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第2章 一色 咲良
第1話 咲良(さくら)
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2012年 4月10日 大阪キタのラブホテル街
そこは大阪随一の繁華街、所謂北と呼ばれる地域の東側、東梅田を更に新御堂の高架を隔て、更に東の地域に位置する小規模なホテル街。
きらびやかなキタ地域と比べ辺りは薄暗く、路上を照らす光は、少ない外灯と各店舗が自己表現する電飾看板の灯りのみ。
そんな薄暗い路上に、3人の女性グループが、忙しなくタバコを吹かしながら、辺りを見渡している。
その女性達はブロンドの髪をした背の高い女性や、肌の色の黒い女性と言った具合で、国際色豊かだ。
それぞれ色違いのトレンチコートを羽織ってはいるが、コートの中は露出度の高いランジェリーと透けたキャミソール身につけている。
彼女たちは立ちんぼ、所謂娼婦だ。
この頃では取締の強化で少なくなっている光景なのだが、90年代頃までは店鋪のないブロック塀の壁に、ずらりと多くの女性が立ちんぼをし、頻繁に客引きを行っていたものだ。
2人組のサラリーマン風の男達が、笑い合いながら道を行くのを女性たちは立ち塞がり、片言の日本語で何事か言い寄る。
男達は顔を寄せ合い話し合った後、それぞれ好みの女性の腰に手を回し、ホテルの方に去っていく。
「フン、性病患者2名の出来上がり~っと・・そんなに外人としたいかねぇ日本人ってのは」
一人残された娼婦は毒づき、新たな客を物色するように通りの先を睨むが、暗がりの先からフラフラと此方に向かってくる人影に唖然とする。
その人影が暗がりから外灯の灯りに照らされ、全裸の少女を浮かび上がらせた。
金髪ではあるがてっぺん部分が黒く、ブリーチによるものだと分かる。
体はスレンダーではあるが豊満な胸をしており、それを隠すわけでもなく両腕をブラブラとさせ、フラつきながら歩いてくる。
「ア、アンタ・・どうしたんだい、なにかあったの?」
娼婦は慌てて裸の少女に駆け寄り、自分が羽織っていたコートを脱いで少女の体を覆うように掛けた。
路地裏からでしか入っていけないような雑居ビルの2階。
そこは、娼婦たちの根城として当てがわれた、煤けたビルの一室。
「ほら、これでも飲んで・・ちょっとは落ち着いた?」
娼婦は、裸の少女を娼婦たちの寝床にまで連れていき、匿っていた。
「私は由紀っていうの、アンタ名前は?」
自分の名を名乗り、裸の少女に着せる服を物色しだす。
「サクラ・・」
少女はポツリの名を名乗る。
「サクラかぁ、いい名前だね」
由紀はTシャツとデニム地のショートパンツをサクラに手渡す。
「この前もあったんだよ、悪い客がいてさ、変な趣味に付き合わされて裸で逃げ出してきた子がさ」
呆れたような身振りをし、自分のマグカップにもコーヒーを注ぐ。
「それで、何があったか話せる?・・見たところ酷いケガはしてないみたいだけど」
サクラが服を着る姿を見届け事の真相を聞き出そうとするが、サクラは何も語らず辺りを見渡している。
「力になれることもあるんだよ、ちゃんと相談に乗ってくれる人もいるし・・」
「おーい、由紀いるかー?」
階下から大きな声が聞こえ、由紀は慌てだした。
「サクラ、そこの押入れに隠れて、早く!」
由紀はサクラを探しに元締めが来たと思い、無理やりサクラを押入れの下に押し込む。
「何やってんだ由紀、いるなら返事ぐらいしろや!」
ノックも無く部屋に入ってきた男は、由紀を見つけるといきなり怒鳴りつける。
「ど、どうした・・んですか」
由紀の声に怯えの色が混じる。
「どうしたじゃねぇ!おどれ仕事ほっぽって何しとんじゃ!」
男は由紀を掴み上げ、頬を張り倒す。
「や、やめて、やめて!・・富田さん、すぐに戻りますから!」
涙を流し、男に懇願する。
富田はチンピラ丸出しの薄手のシャツに白のスラックスを履いており、ソリの入ったリーゼント頭をクシで整え格好をつける。
「唯でさえアガリの少ないお前らの面倒見てやってるっていうのによう!」
富田は拳を振り上げ、由紀を威嚇する。
