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ダンスレッスンで恋の種は芽吹きません
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「なかなかいい感じだとは思わないか?」
「……何がですか?」
執務室で書類にサインしていたリチャードが突然にまにまと笑いはじめたので、ロゼウスは怪訝そうに眉を寄せた。
リチャードは立ち上がると、ローテーブルの上においている「恋愛指南書」を取り上げて、分厚い本をぱらぱらとめくった。
「ほら、ここだ。見て見ろ」
見たくはなかったが、「見ろ」と渡されたので、ロゼウスは渋々ながら本を受け取り、そこに書かれている文字を声に出して読んだ。
「心の距離を縮める方法。一緒にダンスを踊り、高まる鼓動を共有すれば、相手は恋に落ちること間違いなし。………、はあ」
「なにが、はあ、だ。ダンスパーティーで優雅にリードしてカレンをときめかせるという予定は狂ったが、ダンスレッスンもダンスに違いないだろう。上々だ」
「上々……ですか。そうですか……」
ロゼウスは再び本に視線を落とす。
本に書いてあることが本当に正しいのであれば、ダンスレッスンだろうとなんだろうと、「心の距離」とやらは縮まるはずだ。だがしかし。
「ポイントはいかに相手をドキドキさせること――って書いてありますけど、カレンさんはドキドキしてくれているんですか?」
「しているに決まっているだろう。相手は俺だぞ」
「その自信はどこから来るんでしょうかね……。では聞きますが、この後に書いてある『ドキドキ判定』のどれに当てはまっているんですか?」
「ドキドキ判定?」
リチャードは首を傾げて、ロゼウスから本を受け取った。
ドキドキ判定
一、相手が頬を染めて自分を見ている
二、相手がはにかんだような笑顔で自分を見上げる
三、つないだ相手の手が汗ばんでいる
四、一緒に踊れてうれしかった、楽しかったなど肯定的な言葉を言われる
五、相手が―――
このまま八項目に及ぶ『ドキドキ判定』に眉間に皺を寄せた。
(頬を染めて――ないな。はにかんだような笑顔? 笑顔すらほとんどない。手が汗ばんでいる――は、おそらく踊りすぎて汗をかいただけだろう。嬉しかったや楽しかったなど言われたことがない……)
ショックを受けたようなリチャードの顔に、ロゼウスは「やっぱりな」とつぶやく。
「まあ、はじめて一週間ですし……、がんばってください」
いまだに茫然と『ドキドキ判定』を目で追っているリチャードに、ロゼウスはどうしてその怪しい本に絶大な信頼をおいているのだろうと、ため息をついたのだった。
「……何がですか?」
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リチャードは立ち上がると、ローテーブルの上においている「恋愛指南書」を取り上げて、分厚い本をぱらぱらとめくった。
「ほら、ここだ。見て見ろ」
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「心の距離を縮める方法。一緒にダンスを踊り、高まる鼓動を共有すれば、相手は恋に落ちること間違いなし。………、はあ」
「なにが、はあ、だ。ダンスパーティーで優雅にリードしてカレンをときめかせるという予定は狂ったが、ダンスレッスンもダンスに違いないだろう。上々だ」
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ロゼウスは再び本に視線を落とす。
本に書いてあることが本当に正しいのであれば、ダンスレッスンだろうとなんだろうと、「心の距離」とやらは縮まるはずだ。だがしかし。
「ポイントはいかに相手をドキドキさせること――って書いてありますけど、カレンさんはドキドキしてくれているんですか?」
「しているに決まっているだろう。相手は俺だぞ」
「その自信はどこから来るんでしょうかね……。では聞きますが、この後に書いてある『ドキドキ判定』のどれに当てはまっているんですか?」
「ドキドキ判定?」
リチャードは首を傾げて、ロゼウスから本を受け取った。
ドキドキ判定
一、相手が頬を染めて自分を見ている
二、相手がはにかんだような笑顔で自分を見上げる
三、つないだ相手の手が汗ばんでいる
四、一緒に踊れてうれしかった、楽しかったなど肯定的な言葉を言われる
五、相手が―――
このまま八項目に及ぶ『ドキドキ判定』に眉間に皺を寄せた。
(頬を染めて――ないな。はにかんだような笑顔? 笑顔すらほとんどない。手が汗ばんでいる――は、おそらく踊りすぎて汗をかいただけだろう。嬉しかったや楽しかったなど言われたことがない……)
ショックを受けたようなリチャードの顔に、ロゼウスは「やっぱりな」とつぶやく。
「まあ、はじめて一週間ですし……、がんばってください」
いまだに茫然と『ドキドキ判定』を目で追っているリチャードに、ロゼウスはどうしてその怪しい本に絶大な信頼をおいているのだろうと、ため息をついたのだった。
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