとしたが、ヤバさを感じダッキングをして躱す。
 
 頭上を「ゴウ!」と風切り音を響かせ、縄鏢が棒を振り抜くように通り過ぎる。
 
 点から横の線での攻撃。しかもその縄の部分は、通常の縄鏢ならば防御した腕なりを絡め取ったりする程度だが、触れたらヤバい気がして回避を選択。
 
 リクトは「やるな」と独り言ちて相手を見やると、そのゼファは両腕を広げたまま、前方に宙返りをし、天空から縄鏢が鞭のように振り下ろされる。
  
 「ヤバい!」
 しゃがみ込んだ体勢から前に飛び込んで回避を試みるが、その背中に縄の部分を打ち付けられ、そのまま地面に押し潰された。
 
 「がはぁ!」
 太い鉄筋で叩きつけられたかのような威力に、リクトは血反吐を吐いた。
 
 「まぁまぁかな、いやまだまだ、ちがうな、甘い!、これだ」
 赤い髪を掻き上げ、ゼファはビシっとリクトを指差す。
 「甘いな、リクト!」
 
 咳き込みながら、ヨロヨロと立ち上がるリクト。
 「ひきょ・・いや、すげぇなお前・・」
 
 フフン!と褒められたのが嬉しかったのか顔を綻ばすが、すぐ真顔になり
 「お前じゃない、ゼファさんだろ!」
 リクトの言葉遣いに怒り出す。

 「・・はいはい、ゼファ・・さん」
 リクトは詫びを入れながらも、卑怯と言いそうになった自分を律していた。
 
 相手の得物が2つと思い込んでたのは、自分の勝手な思い込み。

 まだまだ集中出来てないのだと。
  
 「まぁいい、それにちょっと君を見直した、いや惚れた、ちがう感心した、かな?」
 ゼファは徐ろにサムズアップを繰り出す。

 「感心した!だから少し話をしようか。君にとって楽しい、いや嬉しい、いやちがう必要な、これだ」
 
 「ハイ!」とリクトは荒い息を吐きながら、手を挙げる。
 「俺に感心したから、俺にとって必要な話をしてくれると?」
 
 ゼファはビックリした表情をする。
 「君は人の心を読めるのか?それは凄いことだよ・・感心した」
 
 大丈夫なのか・・こいつ。

 ゼファはリクトを一頻り感心した後、必要な話と言って語りだした。


 「僕達は、戦いの中でこそ生きる意味を持つ。それは知識や経験、それに伴う技能。沢山の人生を渡り歩き、磨かれていく」
 リョウに聞かされたことのない話を、ゼファはウロウロと歩きながら語る。

 「それは君の中にもあるはずだ。戦い磨かれた唯一無二のアルマが」
 歩みを止め、リクトの顔を覗き込む。
 
 「君は・・どっちなんだろう?」
 言ってる意味が分からなく、キョトンとするリクト。

 「ふむ・・まぁいずれ分かることかな。では続きをするとしますか」
 
  (この人ホント、説明するときはマトモなんだよな・・)
 違う意味で感心してしまうリクトは「ハイハイ」と溜め息混じりで応じ、服についたホコリを払うと戦闘態勢に移行する。
 