「ひっ・・」
由紀は打たれまいと体を縮込めたその時、「ガタ」と押入れから物音が鳴る。
「オ、オイ由紀、押入れに誰かいるんか?」
物音に気付くが、富田は押入れの方に行かない。
「オイ由紀、聞いてるんか!」
富田は由紀に蹴りを入れ、押入れの方に追い立てる。
チンピラ富田のその行為は、肝っ玉の小ささが如実に現れている。
富田の暴力に耐えかね、押入れを背にするまで後退るが、戸を開けようとしない由紀。
「いい加減にしろよ・・その戸を開けろや由紀!」
富田は身構えるが、怯えながらも由紀は開けようとしない。
だが由紀が背にした戸が、スッと開かれた。
中からサクラが由紀の肩に手を掛ける。
「大丈夫だよ」と由紀に声を掛け、富田の前に立つ。
「なんだ・・ガキじゃねぇか、ん?アレ?お前・・なんでこんなとこに居るんだ?」
富田はサクラのことを知っているような口振り。
「富田さん連れてってよ、事務所に」
サクラも同じように富田のことを知っているように話す。
「あ、ああ。そやな・・オイ由紀!お前はちゃんと仕事しとけや!」
富田は腑に落ちない様子だが、先立って部屋を出ていく。
「由紀さん、ありがとう。コーヒー美味しかったよ」
サクラは礼を言い、富田の後を追って部屋を出ていった。
由紀はただ見守ることしか出来ないでいた。
ホテル街から車でなら5分もかからない場所、扇町にある雑居ビル。
玄関の真ん前に横付けされた80年代のセドリックの助手席から、サクラが降り立つ。
「オラ、付いて来い」
富田がサクラを顎でシャクリ、先頭に立ってビルのドアをくぐる。
エレベーターに乗り込み、富田は車のキーの先を使い、4Fのボタンを突く。
「お前なんであんなとこにいた?逃げ出したって事はないだろうが・・がぁっ!」
富田は背中越しにサクラへ言葉を掛けていたが、言葉が詰まり無言になる。
「チン!」と4階に辿り着いたエレベーターのドアが開き、サクラが降りてくるが富田の姿はない。
エントランスの正面、ドアのガラス面に「梶尾組」と金文字のカットシートが貼り付けられている。
サクラはエレベーターホールから歩みを止めること無くドアを押し開け、中に入っていく。
カウンターの向こう側、事務デスクの島に4人の男がそれぞれに下卑た笑い声を上げ、談笑していた。
カウンターに沿って奥に進むとパーテーションがあり、その裏側の応接間に裸の体に縄を食い込ませ縛られている女が横倒しにされ、2人の男に足蹴にされている。
「あれ?サクラちゃん、なんでここにいんだ?」
応接セットの奥、木製のデスクに足を投げ出し、驚いた顔でサクラに声をかける男。
「ふむ、会長とはもう終わったんか?」
一人納得して立ち上がり、サクラの方に歩み寄る。
さっきまで縛り上げた女を足蹴にしていた若い男の一人が、サクラの体を舐め回すように見、ニヤついた顔をサクラに寄越す。
「梶さんこの子いいっすねぇ、俺に任してもらえませんか?このババァの子にしては中々の上玉っすよ」
「うるせぇ!」
梶と呼ばれた男は、ニヤついた若い男を殴りつける。
「おどれら、その女さんざん使い回しといて言える話じゃねぇやろが、挙句にシャブまで食わせやがって」
「梶さん・・すんません・・」
若い男は梶に殴られ、鼻血を吹き出しながら詫びを入れる。
「サクラちゃん、会長の事はまぁ通過儀礼だと思ってよ・・後は・・悪いように・・はしな・・い・・」
梶がサクラに向かって話をし出すが、梶の声がサクラにはハウリングしたように遠くで聞こえたり近くなったりし、雑音でまともに聞こえなくなっていた。
だが、外から聞こえる音とは違い、頭の中から聞こえてくる声だけは、明確な音声として鳴り響く。
(君の心をやっと理解することが出来た)
私の何が分かるっていうの?
(俺は君の魂といること、良く思ってなかった・・)
なら出てってよ、望んでなんかいない。
(君はこれほどの憎悪を魂に宿しながら、それでいてその対象に依存もしている)
・・・。
(アンバランスな君の魂に、俺は君と一つになれないと思っていた)
キモイんだよ・・アンタと一つって・・。
(だが、もしその憎悪を根絶やしにした時、君の魂に何が残るだろう)
アンタがやってくれるっていうの?
