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突然、モテ期がやってきました 1

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 ギルバートが結婚の打診をくれたところに向けて、息せき切ってやってきたラルフにまで求婚されて、もう何が何だかわからない。

 茫然としていると、そのあとすぐにクリスがやって来て、それとは違う事情で今日はもう帰った方がいいと言い出した。

 どうしたのかと思っていると、会場に、叔父一家がやって来たらしい。エイブラムは自分が次期バベッチ伯爵家の当主だと会場にいる人間に挨拶をはじめて、夫人のチェルシーはさも伯爵夫人のような顔をして夫の隣で高笑い。そして娘のコリーンは、なんと、派手に着飾って登場して、堂々と婚活をはじめたのだと言う。

「わたくし、父のあとを継いで伯爵家を盛り立ててくれる素敵な殿方を探していますの」

 そんなことを言いながら次々に未婚の男性に声をかけはじめたらしくて、会場はすっかり白けてしまったらしい。

 今オーレリアが会場に戻れば不快な思いをすること間違いないので、このまま彼らに気づかれる前に帰宅した方がいいとクリスは言う。

「招待状は出していないのに、どうしてここに来たの?」

 ギルバートがあきれ顔を浮かべて兄に訊ねた。

 クリスは肩をすくめた。

「彼らを会場に案内した使用人に聞くと、オーレリアの叔父で後見人だと言ったらしいよ」
「叔父様を後見人にした覚えはありません!」

 オーレリアは思わずベンチから立ち上がった。

 パーティーに招待されているのは代官の一家やその親族だ。オーレリアの名前を出せば、招待状がなくとも入れると判断したのだろう。招待状は一家に一通しか送られておらず、参加人数は限定されていない。オーレリアの家族だと言えば使用人が通してしまってもおかしくなかった。

「もちろんわかっているよ」

 クリスがオーレリアの両肩に手を置いて、ゆっくりとベンチに座りなおさせる。

「でも、パーティーに来ていた人たち全員にそれを言って回るのか? 第一君が顔を出せば、彼らはこれ幸いと君を巻き込んで次期伯爵だと演説をはじめるよ。まさか君、ここで叔父一家と大喧嘩をはじめたいわけじゃないだろう?」

「それは……」

「だから、今は帰るんだ。大丈夫、父上も眉をひそめていたから、じきに彼らは追い出されるよ。でも、そのあとで君が顔を出したら、絶対に好奇な視線にさらされる。だから、ね」

 叔父たちが帰るのを見計らって会場に戻っても、オーレリアは針の筵だろう。クリスの言うことはよくわかる。

(でも……悔しい……)

 どうしてそんなに勝手なことができるのだろう。彼らはオーレリアの大切な居場所を、土足で踏み荒らして楽しいのだろうか。

「オーレリア、行こう」

 ラルフに促されて、オーレリアは口を引き結んでこくんと頷く。

 悔しくても、今のオーレリアにはどうすることもできない。

 この日、オーレリアはギルバートとラルフ両名から求婚されたこともきれいさっぱり頭から抜け落ちて、ぼんやりとしながら帰途についた。

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