魔王城ふもとの村に住んでいるモブなので魔王軍のために働きます。

田中かな

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薬草を取りにいこう

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私の住んでいるヤコク村は魔王軍に支配されている村だ。今日は村のよろず屋に並べる商品の整理の仕事。村にはよろず屋は1つだけなので店の運営や店番も村の皆で交代制だ。

さて、商品の在庫リストはこんなものかな。うーん、聖水が少し少なくなってきたかも。

「エレナ、調子はどうだ?」

「あ、父さん。そろそろ聖水がなくなるかも。」

「そうか…悪いんだが午後から汲んできてくれないか?」

「わかった。」

この村で売られている聖水はそんじょそこらの聖水ではない。なにせ魔王城に向かう勇者の手にわたる物なので性能も段違いだ。この辺りには毒を持つ魔物も多い。魔王城の近くの魔物が使うその毒はとても強力だ。ヤコク村の聖水はそんな毒もばっちり消す。まあその分取りに行くのも一苦労なのだけれど。

「それじゃあ行ってきます。」

「おう。気を付けてな!」

張り切って聖水汲みに出発しようとすると村の門で知っている顔があった。おや、向こうも気がついたみたいだ。笑顔でこっちに駆け寄ってくる。

「エレナ!こんにちは!」

「こんにちは。ヒマリ。今日も元気だね。」

「もちろん!」

この子はヒマリ。私の幼馴染だ。天真爛漫を絵に描いたような性格で一緒にいて気持ちがいい。あれ、背中にカゴを背負ってる。

「大きなカゴだね。なにを取りに行くの?」

「薬草だよ!エレナは?」

「私は聖水。」

「そうなんだー!一緒に行こうよ!」

たしかにただおつかいするのもつまらない。ヒマリと一緒なら退屈しないから大賛成だ。

と、いうわけでヒマリと一緒に村の外へ。薬草と聖水採取に出発だ。

「今日もいい天気だねー!」

「ふふっ、そうだね。」

目の前のヒマリが楽しそうにぴょこぴょこ跳ねる。ヒマリのおさげもぴょこぴょこ動いて面白い。

「先に薬草を取りにいこうか。」

「えー!そんなの悪いよぅ。」

「先に聖水のほうに行ったら持ち運ぶの大変じゃない?」

「それもそっか。」

ヤコク村で売られている薬草もそれはそれは効能が高い。多少の傷ならそこらの回復魔法よりも治癒能力がある。これから採取する聖水と合わせて使うとさらに効果が増す。
欠点があるとすると採取が大変なこと。ここまで高い効能の薬草がそこら辺に生えているわけはなく(そこら辺に生えていても商売にならないので困るけど)、採取するには山を登らないといけない。ソビエッタ山という村の子供なら一度はハイキングに行く馴染みのある山だ。

「はああ…またこの山登らないといけないのかー。」

「薬草が取れるところまでは一本道だしマシなほうじゃない?私この前は新月草取りにいったよ。」

「げー!新月草なんて頂上まで登らないとじゃん!」

「そうなんだよねー。もう足パンパンになったよ。」

そんな会話をしながらソビエッタ山を登る。薬草が生えているのは山の中腹だ。何度も登った山なのにヒマリはいろんなものに興味を持ってはしゃいでいる。なにがそんなに楽しいのやら、と思うけどそんなヒマリを飽きずに見ている私も変わらないかも。

「さあ薬草が生えている場所に着いたよ!さっそくつもう!」

「なんでそんなに説明口調なのよ。」

薬草の群生地区まで登ってきた。
薬草は一面に生えているとはいえ、ヒマリの大きなカゴをいっぱいにするのは少し大変だった。それでも2人がかりならあっという間に終わった。