じゃあそうしてよ!
今すぐ全部無くしてよ!
そんなこと出来ないに決まってる!
「そう、この日!この時から!私の人生は!」
突如サクラは滂沱の涙を流し、天井を見上げ、絶叫をする。
「オ、オイどうしたサクラちゃん、大きな声上げてよ」
その様を間近で見ていた梶は、驚きの顔でサクラを見る。
サクラは徐に右腕上げ、梶の顔面に掌を突き出す。
(俺が殺ッて上げるよ。君とは一つにならず、君の生命に寄り添おう)
サクラの手が白い光を帯び、「ギューン」と唸る音を立てると、掌から切っ先が顔を出し一本の刀が顕現する。
その刀は顕現する先にある、梶の額を貫いた。
サクラは腕を横に振る。
頭を刀で串刺しにされた梶は、その振りに持って行かれ、飛ばされる。
梶の体がパーテーションをなぎ倒し、その先の壁に激突した。
事務デスクで談笑していた男達は、何が起こったのか分からないまま絶句している。
サクラの手の先に浮遊する刀、それは刃渡り1m近くある打刀だ。
サクラはその打刀を握るわけでもなく、ただ虚ろな目をし腕を振り上げる。
「ヒ、ヒィィィ!」
目の前にいる若い男二人揃って驚愕の悲鳴を上げ、後ずさる。
打刀がサクラの手元を離れ、二人の男の背中を袈裟切りにし、回転しながら手元に戻った。
切られた男達の背中から盛大に血飛沫が上がり、辺りを血に染める。
「おのれ、何しとんじゃ!!」
デスクに居た男達は、それぞれ手にドスを持ち、中には震える両手で拳銃を握り締めている輩もいる。
サクラは虚ろな目のまま男達に一瞥をくれる。
「パン!」と乾いた拳銃の発射音がし、サクラの後ろに並べられた本の一つが弾けた。
「どアホ!いきなり撃つなや、俺等に当たんだろうが!」
ドスを持った男達の後ろから錯乱したまま拳銃を持った男が、拳銃を発射したのだ。
サクラはゆっくりとした動作で、後ろを振り向き、弾けた本を見る。
「許されんぞ、このアマァ!」
男達は示し合わし、背負を向けたサクラに一斉に跳びかかる。
サクラは背を向けたままだが、その攻撃を予測してたかのように打刀が中空に飛び出し、先頭にいた男の喉を貫く。
喉を貫いた打刀はそのまま捻り、横薙ぎですぐ隣にいた男の首を跳ね飛ばす。
一瞬にして首を失った男と、首がぶら下がった首無しの男が出来上がる。
打刀はサクラの体の前に戻り、刃先を上に向け浮遊する。
その位置は、この打刀をそのまま握れば、正眼の構えになる位置だ。
サクラは、弾けた本に興味を失ったように振り返る。
残る二人の男の内一人は腰を抜かし、ドスを前に振りながら後退をするが、打刀がその男に狙いを定め、ゆっくりと刃先を下にし、男の脳天に刃を沈めていく。
「あがががが・・」
何の抵抗もなく男の脳天に刃の半分近くまで差込まれ、白目を剥いたまま男は絶命する。
「うわぁぁぁ!」
拳銃を持った男が乱射する。
だが全ての弾が打刀によって弾かれ、後方の壁やガラスを撃ち抜いていく。
男は全弾撃ち尽くし、「カチッカチッ」と空撃ちをしても尚、拳銃を構えたまま立ち尽くしている。
サクラはゆっくりと男に歩み寄りながら、腕を振り上げる。
その動きに同調するように、浮遊する打刀が下から斜め上に切り上がり、拳銃を突き出した男の両腕を切り落とす。
「あああああ!」
腕を切り落とされた両腕から、大量の血を吹き出す。
振り上げた腕を振り下ろし、打刀が男の目の前に振り下ろされる。
切られた男は「ドシャ」と前のめりに倒れ込み、その返り血を浴びたサクラは眉一つ動かさず肩口から切り裂かれた男を見下ろしていた。
ココに居る全ての男どもを斬り殺し、辺りを血の海にしても、サクラの表情には何の感情も伺えない。
だが、足元ににじり寄る人影に、初めて表情に変化が生じる。
「咲良ちゃん、咲良ちゃん・・」
床の血溜まりの中を芋虫のような恰好でにじり寄ったせいか、全身赤黒く塗れた女がサクラの足元に辿り着く。
それはサクラの母親。
§
サクラが14才の時、父は数百万の借金を残し、女と駆け落ちした。
