シンデレラは貧乏性~結婚に必要な条件は『金銭感覚』です!~

狭山ひびき

文字の大きさ
25 / 46
王子様は策略中

5

しおりを挟む
 カレンが城へ来て一週間がすぎた夜のことだった。

 リチャードとともに食事を取り、湯あみを終えてベッドに横になっていると、コンコンと内扉を叩く音がしてカレンは目を開けた。

 夜着の上にショールを羽織って、鍵をあけて扉を開けば、予想はしていたがリチャードが立っている。

「すまない、寝ていたか?」

「いえ、まだ横になっていただけで眠ってはいませんでしたけど。殿下、どうなさったんですか?」

「今夜星が降るんだ」

「え? 星?」

「そうだ。だから一緒に見ないかと思ったんだが」

 カレンは首をひねる。星が降るとはどういうことだろう。よくわからないでいると、カレンの手首をつかんだリチャードに「見たらわかる」と手を引かれた。

 リチャードに導かれるまま彼の部屋のバルコニーに出ると、そこにはソファとテーブルとワインが用意されている。

 使いかけのグラスが一つだけということは、リチャードは一人で空をながめていたのだろう。

「毎年一人で見るんだが、今年は君がいるんだったと思い出したんだ。ワインは飲むか?」

「じゃあ少しだけ」

 頷けば、リチャードがグラスを持ってきてくれる。そして、ショールの上から腕をこすっていると、リチャードはブランケットも持って来た。

「夜は冷えるからな」

 そう言って、大きなブランケットでカレンと自分の体をすっぽり覆ってしまった。

 まさか同じブランケットで包まれる羽目になるとは思わなかったカレンは硬直したが、いつも「スキンシップ」と言ってリチャードが抱きついてくるので、近すぎる距離に慣れてしまったのか、緊張したのは最初だけだった。

 リチャードはワイングラスを片手に空を見上げる。

 カレンも赤ワインが半分ほど入っているワイングラスを持って、リチャードに習って夜空を見上げた。

 高く澄んだ空にはたくさんの星が瞬いている。
(星が落ちるって、なにかしら……?)

 文字通り空の星が落ちてくるのだとしたらとても怖いが、ここでのんきに空を見上げているリチャードの様子からそうではないと推測できる。

 リチャードは毎年ここで星が落ちてくるのを見ていたと言っていた。つまり、毎年「星が落ちる」現象があったということだが、残念ながらカレンはその現象を知らない。朝が早いせいか、夜は早く寝る習慣がついていたので、夜に空を見上げることはほとんどなかった。

「今日はよく晴れているから、よく見えるだろう」

 満足そうなリチャードの横顔を見て、カレンはもう一度空を見上げた。そして、リチャードと他愛ない話をしていた、そのとき。

 スーッと目の前を一筋、光の線が横切って行ってカレンは目を見開く。しばらくすると、また一つ、また一つと光の線が流れて行き――

「はじまったようだな」

 まるで、光の雨が降り注ぐかのような光景に、カレンは行きも忘れて夜空に見入った。

「す、ごい……」

「そうだろう? 毎年この時期になると流星群が見られるんだ。今年は晴れているから特にはっきりと見えるな」

「りゅうせい、ぐん……?」

 こんなすごいものが、毎年はるか上空で起こっていたのか。

(今まで知らなかったなんて、もったいなかったかも……)

 リチャードは星を眺めながらワイングラスを傾ける。

「毎年、一人で見るのは少し味気なく思っていたんだが、これからは君がいる」

「殿下……」

「また来年も一緒に見よう」

 一年後、カレンがまだ城にいるかどうかもわからないのに、「約束だ」と言うリチャードにカレンは苦笑する。けれど。

「……はい。そうですね」

 そう答えたい、気分だった。
しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

処刑前夜に逃亡した悪役令嬢、五年後に氷の公爵様に捕まる〜冷徹旦那様が溺愛パパに豹変しましたが私の抱いている赤ちゃん実は人生2周目です〜

放浪人
恋愛
「処刑されるなんて真っ平ごめんです!」 無実の罪で投獄された悪役令嬢レティシア(中身は元社畜のアラサー日本人)は、処刑前夜、お腹の子供と共に脱獄し、辺境の田舎村へ逃亡した。 それから五年。薬師として穏やかに暮らしていた彼女のもとに、かつて自分を冷遇し、処刑を命じた夫――「氷の公爵」アレクセイが現れる。 殺される!と震えるレティシアだったが、再会した彼は地面に頭を擦り付け、まさかの溺愛キャラに豹変していて!? 「愛しているレティシア! 二度と離さない!」 「(顔が怖いです公爵様……!)」 不器用すぎて顔が怖い旦那様の暴走する溺愛。 そして、二人の息子であるシオン(1歳)は、実は前世で魔王を倒した「英雄」の生まれ変わりだった! 「パパとママは僕が守る(物理)」 最強の赤ちゃんが裏で暗躍し、聖女(自称)の陰謀も、帝国の侵略も、古代兵器も、ガラガラ一振りで粉砕していく。

勘違いで嫁ぎましたが、相手が理想の筋肉でした!

