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離宮の夜は大混乱!?
淋しそうな誘拐犯 4
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沙良やエルザと一緒にベッドに入った。
沙良が勝手に屋敷から出て行かないかどうか見張る意味もあるらしいが、知らない屋敷で一人にされなくてすんで、沙良はホッと胸をなでおろす。
沙良はごろんと寝返りを打って、エルザの方を向いた。
「ねえエルザさん、バードさんと恋人同士って、嘘ですよね」
「……どうしてそう思うの」
「全然そんな風には見えなかったので」
沙良がきっぱり言うと、エルザは小さく笑った。
「あんたって、お人形みたいな雰囲気のくせに、結構言うのね」
エルザは睨むように天井を見つめた。
「……あんたが言う通り、ほんとはバード様とはなんでもないの。利害が一致してるから一緒にいるだけよ」
「利害……?」
エルザは首を動かして沙良を見た。
「そ。わたしはジェイルの心臓に杭を打ち立てたいの。そして、バード様もそれを望んでる」
「……心臓に杭を突き立てたら、ジェイルさん死んじゃいますよ」
沙良が悲しそうに言えば、エルザはクスリと笑った。
「死なないわ。あの杭ならね。あの杭は特別なの。だから、どうしても取り戻さなくちゃ……。ねえ、あんた、シヴァ様の奥さんでしょ? シヴァ様からあの杭取り戻してくれないかしら。約束したら、離宮に帰してあげてもいいわよ」
離宮に帰してくれると言う申し出は非常に魅力的だったが、沙良が言ったからといってシヴァがすんなり杭を渡してくれるとは思えない。
「無理だと思います……」
「そう。……そうでしょうね」
エルザは枕の上に頬杖をついた。
「ねえ。あんた、どうやってシヴァ様の奥さんになったの? こういっちゃなんだけど、あの方、女性は暇つぶしくらいにしか思ってなかったでしょ。あんまりお会いしたことはなかったけど、シヴァ様があんなに一人の女の子を大事にしてるの、はじめて見たわ」
「ん……、正直、わたしもよくわかりません。十七歳の誕生日の日に連れてこられて、そのままだったんで……」
「……なにそれ。誘拐じゃないの」
「そう言われると、身も蓋もないと言うか」
「まあ……、あんたもシヴァ様のそばにいるとき、幸せそうよね。結果オーライってやつなのかしら。魔王様の考えることはよくわかんないけど」
「エルザさんとジェイルさんは?」
「わたしとジェイル? ……そうね、ジェイルは、最初は年の離れたお兄ちゃんみたいだったの。身分は全然違ったけどね。ジェイルはいつも優しくて、好きだって言われたとき、嬉しかったわ。わたしが十八歳の誕生日だった」
でも、と言葉を切って、エルザは口を閉ざす。
沙良は思いつめたようなエルザの表情に、もしかして、とある可能性に気がついた。
「エルザさんは、まだジェイルさんのことが好き……?」
エルザは小さく息を呑んで、それから自嘲気味に笑った。
「―――好きよ」
やっぱり、と沙良は思った。
だが、ジェイルが好きなら、どうして木の杭を持ち出したりしてジェイルを追いかけまわしているのだろう。バードが恋人という嘘までついて。
それを問うと、エルザは曖昧に笑った。
「事情があるのよ」
「……難しいことはわかりませんけど、でも、ジェイルさんはエルザさんが大好きだから、元の恋人同士には戻れないんですか?」
「戻れないわ」
エルザは悲しそうな顔をして、ポツンとつぶやいた。
「だって……、ジェイルは、本当はリリアのことが好きなんですもの―――」
沙良が勝手に屋敷から出て行かないかどうか見張る意味もあるらしいが、知らない屋敷で一人にされなくてすんで、沙良はホッと胸をなでおろす。
沙良はごろんと寝返りを打って、エルザの方を向いた。
「ねえエルザさん、バードさんと恋人同士って、嘘ですよね」
「……どうしてそう思うの」
「全然そんな風には見えなかったので」
沙良がきっぱり言うと、エルザは小さく笑った。
「あんたって、お人形みたいな雰囲気のくせに、結構言うのね」
エルザは睨むように天井を見つめた。
「……あんたが言う通り、ほんとはバード様とはなんでもないの。利害が一致してるから一緒にいるだけよ」
「利害……?」
エルザは首を動かして沙良を見た。
「そ。わたしはジェイルの心臓に杭を打ち立てたいの。そして、バード様もそれを望んでる」
「……心臓に杭を突き立てたら、ジェイルさん死んじゃいますよ」
沙良が悲しそうに言えば、エルザはクスリと笑った。
「死なないわ。あの杭ならね。あの杭は特別なの。だから、どうしても取り戻さなくちゃ……。ねえ、あんた、シヴァ様の奥さんでしょ? シヴァ様からあの杭取り戻してくれないかしら。約束したら、離宮に帰してあげてもいいわよ」
離宮に帰してくれると言う申し出は非常に魅力的だったが、沙良が言ったからといってシヴァがすんなり杭を渡してくれるとは思えない。
「無理だと思います……」
「そう。……そうでしょうね」
エルザは枕の上に頬杖をついた。
「ねえ。あんた、どうやってシヴァ様の奥さんになったの? こういっちゃなんだけど、あの方、女性は暇つぶしくらいにしか思ってなかったでしょ。あんまりお会いしたことはなかったけど、シヴァ様があんなに一人の女の子を大事にしてるの、はじめて見たわ」
「ん……、正直、わたしもよくわかりません。十七歳の誕生日の日に連れてこられて、そのままだったんで……」
「……なにそれ。誘拐じゃないの」
「そう言われると、身も蓋もないと言うか」
「まあ……、あんたもシヴァ様のそばにいるとき、幸せそうよね。結果オーライってやつなのかしら。魔王様の考えることはよくわかんないけど」
「エルザさんとジェイルさんは?」
「わたしとジェイル? ……そうね、ジェイルは、最初は年の離れたお兄ちゃんみたいだったの。身分は全然違ったけどね。ジェイルはいつも優しくて、好きだって言われたとき、嬉しかったわ。わたしが十八歳の誕生日だった」
でも、と言葉を切って、エルザは口を閉ざす。
沙良は思いつめたようなエルザの表情に、もしかして、とある可能性に気がついた。
「エルザさんは、まだジェイルさんのことが好き……?」
エルザは小さく息を呑んで、それから自嘲気味に笑った。
「―――好きよ」
やっぱり、と沙良は思った。
だが、ジェイルが好きなら、どうして木の杭を持ち出したりしてジェイルを追いかけまわしているのだろう。バードが恋人という嘘までついて。
それを問うと、エルザは曖昧に笑った。
「事情があるのよ」
「……難しいことはわかりませんけど、でも、ジェイルさんはエルザさんが大好きだから、元の恋人同士には戻れないんですか?」
「戻れないわ」
エルザは悲しそうな顔をして、ポツンとつぶやいた。
「だって……、ジェイルは、本当はリリアのことが好きなんですもの―――」
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