「よいしょっと…」

「大丈夫?重くない?」

「このくらい平気だよう!」

ヒマリ相手だとつい過保護になってしまうな。

「よし、次は聖水だよね。いつものところでいいの?」

「うん。うちけしの泉。日が暮れる前には帰れると思うよ。」

「よし、それじゃあ出発!」

今登ってきた山道を下りる。聖水がくめるうちけしの泉はソビエッタ山の近くの森にあるからそこまで遠くないのが幸いだ。

目的地の泉に近づいた頃、先を歩くヒマリがふと立ち止まった。

「ヒマリどうしたの?」

「なんか…変な臭いがする。」

すんすんと私も臭いを嗅いでみる。この臭いは…あれかな。

「どうする?」

「うーん。泉の近くで暴れられても困るし…いこっか。」

「そだね」

私達は臭いのするほうへと向かう。臭いの元に近づくにつれ臭いが強くなっていく。そろそろかな。

「いた。ヒマリ、気を付けてね。」

「がってん!」

目の前には臭いの原因の魔物。大きな花と長くて太いツタ、ではなく腕が生えている。この辺りにたまに発生するラフレシアゴーレムだ。

「エレナ!作戦はあるの?」

「うーん。ちなみにヒマリ、火は持ってる?」

「火おこし石ならあるよ。3個。」

空気中には魔素という魔力の源のような細かい粒子が浮かんでいるらしい。人間には感じることも触ることもできないけれど、ルワーノ様やシロモリさん達魔族はその魔素を感じることができ、それを使って魔法を使うことができる。人間と魔族の大きな違いの1つだ。そして空気中の魔素が植物や鉱物へ過剰に溜まることがある。そして魔素が過剰に溜まり、暴走して動き出したのが魔物だ。このラフレシアゴーレムなどがそう。
そして空気中の魔素と反応してさまざまな事象を起こすのが魔力石だ。この火おこし石もその1つで衝撃をあたえると発火する。子供の頃この石で遊んで爆発をおこしてしこたま怒られたっけ。さすがにもう火おこし石で遊ぶほど子供じゃないけどね。

「その火おこし石使ってもいい?」

「もちろん!もともとエレナと遊ぶために持ってきたし!」

まだまだ子供だった。

「それじゃあいつものフォーメーションAで。せーので投げよう。」

「了解!」

「よし、いくよ!」

私とヒマリはラフレシアゴーレムの正面へ駆け出す。すると獲物を発見したラフレシアゴーレムは長い両腕を叩きつけてくる。私とヒマリはそれぞれ私が右へ、ヒマリが左へ別れてラフレシアゴーレムへ近づいていく。当然攻撃が外れたと察知したラフレシアゴーレムもすぐさま左右にいる私達へまた腕を振り下ろす。けれど私達のほうが早い。腕をかいくぐりながら近づき、かわした腕を踏み台にして思い切り跳躍!

「ってヒマリ!飛びすぎ!」

「ごめーん!合わせるから!」

「じゃあいくよ!」

「「せーの!!」」

下にいるラフレシアゴーレムへ向けて思い切り火おこし石を投げつける。火おこし石の性質として与えた衝撃が大きければ大きいほど火力があがる。この高さからこの勢いであれば…

ドゴオォォォォォォォォォォン!!!!!!

ラフレシアゴーレムを焼き尽くすには充分な火力だ。

「やったね!」

パン!とヒマリとハイタッチ。今日も幼馴染の呼吸はばっちり。フォーメーションAの勝利だ。

「まあ私の火柱のほうが高かったけどね!」

「はいはい。」

ヒマリは得意気だった。


「よいしょ…っと。」

泉の聖水を汲んだビンに蓋をする。これで4本分。あとは帰るだけだ。

「手伝ってくれてありがとう、ヒマリ。少し休憩していこっか。」

「うん!」

泉のほとりに腰をおろして持ってきた包みをあける。

「わあいサンドイッチ!具はなに?」

「こっちがハムでこっちがクリーム。」

「甘いやつ?」

「うん。甘いやつ。」

「じゃあそれにしよ。」

ヒマリがクリームのサンドイッチを手に取り頬張る。私もハムのサンドイッチを手に取る。うん。我ながら美味しくできてる、と思う。ヒマリの口にあうかな、と食べてる様子を見るけれどヒマリは大体なんでも美味しそうに食べるからな。作りがいはあるけど批評の参考にはならないんだよね。まあ美味しそうだからいいか。

「それじゃあ帰ろうか。」

休憩も終わりヤコク村への帰路につく。今日の仕事は終わりかな。

「ねえ、今度シュセンドに遊びに行こうよ!」

「いいけど、なにか欲しい物があるの?」

シュセンドか。ヤコク村や魔王城のある国、シュセンド国の中央都市だ。国の名前がそのまま都市の名前になっている。少し遠いけどこの辺りでは手に入らない食べ物や服が売っている。

「まあ私も乙女だからね。常に最新の流行は知っておきたいってわけ。」

乙女は拾った木の棒を振り回しながら歩かないと思う。でもまあシュセンドに行くのは賛成かな。

「じゃあ今度アヤメも誘って3人で行こうか。」

「うん!楽しみだなー!」

アヤメも私とヒマリの幼馴染だ。出掛ける時は3人一緒なことが多い。

「あれ、噂をすればアヤメだ。」

もうすぐ村に到着、というところで入り口の近くにアヤメがいることに気がつく。スラリとした高い身長で美人の彼女は遠くからでもすぐにわかる。それよりなんか少し村が騒がしいような気がするな。

「おっ、帰ってきたか、エレナ、ヒマリ。」

「ただいまアヤメ!」

「なんか騒がしいけどなにかあったの?」

「ああ、さっき連絡があったんだが、勇者一行が近くに来ているらしい。」

なるほど、それは一大事だ。
久しぶりに村に勇者がやってくる。
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