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王子様は策略中
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チュンチュンと可愛らしい鳥の鳴き声を聞いて、カレンはゆっくりと目を開ける。
まず目に飛び込んでくるのは高い天井。それから、ふかふかのベッドにさらさらと肌触りのいいシーツ。
広い部屋の中の家具は白や薄ピンク、緑やクリーム色で柔らかく整えられている。
「……慣れない」
ピンク色の遮光カーテンを開けて部屋の中に朝日を取り込みながら、カレンははあ、と息を吐きだした。
第一王子リチャードの体質改善係という名の侍女として城で勤務しはじめて早三日。
近くにいた方が何かと便利だからというリチャードの意向で、彼の部屋と内扉でつながっている部屋を与えられたのだが、いかんせん、部屋の中の調度品が高価すぎてちっとも落ち着かなかった。
しかも、侍女だと言うのに、クローゼットをあけるとドレスの山。アクセサリーの山。これを少し売るだけで、カレンの家の借金が片付いてお釣りがくるだろう高価なものばかりで目がチカチカする。
リチャードは普段着として身につけてくれと言ったが、恐ろしくて普段着使いなどできるはずもなく、頼み込んで紺色のシンプルなワンピースをお仕着せとして買ってもらった。これでも充分高価だろうが、レースたっぷりのふりふりのドレスよりはましである。
カレンはお仕着せに着替えると、ふわふわと広がる蜂蜜色の髪を編み込んで束ねる。
(お母様たち、大丈夫かしらね……?)
家事能力がまったくない継母と姉たちのために、給金のうち金貨二枚を前借して、料理のできるメイドを一人雇っておいた。金貨二枚あれば、メイドの給金と食費は問題ないはずだ。飢え死にすることはないし、動物たちも、動物が大好きなケリーが世話をするだろう。
何かあればすぐに連絡をするようにと伝えてあるし、心配しなくても大丈夫のはずだ。
(さてと、寝坊な王子様を起こしに行きましょうかね)
身支度を整えたカレンは、内扉の鍵を開けて、リチャードの部屋に入った。
案の定、寝坊なリチャードは、大きなキングサイズのベッドの上で、枕を抱きしめてくーくーとまだ夢の中。
「殿下、朝ですよ!」
城で働きはじめて最初に迎えた朝、リチャードを起こしに行くと彼は裸で寝ていて悲鳴を上げる羽目になったが、それ以来、きちんと服を着て寝てくれているので安心して布団がはぎ取れた。
布団をはぎ取れば、リチャードは不満そうにぐっと眉を寄せてから、渋々目を開く。
「……おはよう、カレン。君は朝から元気だね」
どうやら低血圧らしいリチャードは朝が苦手な様子だ。特に秋も深まりつつある現在、朝晩が冷え込むせいか、布団から出たくないらしい。
「今日は、外務大臣と会議じゃなかったです?」
確かお昼前の予定だったと思い出すと、リチャードは布団の上でごろんと寝返りを打って仰向けになり、じとっとカレンを見やった。
「それ、ロゼウスに聞いたの?」
「はい。殿下のスケジュールを教えていただきました」
ロゼウスは、カレンがリチャードの侍女として働くことになったと知ると、これ幸いとリチャードのスケジュールを渡してきた。スケジュールを組むのはロゼウスの仕事だが、管理をしてくれということらしい。
「俺は君にそんなことをさせるために呼んだわけじゃないんだけど……」
そう言いながらリチャードは、カレンの手にある羽毛布団を奪うと、それをかぶって再び眠りにつこうとした。
カレンは慌ててもう一度布団をはぎ取ると、ごろごろしているリチャードの腕をつかんで引っ張る。
「起きてくださいー! 殿下が起きないと、わたしがロゼウス様に注意されるじゃないですか!」
「ロゼウスには俺から言っておくよ。君の役割はほかにある」
リチャードはあきらめてベッドに上体を起こすと、両手を大きく広げて見せた。
カレンは「う……」と一瞬ひるんでから、ベッドに腰かけると、リチャードの腕の中にすぽっとおさまる。
そう――
リチャードの体質改善のためという名目で、毎朝こうしてリチャードを抱きしめる仕事を言い渡されていたのだ。
もちろん、それだけではない。とにかく暇さえあればスキンシップに応じること。これがリチャードの「体質改善係」としての条件だ。
(なんで寝起きだっていうのに汗のにおい一つしないのかしら……)
それどころかさわやかなシトラス系の香りすらする。つくづく謎だ。
「リチャード殿下、もういいでしょうか……?」
いつまでもぎゅーぎゅー抱きしめてくるリチャードの腕をぱしぱしと軽く叩くと、ようやく腕の力が緩められた。
「やっぱり君が相手だと蕁麻疹が出ないな」
リチャードは感心するように言って、とうとう諦めたのかベッドから抜け出した。