その父の借金を背負うことになった母。
借金をしていた相手が悪く、母は言われるがままに風俗店への斡旋を受け働くが、借金が減るどころか膨らんでいく。
完全にヤクザの搦手に合い、母は身を費やしていく。
咲良にとって忘れることのない今日、2010年4月10日。
高校に進学出来ず、ウエイトレスとして働いていた飲食店に梶と富田が現れた。
母の元に向かうと車に載せられ、ここ梶尾組に連れて来られたのだ。
男達は言う。
お前は母に売られたのだと。
母は咲良に目を向けること無く、縛られた姿で男達に懇願する。
「ほら、あの子を好きにしていいから、早くクスリをちょうだいよ!」
嫌がる咲良を、無理矢理に奥にある部屋に押し込め、そこで待っていた醜悪なジジイに犯された。
それからは未成年であることを良しとする、金持ち連中相手のコールガールとして身を捧げ、命を失うその時まで娼婦として生き続けた。
それが咲良の人生だった。
§
足元に転がる赤黒く染まった母が、サクラを見上げる。
「ね、ねぇ・・クスリちょうだい」
サクラは打刀を握り、自分の力で母の背中を貫いた。
一瞬エビ反りになり、刀を引き抜くと、脱力し動かなくなる。
母を蹴り上げ、上向きにさせる。
まだ息のある母は口から血を吐き出すが、かすかな声で言う。
「ごめんね・・咲良・・」
「ふざけないでよ・・冗談じゃないわよ!」
怒りでサクラの顔が歪む。
それはサクラが初めて見せる、感情の爆発だった。
その怒りは、目の前に居る母親に対しての怒りではない。
サクラは一度死んだ時に出会った、小さな子供に対しての怒りだった。
無識者と名乗ったその子供は言った。
「おぬしを思う強い思念が灯台となり、おぬしを導く」
「それがココだっていうの?笑わせないでよ!」
既に憎悪の対象を屠っておいて、今更な怒りを口にするのには理由がある。
(サクラ、終わらせるのか?)
頭に響く声が、問いかけてくる。
その問いかけに答えること無く、奥にある扉をくぐる。
奥へ続く廊下を進み、突き当りのドアを開け、中へ入る。
そこにはガウンを着たジジイが、安楽椅子を盾にし拳銃を向けている。
部屋の真ん中にはキングサイズのベッドが有り、全裸に剥かれ身じろぎ一つせずベッドの上で座り込む少女がいる。
「な、なんだ・・サクラ?お、お前・・どういうことなんだ?」
部屋に乗り込んで来た返り血を浴びたサクラの姿を見たジジイは、ベッドの上にいる裸の少女と見比べながら驚きを隠せないでいる。
(俺が殺ろう)
打刀が顕現する。
だが、サクラが打刀を握り、安楽椅子ごとジジイの腹を一突きにする。
「ぐわぁぁ」
叫び声を上げ、拳銃を発砲するが、狙いもしていないためサクラに当たることもない。
「やめで・・やめでぐで・・」
腹を突かれ、苦悶の表情を浮かべ命乞いをする。
「アンタはやめてと言ってやめた?」
サクラは何度も倒れ込んだジジイの腹を刀で突き刺す。
痛みに耐えかね、腹をかばうように前屈みになるジジイの背中を突き刺す、何度も。
辺りに血を撒き散らし、絶命したジジイをまだ飽きたらないのか、今度は足蹴にする。
(もういい、終わったんだサクラ)
頭の中の声にサクラは蹴るのを止め、上がった息を整える。
「何言ってるのよ」
サクラは頭の中の声へ口に出して応えた。
サクラはベッドの上に登り、座ったまま動かない少女と向かい合う。
「サクラ、11年前の私」
俯いた少女の顎を掴み、無理やり自分に向かせる。
焦点の合わない目をしていた少女が、自分と全く同じ姿をした少女が目の前に居ることに気付き、目が驚愕の色を作す。
「アンタが私の人生を台無しにしたのよ・・なのに・・アンタは私を呼んで・・」
(お前の憎悪の根源、それは・・)
サクラは刀を横に薙いだ。
(お前自身か・・)
頭に響く声は心なしか悲しみに震えていた。
・・つづく・・
そこは大阪随一の繁華街、所謂北と呼ばれる地域の東側、東梅田を更に新御堂の高架を隔て、更に東の地域に位置する小規模なホテル街。