 結局は情報を餌に、リクトの戦闘力を推し量るつもりなのだろう。
 
 リクトは根っから戦う事が好きだ、試合であろうと私闘であっても。
 
 戦いに身を投じた結果、益があるのなら、それに越したことはない。

 ゼファは指先をチョイチョイと誘うように動かし、リクトに「かかってきなさい」とアピールする。

 「お、今度はこっちから行っていいのね・・ナメられたもんだ!」
 リクトは両手を下げたまま、一直線にゼファに向かって飛ぶ。
 
 肉薄し、ゼファの顎に向かって、下から上に向かって掌底を突き上げ、風圧が上に向かって吹き上がる。

 紙一重で躱されるが、突き上げた掌底を手刀に変え、踏み込みながら弧を描くように振り下ろす。

 手刀の打ち下ろしも躱されるが、「キン!」と鋭い風切り音が鳴り、遅れて地面に風圧が当たり、土埃が舞い上がった。

 ゼファは躱した姿勢のままリクトを見下ろし、リクトは打ち下ろした姿勢のまま動かないでいた。

 リクトは自分の技に驚きを隠せない。
 
 自分の想定以上に技がキレる。いや、キレるどころではない、今まで経験したことのない、流れの速さと力に驚く。

 異常に研ぎ澄まされた感覚に陥ったことは分かっていた。
 
 刹那が引き伸ばされた空間に居ながら、今まで以上に早く身体が動くのだ。
 
 距離を取ったゼファの攻撃を想定していたのだが、来ない。
 
 ならばと、巻き上げ切り落としをいや、剣がないから巻き上げを掌底、切り落としを手刀にし、放ったのだったが・・。

 ゼファは全ての攻撃を見事に躱し、数歩後ろに下がったゼファがリクトをジト見した。

 「やるじゃないか、ちょっと怖かった、じゃないビックリした、いやちがう!なんてことないね!」
 そう言いながら、紐の部分が切り離された縄鏢を捨てる。
 
 地に落ちた縄鏢はバラバラな記号と化し、霧散する。

 「当たらなければ、なんてことないね!」
 
 「当たってるやんけ、この野郎」
 振り下ろした手刀がゼファの縄鏢に触れていたのだ。



 そこからは、ゼファの攻撃によって蹂躙される。
 
 ムキになっているのか、端から本気を出していなかったのか、瞬く間にリクトはボロボロにされた。
 
 完全に格の違いを思い知らされる。

 「あのねリクト、自分だけのアルマを早く身につけな。あるはずだよリクトだけが持つ唯一のアルマが」
 ゼファのリクトを見下ろすその顔は、どこか尊いものを見るような、寂しげな雰囲気がある。

 「じゃ、今日はここまで!またね」
 ゼファは踵を返し、背中越しに手を振って去っていった。


 「はぁ・・疲れた・・ありゃ勝てへんわ」
 リクトは仰向けに倒れたまま、完敗を受け入れた。

 「痛たたた・・ってか俺このままじゃ死んじゃう・・」
 リクトはボロボロになった身体に鞭打ち、どこか休めるところを求め歩き出した。



        §



 ゼファは次の目的地に向け、歩みを進めていた。

 「新たな出会いは、人生に華を添えるよね!」
 どこか上機嫌で、なんならステップを踏みそうな程足取りが軽い。

 「何かいいことあったの、ゼファ?」
 
 「うん!リクトは新たな仲間に相応しい子だったよ!・・・って誰だ!」
 後ろから問いかけられ、しっかり答えているにも拘らず、今気づいたように振り返るゼファ。

 「はぁ・・」と深々と溜息を吐くは、ファ付きの白いハーフコートを羽織り、茶髪のロングヘアを後ろに流した美少女。

 「随分ご機嫌だったから声掛けづらかっただけで、さっきから後ろにいたわよ?」
 少し困り顔を見せるが、諦めの色が混じりだす。
 
 「まぁあなたにとっては都合のいい部類の子、だったってことは分かったわ」
 
 「僕の事はいいんだよ。それより、キミの方はどうだったんだ?」
 ゼファは薄い目をして少女を睨みつける。

 「もう、女子会の事を気にする男って、モテないわよ?」
 少女はニコっと笑顔を見せるが、いじわるそうな目をしている。

 「あーもう、いい気分が台無しだよ、まったく!」
 機嫌を悪くし、少女に背を向け去ろうとする。

 「ちょっと待って待って!ごめんて、怒んないでよ」
 慌ててゼファにしがみ付く。

 「じゃさ、それぞれどっちが一つになったのか、答え合わせしない?」
 ゼファは少女の言葉に興味を引かれたのか、立ち止まり少女を見る。

 「それって、どっちか分かったって事?」

 ゼファの言葉に「えっ!?」と絶句する少女。

 「ゼファは何のためにここに来たのよ!あーもういい、私がそのリクトって子と会ってくる」
 「使えねぇ」と捨てゼリフを吐き、走って行こうとする少女の手をゼファは引っ張り、引き留める。

 「待てよ!確かにリクトのアルマは見ていないけど、僕には確信があるよ!」
 ゼファはリクトとの手合わせを思い起こしているのだろう、顔がニヤけ出す。
 
 「きっしょ・・」
 恍惚の表情を浮かべるゼファに、嫌悪感丸出しの少女。

 「あのね、私はキッチリあの子のアルマ、見てきたけど?」
 
 「ほう、何だった?」
 
 「じゃ、お互い言い合いましょ、いい?」
 二人はデコがくっつくほど顔を寄せ合う。

 「せーの!」
 
 「・・・・・」
 
 「え?」
 
 「え?」
 お互い弾かれたように、顔を離す。

 「ホントに見たのか?その子のアルマ」
 ゼファは訝しむ。

 「ええ、教える前から顕現しちゃってたよ?ってかゼファは見てないんでしょ?私が正しいに決まってるじゃない!」
 プンっと頬を膨らませて怒る少女。

 「なんか疑念?いや合致しない・・なんだろこのモヤモヤ・・」
 納得いかないと、尚も言い募ろうとするゼファ。
 
 いつまでも平行線を辿る二人だった。

 ・・つづく・・
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