マッドハッターの気ままな事件簿~ドSな帽子屋は一人の少女を溺愛する~

狭山ひびき

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お猫様はどこに消えた!?

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 ――ミーアがいなくなったの!

 シオン・ハワードが妹である公爵令嬢に泣きつかれたのは、彼の誕生日から二週間がすぎた日の朝のことだった。

 シオンの三つ年下で、もうじき十五歳になる妹のエリカは、シオンと同じ青い瞳をうるうると潤ませて、のんびりと自室で本を読んでいたシオンのもとにやってきた。

 ミーアとはエリカが可愛がっている、白に近い灰色の長い毛並みの猫である。まだ一歳にもなっていない猫で、エリカが友人宅からもらってきたのだ。

 この国であまり見ない珍しい毛並みのその猫の親は、どうやらはるか遠い国から海を渡ってきたらしい。

 ミーアは珍しい毛並みばかりか、とても人懐っこく、エリカの膝の上でいつも丸くなって眠っていた。

 エリカはミーアをそれはそれは溺愛しており、夜眠るときも自分のベッドに招き入れるほどだったのだ。

 シオンは最近、友人であり遠縁のオルフェリウスからとある少女の子守を押しつけられたばかりで、城に入り浸っていたため、そう言えば最近ミーアの姿を見ていなかったという事実に今更気がついた。

「確かに、ここ数日見ていないね」

「数日じゃないわ、お兄様! もう、一週間も帰ってこないのよ!」

 一日二日ミーアが家に帰ってこないことは、過去に三度ほど起こっている。猫は気まぐれで、ふらりとどこかに行ってしまうのだ。それでも帰省本能があるのか、きちんと自力で邸に戻って来ていたのだが――、さすがに一週間は長い。

「どうしよう、お兄様……。ずっと探しているのに見つからないの」

 もしかして、馬車にひかれてしまったのかしらとさめざめと泣く妹を抱きしめてなだめながら、シオンは弱ったなと眉尻を落とした。

 猫の行動パターンなんて、シオンにはまったくわからないのである。

 しかし、わからないからと言って軽々しく「放っておけばそのうち戻ってくるよ」とは言えば、エリカは大泣きをはじめるだろう。

(困ったな……)

 エリカには悪いが、シオンはそれほどミーアに愛着がない。というのも、あの雄猫はエリカにこそ懐いているが、シオンや父であるハワード公爵にはあたりがきつく、ひっかかれたことも数えきれないほどある。

 そのため、ミーアに対して無関心を貫いてきたシオンは、彼が行きそうなところには、まったく心当たりがないのだ。

 シオンは弱り果てて、「なんとかして」と泣きつく妹をなだめながらこう言うことしかできなかった。

「大丈夫、俺が探してあげるからね」

 のちのちこの安請け合いをひどく後悔することとなるのだが、妹に甘いハワード公爵令息は、この時は、そのうち勝手に帰ってくるだろうと安易なことを考えていた。
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