さすがに着替えを手伝うのは恥ずかしすぎるし、ずっと侍女をおいていなかったリチャードは大抵のことは一人でできる。彼が着替えだしたのを見て、カレンは寝起きのハーブティーを入れようと、いったん自室に戻っていった。
まず目に飛び込んでくるのは高い天井。それから、ふかふかのベッドにさらさらと肌触りのいいシーツ。
広い部屋の中の家具は白や薄ピンク、緑やクリーム色で柔らかく整えられている。
「……慣れない」
ピンク色の遮光カーテンを開けて部屋の中に朝日を取り込みながら、カレンははあ、と息を吐きだした。
第一王子リチャードの体質改善係という名の侍女として城で勤務しはじめて早三日。
近くにいた方が何かと便利だからというリチャードの意向で、彼の部屋と内扉でつながっている部屋を与えられたのだが、いかんせん、部屋の中の調度品が高価すぎてちっとも落ち着かなかった。
しかも、侍女だと言うのに、クローゼットをあけるとドレスの山。アクセサリーの山。これを少し売るだけで、カレンの家の借金が片付いてお釣りがくるだろう高価なものばかりで目がチカチカする。
リチャードは普段着として身につけてくれと言ったが、恐ろしくて普段着使いなどできるはずもなく、頼み込んで紺色のシンプルなワンピースをお仕着せとして買ってもらった。これでも充分高価だろうが、レースたっぷりのふりふりのドレスよりはましである。
カレンはお仕着せに着替えると、ふわふわと広がる蜂蜜色の髪を編み込んで束ねる。
(お母様たち、大丈夫かしらね……?)
家事能力がまったくない継母と姉たちのために、給金のうち金貨二枚を前借して、料理のできるメイドを一人雇っておいた。金貨二枚あれば、メイドの給金と食費は問題ないはずだ。飢え死にすることはないし、動物たちも、動物が大好きなケリーが世話をするだろう。
何かあればすぐに連絡をするようにと伝えてあるし、心配しなくても大丈夫のはずだ。
(さてと、寝坊な王子様を起こしに行きましょうかね)
身支度を整えたカレンは、内扉の鍵を開けて、リチャードの部屋に入った。
案の定、寝坊なリチャードは、大きなキングサイズのベッドの上で、枕を抱きしめてくーくーとまだ夢の中。
「殿下、朝ですよ!」
城で働きはじめて最初に迎えた朝、リチャードを起こしに行くと彼は裸で寝ていて悲鳴を上げる羽目になったが、それ以来、きちんと服を着て寝てくれているので安心して布団がはぎ取れた。
布団をはぎ取れば、リチャードは不満そうにぐっと眉を寄せてから、渋々目を開く。
「……おはよう、カレン。君は朝から元気だね」
どうやら低血圧らしいリチャードは朝が苦手な様子だ。特に秋も深まりつつある現在、朝晩が冷え込むせいか、布団から出たくないらしい。
「今日は、外務大臣と会議じゃなかったです?」
確かお昼前の予定だったと思い出すと、リチャードは布団の上でごろんと寝返りを打って仰向けになり、じとっとカレンを見やった。
「それ、ロゼウスに聞いたの?」
「はい。殿下のスケジュールを教えていただきました」
ロゼウスは、カレンがリチャードの侍女として働くことになったと知ると、これ幸いとリチャードのスケジュールを渡してきた。スケジュールを組むのはロゼウスの仕事だが、管理をしてくれということらしい。
「俺は君にそんなことをさせるために呼んだわけじゃないんだけど……」
そう言いながらリチャードは、カレンの手にある羽毛布団を奪うと、それをかぶって再び眠りにつこうとした。
カレンは慌ててもう一度布団をはぎ取ると、ごろごろしているリチャードの腕をつかんで引っ張る。
「起きてくださいー! 殿下が起きないと、わたしがロゼウス様に注意されるじゃないですか!」
「ロゼウスには俺から言っておくよ。君の役割はほかにある」
リチャードはあきらめてベッドに上体を起こすと、両手を大きく広げて見せた。
カレンは「う……」と一瞬ひるんでから、ベッドに腰かけると、リチャードの腕の中にすぽっとおさまる。
そう――
リチャードの体質改善のためという名目で、毎朝こうしてリチャードを抱きしめる仕事を言い渡されていたのだ。
もちろん、それだけではない。とにかく暇さえあればスキンシップに応じること。これがリチャードの「体質改善係」としての条件だ。
(なんで寝起きだっていうのに汗のにおい一つしないのかしら……)
それどころかさわやかなシトラス系の香りすらする。つくづく謎だ。
「リチャード殿下、もういいでしょうか……?」
いつまでもぎゅーぎゅー抱きしめてくるリチャードの腕をぱしぱしと軽く叩くと、ようやく腕の力が緩められた。
「やっぱり君が相手だと蕁麻疹が出ないな」
リチャードは感心するように言って、とうとう諦めたのかベッドから抜け出した。
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