シンデレラは貧乏性~結婚に必要な条件は『金銭感覚』です!~

狭山ひびき

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王子様は策略中

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「ロゼウス。ちっとも落ちる気配がないんだがどう思う?」

 リチャードは執務室のソファの上で腕を組むと、難しい顔でうーんと唸った。

 仕事がひと段落したので紅茶を飲みながら休憩している。

 相変わらず、まるで罰を受けている兵士のように直立不動の姿勢で控えていたロゼウスは、呆れたような表情を浮かべた。

「まだカレンさんが来て五日ではないですか。そんなにすぐに変わるものでもないでしょうに」

「だが、俺はこの上なく優しくしているし、ドレスもアクセサリーも揃えたし、スキンシップも多く取っている。……この指南書、間違っているんじゃないのか」

 指南書――、ロゼウスはちらりとソファの前のローテーブルに置かれた一冊の本に視線を向ける。

 えんじ色の表紙の、分厚く重厚そうにも見える本だが、表紙を開けばそこにはこう書かれている。



 恋愛指南書~どんな恋愛下手でもこれで大丈夫! あっという間にモテモテに~



 一国の王子が何を読んでいるのだと、いろいろ悲しくなるので突っ込まなかったが、この本はカレンが城に来る前に、リチャードがお忍びで城下の本屋に行って買ってきた本だった。

 何が何でもカレンを手に入れないとあとがないというリチャードの気持ちはわからなくもないが、こんな怪しげな本に手を出さなくともいいだろうとロゼウスは思う。

 しかし二十一年間女を避け続けてきたリチャードにとって「女性を落とす」とことは未知の領域らしい。なぜなら、モテたくなくても勝手にきゃーきゃー騒がれて女が寄ってきて逃げ回っていた王子だ。自分から行動を起こしたためしがない。

 世の中の男が聞けば「地獄に落ちろ」とでも言いたいだろうが、これで至極真面目に悩んでいるのだ。

 だがまあ、怪しげな指南書とはいえ、書かれていることはそれほど的外れなことではない。普通の女性なら頬を染めてもおかしくないのだが、そうならないと言うのは結局のところ――

「どうやらカレンさんは正攻法ではだめなようですね」

「そんなことはわかっている。だからてこずっているんだ」

「はあ。……まあ、教師をつけるのはよかったんじゃないですか?」

 ロゼウスは昨日から教師について学んでいるカレンの様子を思い出した。ロゼウスが勉強に使う本を持って行くと、頬を染めて嬉しそうに受け取った。今回はいい作戦だったと思ったのだが――

「あれは狙ってやったんじゃない」

 王子は不服そうだ。

 計画通りかそうではないかなんて、この際うまくいけばそれでいいような気もするのだが、リチャードにとっては違うらしい。

「まあ、これで贈ったドレスが無駄にならなくなったと思えば、百歩譲ってよしとしよう」

 すっかり冷めた紅茶をすすりながら言うリチャードに、ロゼウスは肩を落とした。

「あなたはまず、落とす落とさないだの、恋だのと言う前に、女心から学ぶべきかもしれませんね……」

 先は長そうだな――、ロゼウスは心の中でそうつぶやいた。
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