エス
恋愛
「男性の魅力は筋肉ですわっ!!」 華奢な男がもてはやされるこの国で、そう豪語する侯爵令嬢テレーゼ。 縁談はことごとく破談し、兄アルベルトも王太子ユリウスも頭を抱えていた。 そんな折、騎士団長ヴォルフがユリウスの元に「若い女性を紹介してほしい」と相談に現れる。 よく見ればこの男──家柄よし、部下からの信頼厚し、そして何より、圧巻の筋肉!! 「この男しかいない!」とユリウスは即断し、テレーゼとの結婚話を進める。 ところがテレーゼが嫁いだ先で、当のヴォルフは、 「俺は……メイドを紹介してほしかったんだが!?」 と何やら焦っていて。 ……まあ細かいことはいいでしょう。 なにせ、その腕、その太もも、その背中。 最高の筋肉ですもの! この結婚、全力で続行させていただきますわ!! 女性不慣れな不器用騎士団長 × 筋肉フェチ令嬢。 誤解から始まる、すれ違いだらけの新婚生活、いざスタート! ※他サイトに投稿したものを、改稿しています。

【完結】目覚めたら男爵家令息の騎士に食べられていた件

三谷朱花
恋愛
レイーアが目覚めたら横にクーン男爵家の令息でもある騎士のマットが寝ていた。曰く、クーン男爵家では「初めて契った相手と結婚しなくてはいけない」らしい。 ※アルファポリスのみの公開です。

『身長185cmの私が異世界転移したら、「ちっちゃくて可愛い」って言われました!? 〜女神ルミエール様の気まぐれ〜』

透子(とおるこ)
恋愛
身長185cmの女子大生・三浦ヨウコ。 「ちっちゃくて可愛い女の子に、私もなってみたい……」 そんな密かな願望を抱えながら、今日もバイト帰りにクタクタになっていた――はずが! 突然現れたテンションMAXの女神ルミエールに「今度はこの子に決〜めた☆」と宣言され、理由もなく異世界に強制転移!? 気づけば、森の中で虫に囲まれ、何もわからずパニック状態! けれど、そこは“3メートル超えの巨人たち”が暮らす世界で―― 「なんて可憐な子なんだ……!」 ……え、私が“ちっちゃくて可愛い”枠!? これは、背が高すぎて自信が持てなかった女子大生が、異世界でまさかのモテ無双(?)!? ちょっと変わった視点で描く、逆転系・異世界ラブコメ、ここに開幕☆

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

異世界から来た娘が、たまらなく可愛いのだが(同感)〜こっちにきてから何故かイケメンに囲まれています〜

恋愛
普通の女子高生、朱璃はいつのまにか異世界に迷い込んでいた。 右も左もわからない状態で偶然出会った青年にしがみついた結果、なんとかお世話になることになる。一宿一飯の恩義を返そうと懸命に生きているうちに、国の一大事に巻き込まれたり巻き込んだり。気付くと個性豊かなイケメンたちに大切に大切にされていた。 そんな乙女ゲームのようなお話。

王宮地味女官、只者じゃねぇ

宵森みなと
恋愛
地味で目立たず、ただ真面目に働く王宮の女官・エミリア。 しかし彼女の正体は――剣術・魔法・語学すべてに長けた首席卒業の才女にして、実はとんでもない美貌と魔性を秘めた、“自覚なしギャップ系”最強女官だった!? 王女付き女官に任命されたその日から、運命が少しずつ動き出す。 訛りだらけのマーレン語で王女に爆笑を起こし、夜会では仮面を外した瞬間、貴族たちを騒然とさせ―― さらには北方マーレン国から訪れた黒髪の第二王子をも、一瞬で虜にしてしまう。 「おら、案内させてもらいますけんの」 その一言が、国を揺らすとは、誰が想像しただろうか。 王女リリアは言う。「エミリアがいなければ、私は生きていけぬ」 副長カイルは焦る。「このまま、他国に連れて行かれてたまるか」 ジークは葛藤する。「自分だけを見てほしいのに、届かない」 そしてレオンハルト王子は心を決める。「妻に望むなら、彼女以外はいない」 けれど――当の本人は今日も地味眼鏡で事務作業中。 王族たちの心を翻弄するのは、無自覚最強の“訛り女官”。 訛って笑いを取り、仮面で魅了し、剣で守る―― これは、彼女の“本当の顔”が王宮を変えていく、壮麗な恋と成長の物語。 ★この物語は、「枯れ専モブ令嬢」の5年前のお話です。クラリスが活躍する前で、少し若いイザークとライナルトがちょっと出ます。

神様の手違いで、おまけの転生?!お詫びにチートと無口な騎士団長もらっちゃいました?!

カヨワイさつき
恋愛
最初は、日本人で受験の日に何かにぶつかり死亡。次は、何かの討伐中に、死亡。次に目覚めたら、見知らぬ聖女のそばに、ポツンとおまけの召喚?あまりにも、不細工な為にその場から追い出されてしまった。 前世の記憶はあるものの、どれをとっても短命、不幸な出来事ばかりだった。 全てはドジで少し変なナルシストの神様の手違いだっ。おまけの転生?お詫びにチートと無口で不器用な騎士団長もらっちゃいました。今度こそ、幸せになるかもしれません?!

処理中です...