きらびやかなキタ地域と比べ辺りは薄暗く、路上を照らす光は、少ない外灯と各店舗が自己表現する電飾看板の灯りのみ。
そんな薄暗い路上に、3人の女性グループが、忙しなくタバコを吹かしながら、辺りを見渡している。
その女性達はブロンドの髪をした背の高い女性や、肌の色の黒い女性と言った具合で、国際色豊かだ。
それぞれ色違いのトレンチコートを羽織ってはいるが、コートの中は露出度の高いランジェリーと透けたキャミソール身につけている。
彼女たちは立ちんぼ、所謂娼婦だ。
この頃では取締の強化で少なくなっている光景なのだが、90年代頃までは店鋪のないブロック塀の壁に、ずらりと多くの女性が立ちんぼをし、頻繁に客引きを行っていたものだ。
2人組のサラリーマン風の男達が、笑い合いながら道を行くのを女性たちは立ち塞がり、片言の日本語で何事か言い寄る。
男達は顔を寄せ合い話し合った後、それぞれ好みの女性の腰に手を回し、ホテルの方に去っていく。
「フン、性病患者2名の出来上がり~っと・・そんなに外人としたいかねぇ日本人ってのは」
一人残された娼婦は毒づき、新たな客を物色するように通りの先を睨むが、暗がりの先からフラフラと此方に向かってくる人影に唖然とする。
その人影が暗がりから外灯の灯りに照らされ、全裸の少女を浮かび上がらせた。
金髪ではあるがてっぺん部分が黒く、ブリーチによるものだと分かる。
体はスレンダーではあるが豊満な胸をしており、それを隠すわけでもなく両腕をブラブラとさせ、フラつきながら歩いてくる。
「ア、アンタ・・どうしたんだい、なにかあったの?」
娼婦は慌てて裸の少女に駆け寄り、自分が羽織っていたコートを脱いで少女の体を覆うように掛けた。
路地裏からでしか入っていけないような雑居ビルの2階。
そこは、娼婦たちの根城として当てがわれた、煤けたビルの一室。
「ほら、これでも飲んで・・ちょっとは落ち着いた?」
娼婦は、裸の少女を娼婦たちの寝床にまで連れていき、匿っていた。
「私は由紀っていうの、アンタ名前は?」
自分の名を名乗り、裸の少女に着せる服を物色しだす。
「サクラ・・」
少女はポツリの名を名乗る。
「サクラかぁ、いい名前だね」
由紀はTシャツとデニム地のショートパンツをサクラに手渡す。
「この前もあったんだよ、悪い客がいてさ、変な趣味に付き合わされて裸で逃げ出してきた子がさ」
呆れたような身振りをし、自分のマグカップにもコーヒーを注ぐ。
「それで、何があったか話せる?・・見たところ酷いケガはしてないみたいだけど」
サクラが服を着る姿を見届け事の真相を聞き出そうとするが、サクラは何も語らず辺りを見渡している。
「力になれることもあるんだよ、ちゃんと相談に乗ってくれる人もいるし・・」
「おーい、由紀いるかー?」
階下から大きな声が聞こえ、由紀は慌てだした。
「サクラ、そこの押入れに隠れて、早く!」
由紀はサクラを探しに元締めが来たと思い、無理やりサクラを押入れの下に押し込む。
「何やってんだ由紀、いるなら返事ぐらいしろや!」
ノックも無く部屋に入ってきた男は、由紀を見つけるといきなり怒鳴りつける。
「ど、どうした・・んですか」
由紀の声に怯えの色が混じる。
「どうしたじゃねぇ!おどれ仕事ほっぽって何しとんじゃ!」
男は由紀を掴み上げ、頬を張り倒す。
「や、やめて、やめて!・・富田さん、すぐに戻りますから!」
涙を流し、男に懇願する。
富田はチンピラ丸出しの薄手のシャツに白のスラックスを履いており、ソリの入ったリーゼント頭をクシで整え格好をつける。
「唯でさえアガリの少ないお前らの面倒見てやってるっていうのによう!」
富田は拳を振り上げ、由紀を威嚇する。
「ひっ・・」
由紀は打たれまいと体を縮込めたその時、「ガタ」と押入れから物音が鳴る。
「オ、オイ由紀、押入れに誰かいるんか?」
物音に気付くが、富田は押入れの方に行かない。
「オイ由紀、聞いてるんか!」
