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旦那様は魔王様≪最終話≫
後悔 7
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沙良は茫然と中庭を歩いていた。
セリウスから聞かされた話に頭がついて行かなかったからだ。
ごめん、と彼は言った。そう言って、すべてを教えてくれた。でもそれは、記憶のない沙良の中に混乱を落とすだけだった。
(本当は、結婚はセリウス様とじゃなくて、シヴァ様と……。シヴァ様の、お嫁さん……)
その真実が語られたところで、沙良の中のシヴァに対する恐怖が消えるわけではない。
だが、怖いはずのシヴァが何故か気になっていた理由がわかった気がした。
沙良には理解が及ばないことだが、セリウスは記憶を「上書き」したと言っていた。もともとの記憶は塗りつぶされてしまっているらしい。でも、きっと心のどこかで、昔の感情が残っているのかもしれなかった。
沙良は中庭のベンチに腰を下ろすと、ぼんやりと空を見上げる。
この世界に太陽はない。
真っ赤な色をした大きな月がぽっかりと浮かんでいた。
もともと暮らしていた世界でも沙良の居場所はどこにもなかったけれど、こうして一人で空を見上げていると、この世界にも沙良の居場所はどこにもないのかもしれないと思えてくる。
一人ぼっち――
じんわりと目元が潤んできそうになって、沙良は慌てて袖口で目元をおさえた。
別に、一人ぼっちはつらくない――はずだ。
ずっと一人だった。淋しいという感情すらどこかに忘れてきてしまったように、ただ「生きて」いた。
一人ぼっちは、慣れっこのはずなのだ。
「どうした?」
すぐ近くで声が聞こえて、沙良はハッと顔をあげる。
「シヴァ様……」
いつの間にかシヴァが立っていた。
近いけれど、手を伸ばしても触れないくらいの距離にいる。困ったような表情を浮かべているシヴァを見上げて、隣に座ってこないのは、沙良の気持ちを考えてくれているのだと気がついた。
(……優しい、ひと)
やはり沙良の心は怖いと思う。でも、優しいということを知っている気がした。
沙良は怯えそうになる心臓の上をおさえて、ベンチの端に座りなおした。無言でシヴァを見上げると、彼は少し驚いたような表情を浮かべて、それから沙良の隣に腰を下ろす。
「泣いていたのか?」
沙良は首を横に振った。泣いていたのではない。泣きそうになっていたけれど、泣かなかった。
沙良は少し迷って、それから意を決したように口を開く。
「……セリウス様に、全部聞きました」
シヴァが軽く目を見張った。
「本当は、シヴァ様の奥さんなんだって。魔法で、その記憶がなくなっているんだって。……それは、本当ですか?」
「……ああ」
シヴァが切なそうな表情で頷く。
この人にこんな悲しそうな表情をさせているのは自分なのだと思うと、沙良はどうしようもなく泣きそうになった。
(思い出したい……)
シヴァとすごした時間を思い出したいと思う。
きっと沙良は、シヴァとすごして、シヴァのことを好きになったのだろう。そんな気がする。怖いのに、シヴァの手に触れられたいと思っているのが、きっとその証拠。
(思い出したい。シヴァ様のこと……)
沙良は震える手を伸ばして、ベンチの上に投げ出されているシヴァの手に触れてみた。
シヴァが瞠目して、それからそっと沙良の手を握りしめてくれる。
シヴァの力の入れかたがびっくりするくらい優しくて、沙良は小さく笑った。
(シヴァ様……)
きっと、心の底に「好き」という感情が残っている。
そんな気がした。
セリウスから聞かされた話に頭がついて行かなかったからだ。
ごめん、と彼は言った。そう言って、すべてを教えてくれた。でもそれは、記憶のない沙良の中に混乱を落とすだけだった。
(本当は、結婚はセリウス様とじゃなくて、シヴァ様と……。シヴァ様の、お嫁さん……)
その真実が語られたところで、沙良の中のシヴァに対する恐怖が消えるわけではない。
だが、怖いはずのシヴァが何故か気になっていた理由がわかった気がした。
沙良には理解が及ばないことだが、セリウスは記憶を「上書き」したと言っていた。もともとの記憶は塗りつぶされてしまっているらしい。でも、きっと心のどこかで、昔の感情が残っているのかもしれなかった。
沙良は中庭のベンチに腰を下ろすと、ぼんやりと空を見上げる。
この世界に太陽はない。
真っ赤な色をした大きな月がぽっかりと浮かんでいた。
もともと暮らしていた世界でも沙良の居場所はどこにもなかったけれど、こうして一人で空を見上げていると、この世界にも沙良の居場所はどこにもないのかもしれないと思えてくる。
一人ぼっち――
じんわりと目元が潤んできそうになって、沙良は慌てて袖口で目元をおさえた。
別に、一人ぼっちはつらくない――はずだ。
ずっと一人だった。淋しいという感情すらどこかに忘れてきてしまったように、ただ「生きて」いた。
一人ぼっちは、慣れっこのはずなのだ。
「どうした?」
すぐ近くで声が聞こえて、沙良はハッと顔をあげる。
「シヴァ様……」
いつの間にかシヴァが立っていた。
近いけれど、手を伸ばしても触れないくらいの距離にいる。困ったような表情を浮かべているシヴァを見上げて、隣に座ってこないのは、沙良の気持ちを考えてくれているのだと気がついた。
(……優しい、ひと)
やはり沙良の心は怖いと思う。でも、優しいということを知っている気がした。
沙良は怯えそうになる心臓の上をおさえて、ベンチの端に座りなおした。無言でシヴァを見上げると、彼は少し驚いたような表情を浮かべて、それから沙良の隣に腰を下ろす。
「泣いていたのか?」
沙良は首を横に振った。泣いていたのではない。泣きそうになっていたけれど、泣かなかった。
沙良は少し迷って、それから意を決したように口を開く。
「……セリウス様に、全部聞きました」
シヴァが軽く目を見張った。
「本当は、シヴァ様の奥さんなんだって。魔法で、その記憶がなくなっているんだって。……それは、本当ですか?」
「……ああ」
シヴァが切なそうな表情で頷く。
この人にこんな悲しそうな表情をさせているのは自分なのだと思うと、沙良はどうしようもなく泣きそうになった。
(思い出したい……)
シヴァとすごした時間を思い出したいと思う。
きっと沙良は、シヴァとすごして、シヴァのことを好きになったのだろう。そんな気がする。怖いのに、シヴァの手に触れられたいと思っているのが、きっとその証拠。
(思い出したい。シヴァ様のこと……)
沙良は震える手を伸ばして、ベンチの上に投げ出されているシヴァの手に触れてみた。
シヴァが瞠目して、それからそっと沙良の手を握りしめてくれる。
シヴァの力の入れかたがびっくりするくらい優しくて、沙良は小さく笑った。
(シヴァ様……)
きっと、心の底に「好き」という感情が残っている。
そんな気がした。
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