富田は由紀に蹴りを入れ、押入れの方に追い立てる。
チンピラ富田のその行為は、肝っ玉の小ささが如実に現れている。
富田の暴力に耐えかね、押入れを背にするまで後退るが、戸を開けようとしない由紀。
「いい加減にしろよ・・その戸を開けろや由紀!」
富田は身構えるが、怯えながらも由紀は開けようとしない。
だが由紀が背にした戸が、スッと開かれた。
中からサクラが由紀の肩に手を掛ける。
「大丈夫だよ」と由紀に声を掛け、富田の前に立つ。
「なんだ・・ガキじゃねぇか、ん?アレ?お前・・なんでこんなとこに居るんだ?」
富田はサクラのことを知っているような口振り。
「富田さん連れてってよ、事務所に」
サクラも同じように富田のことを知っているように話す。
「あ、ああ。そやな・・オイ由紀!お前はちゃんと仕事しとけや!」
富田は腑に落ちない様子だが、先立って部屋を出ていく。
「由紀さん、ありがとう。コーヒー美味しかったよ」
サクラは礼を言い、富田の後を追って部屋を出ていった。
由紀はただ見守ることしか出来ないでいた。
ホテル街から車でなら5分もかからない場所、扇町にある雑居ビル。
玄関の真ん前に横付けされた80年代のセドリックの助手席から、サクラが降り立つ。
「オラ、付いて来い」
富田がサクラを顎でシャクリ、先頭に立ってビルのドアをくぐる。
エレベーターに乗り込み、富田は車のキーの先を使い、4Fのボタンを突く。
「お前なんであんなとこにいた?逃げ出したって事はないだろうが・・がぁっ!」
富田は背中越しにサクラへ言葉を掛けていたが、言葉が詰まり無言になる。
「チン!」と4階に辿り着いたエレベーターのドアが開き、サクラが降りてくるが富田の姿はない。
エントランスの正面、ドアのガラス面に「梶尾組」と金文字のカットシートが貼り付けられている。
サクラはエレベーターホールから歩みを止めること無くドアを押し開け、中に入っていく。
カウンターの向こう側、事務デスクの島に4人の男がそれぞれに下卑た笑い声を上げ、談笑していた。
カウンターに沿って奥に進むとパーテーションがあり、その裏側の応接間に裸の体に縄を食い込ませ縛られている女が横倒しにされ、2人の男に足蹴にされている。
「あれ?サクラちゃん、なんでここにいんだ?」
応接セットの奥、木製のデスクに足を投げ出し、驚いた顔でサクラに声をかける男。
「ふむ、会長とはもう終わったんか?」
一人納得して立ち上がり、サクラの方に歩み寄る。
さっきまで縛り上げた女を足蹴にしていた若い男の一人が、サクラの体を舐め回すように見、ニヤついた顔をサクラに寄越す。
「梶さんこの子いいっすねぇ、俺に任してもらえませんか?このババァの子にしては中々の上玉っすよ」
「うるせぇ!」
梶と呼ばれた男は、ニヤついた若い男を殴りつける。
「おどれら、その女さんざん使い回しといて言える話じゃねぇやろが、挙句にシャブまで食わせやがって」
「梶さん・・すんません・・」
若い男は梶に殴られ、鼻血を吹き出しながら詫びを入れる。
「サクラちゃん、会長の事はまぁ通過儀礼だと思ってよ・・後は・・悪いように・・はしな・・い・・」
梶がサクラに向かって話をし出すが、梶の声がサクラにはハウリングしたように遠くで聞こえたり近くなったりし、雑音でまともに聞こえなくなっていた。
だが、外から聞こえる音とは違い、頭の中から聞こえてくる声だけは、明確な音声として鳴り響く。
(君の心をやっと理解することが出来た)
私の何が分かるっていうの?
(俺は君の魂といること、良く思ってなかった・・)
なら出てってよ、望んでなんかいない。
(君はこれほどの憎悪を魂に宿しながら、それでいてその対象に依存もしている)
・・・。
(アンバランスな君の魂に、俺は君と一つになれないと思っていた)
キモイんだよ・・アンタと一つって・・。
(だが、もしその憎悪を根絶やしにした時、君の魂に何が残るだろう)
アンタがやってくれるっていうの?
じゃあそうしてよ!
今すぐ全部無くしてよ!
そんなこと出来ないに決まってる!
「そう、この日!この時から!私の人生は!」
突如サクラは滂沱の涙を流し、天井を見上げ、絶叫をする。
「オ、オイどうしたサクラちゃん、大きな声上げてよ」
その様を間近で見ていた梶は、驚きの顔でサクラを見る。
サクラは徐に右腕上げ、梶の顔面に掌を突き出す。
(俺が殺ッて上げるよ。君とは一つにならず、君の生命に寄り添おう)
サクラの手が白い光を帯び、「ギューン」と唸る音を立てると、掌から切っ先が顔を出し一本の刀が顕現する。
その刀は顕現する先にある、梶の額を貫いた。
サクラは腕を横に振る。
頭を刀で串刺しにされた梶は、その振りに持って行かれ、飛ばされる。
梶の体がパーテーションをなぎ倒し、その先の壁に激突した。
事務デスクで談笑していた男達は、何が起こったのか分からないまま絶句している。
サクラの手の先に浮遊する刀、それは刃渡り1m近くある打刀だ。
サクラはその打刀を握るわけでもなく、ただ虚ろな目をし腕を振り上げる。
「ヒ、ヒィィィ!」
目の前にいる若い男二人揃って驚愕の悲鳴を上げ、後ずさる。
打刀がサクラの手元を離れ、二人の男の背中を袈裟切りにし、回転しながら手元に戻った。
切られた男達の背中から盛大に血飛沫が上がり、辺りを血に染める。
「おのれ、何しとんじゃ!!」
デスクに居た男達は、それぞれ手にドスを持ち、中には震える両手で拳銃を握り締めている輩もいる。
サクラは虚ろな目のまま男達に一瞥をくれる。
「パン!」と乾いた拳銃の発射音がし、サクラの後ろに並べられた本の一つが弾けた。
「どアホ!いきなり撃つなや、俺等に当たんだろうが!」
ドスを持った男達の後ろから錯乱したまま拳銃を持った男が、拳銃を発射したのだ。
サクラはゆっくりとした動作で、後ろを振り向き、弾けた本を見る。
「許されんぞ、このアマァ!」
男達は示し合わし、背負を向けたサクラに一斉に跳びかかる。
サクラは背を向けたままだが、その攻撃を予測してたかのように打刀が中空に飛び出し、先頭にいた男の喉を貫く。
喉を貫いた打刀はそのまま捻り、横薙ぎですぐ隣にいた男の首を跳ね飛ばす。
一瞬にして首を失った男と、首がぶら下がった首無しの男が出来上がる。
打刀はサクラの体の前に戻り、刃先を上に向け浮遊する。
その位置は、この打刀をそのまま握れば、正眼の構えになる位置だ。
サクラは、弾けた本に興味を失ったように振り返る。
残る二人の男の内一人は腰を抜かし、ドスを前に振りながら後退をするが、打刀がその男に狙いを定め、ゆっくりと刃先を下にし、男の脳天に刃を沈めていく。
「あがががが・・」
何の抵抗もなく男の脳天に刃の半分近くまで差込まれ、白目を剥いたまま男は絶命する。
「うわぁぁぁ!」
拳銃を持った男が乱射する。
だが全ての弾が打刀によって弾かれ、後方の壁やガラスを撃ち抜いていく。
男は全弾撃ち尽くし、「カチッカチッ」と空撃ちをしても尚、拳銃を構えたまま立ち尽くしている。
サクラはゆっくりと男に歩み寄りながら、腕を振り上げる。
その動きに同調するように、浮遊する打刀が下から斜め上に切り上がり、拳銃を突き出した男の両腕を切り落とす。
「あああああ!」
腕を切り落とされた両腕から、大量の血を吹き出す。
振り上げた腕を振り下ろし、打刀が男の目の前に振り下ろされる。
切られた男は「ドシャ」と前のめりに倒れ込み、その返り血を浴びたサクラは眉一つ動かさず肩口から切り裂かれた男を見下ろしていた。
ココに居る全ての男どもを斬り殺し、辺りを血の海にしても、サクラの表情には何の感情も伺えない。
だが、足元ににじり寄る人影に、初めて表情に変化が生じる。
「咲良ちゃん、咲良ちゃん・・」
床の血溜まりの中を芋虫のような恰好でにじり寄ったせいか、全身赤黒く塗れた女がサクラの足元に辿り着く。
それはサクラの母親。
§
サクラが14才の時、父は数百万の借金を残し、女と駆け落ちした。
その父の借金を背負うことになった母。
借金をしていた相手が悪く、母は言われるがままに風俗店への斡旋を受け働くが、借金が減るどころか膨らんでいく。
完全にヤクザの搦手に合い、母は身を費やしていく。
咲良にとって忘れることのない今日、2010年4月10日。
高校に進学出来ず、ウエイトレスとして働いていた飲食店に梶と富田が現れた。
母の元に向かうと車に載せられ、ここ梶尾組に連れて来られたのだ。
男達は言う。
お前は母に売られたのだと。
母は咲良に目を向けること無く、縛られた姿で男達に懇願する。
「ほら、あの子を好きにしていいから、早くクスリをちょうだいよ!」
嫌がる咲良を、無理矢理に奥にある部屋に押し込め、そこで待っていた醜悪なジジイに犯された。
それからは未成年であることを良しとする、金持ち連中相手のコールガールとして身を捧げ、命を失うその時まで娼婦として生き続けた。
それが咲良の人生だった。
§
足元に転がる赤黒く染まった母が、サクラを見上げる。
「ね、ねぇ・・クスリちょうだい」
サクラは打刀を握り、自分の力で母の背中を貫いた。
一瞬エビ反りになり、刀を引き抜くと、脱力し動かなくなる。
母を蹴り上げ、上向きにさせる。
まだ息のある母は口から血を吐き出すが、かすかな声で言う。
「ごめんね・・咲良・・」
「ふざけないでよ・・冗談じゃないわよ!」
怒りでサクラの顔が歪む。
それはサクラが初めて見せる、感情の爆発だった。
その怒りは、目の前に居る母親に対しての怒りではない。
サクラは一度死んだ時に出会った、小さな子供に対しての怒りだった。
無識者と名乗ったその子供は言った。
「おぬしを思う強い思念が灯台となり、おぬしを導く」
「それがココだっていうの?笑わせないでよ!」
既に憎悪の対象を屠っておいて、今更な怒りを口にするのには理由がある。
(サクラ、終わらせるのか?)
頭に響く声が、問いかけてくる。
その問いかけに答えること無く、奥にある扉をくぐる。
奥へ続く廊下を進み、突き当りのドアを開け、中へ入る。
そこにはガウンを着たジジイが、安楽椅子を盾にし拳銃を向けている。
部屋の真ん中にはキングサイズのベッドが有り、全裸に剥かれ身じろぎ一つせずベッドの上で座り込む少女がいる。
「な、なんだ・・サクラ?お、お前・・どういうことなんだ?」
部屋に乗り込んで来た返り血を浴びたサクラの姿を見たジジイは、ベッドの上にいる裸の少女と見比べながら驚きを隠せないでいる。
(俺が殺ろう)
打刀が顕現する。
だが、サクラが打刀を握り、安楽椅子ごとジジイの腹を一突きにする。
「ぐわぁぁ」
叫び声を上げ、拳銃を発砲するが、狙いもしていないためサクラに当たることもない。
「やめで・・やめでぐで・・」
腹を突かれ、苦悶の表情を浮かべ命乞いをする。
「アンタはやめてと言ってやめた?」
サクラは何度も倒れ込んだジジイの腹を刀で突き刺す。
痛みに耐えかね、腹をかばうように前屈みになるジジイの背中を突き刺す、何度も。
辺りに血を撒き散らし、絶命したジジイをまだ飽きたらないのか、今度は足蹴にする。
(もういい、終わったんだサクラ)
頭の中の声にサクラは蹴るのを止め、上がった息を整える。
「何言ってるのよ」
サクラは頭の中の声へ口に出して応えた。
サクラはベッドの上に登り、座ったまま動かない少女と向かい合う。
「サクラ、11年前の私」
俯いた少女の顎を掴み、無理やり自分に向かせる。
焦点の合わない目をしていた少女が、自分と全く同じ姿をした少女が目の前に居ることに気付き、目が驚愕の色を作す。
「アンタが私の人生を台無しにしたのよ・・なのに・・アンタは私を呼んで・・」
(お前の憎悪の根源、それは・・)
サクラは刀を横に薙いだ。
(お前自身か・・)
頭に響く声は心なしか悲しみに震えていた。
・・つづく・・
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