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お猫様はどこに消えた!?
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「すると、そのミーアという猫が一週間前から帰っていないというんだね」
ヴィクトールは白に近い灰色の猫というミーアの特徴を脳に刻みながら、シオンから聞いた情報を整理した。
一週間前の朝以降、ミーアの姿を誰も見ていないという。
ミーアは普段、自由に公爵邸の外に遊びに出かけているそうだが、朝に邸を出て行って、いつもは昼過ぎには戻ってくるらしい。
しかしその日は昼すぎになっても、夜になってもミーアは戻ってこず、シオンの妹であるエリカが侍女たちと近所を探し回ったそうだが見つからなかった。
それから一週間――、どれだけ探してもミーアが見つからないという。
話を聞きながら、ヴィクトールはこの情報だけでは何もわからないなと嘆息した。
猫なんて気ままな生き物だ。帰省本能があるとはいえ、住みやすい場所を見つけたらふらりといなくなるかもしれない。
散歩中に馬車にひかれているかもしれない。
それこそ、珍しいからと誰かが拾って連れ帰ったりしたら――
ヴィクトールはそこまで考えて、何かが引っかかった。
(珍しい、か)
そう言えば、スノウがいなくなった白猫も、少し珍しい毛並みの猫だった。
王太后が可愛がっていたフランソワーズもそう。
そして、シオンの話を聞くかぎり、ミーアという猫も海を渡ってきた珍しい品種の血を引く猫のようだ。
ヴィクトールは顎に手を当てて唸る。
(ひょっとして、ひょっとするかもな……。少し調べてみるか)
どうせ、王太后のフランソワーズを探さなくてはいけないのだ。ついでと言ったらついでだったし、もしかすると、もう一つの仕事の方も片付くかもしれない。
ヴィクトールは顔をあげると、「猫なんて気ままなものだし、放っておいても戻ってくる気がするんだけど」とぶつぶつ言っているシオンに向かって微笑んだ。
「探してあげてもいいよ」
「え!? 本当!?」
あれだけヴィクトールを怪しんでいたというのに、純粋培養のシオンは、ぱっと顔を輝かせた。
(あー……、陛下に遊ばれる理由がよくわかる)
あまりに簡単に人を信じすぎて――、いじめたくなる。
ヴィクトールの中にむくむくといたずら心が育ったが、人が良く真面目なシオンは気がついていないようだった。
人の善意を疑わないシオンは、助かったとばかりにヴィクトールに手まで合わせている。
(これは一度痛い目を見た方がいいな、うん)
それがきっと彼のためだろう。
口元をニヤリとゆがめたヴィクトールは、ヴィクトールの優しさに感動しているシオンに向けてこう言った。
「そのかわり、君も猫を探すのを手伝ってくれるかな?」
シオンはその猫のなかにほかのものも含まれていることなど露知らず、「もちろん!」と満面の笑顔で頷いている。
「……ほどほどにしてあげなさいね」
ヴィクトールの悪い笑顔に気がついているシュゼットだけは、あきれたようにそう言ったが、それでもヴィクトールを止めようとはしなかった。
ヴィクトールは白に近い灰色の猫というミーアの特徴を脳に刻みながら、シオンから聞いた情報を整理した。
一週間前の朝以降、ミーアの姿を誰も見ていないという。
ミーアは普段、自由に公爵邸の外に遊びに出かけているそうだが、朝に邸を出て行って、いつもは昼過ぎには戻ってくるらしい。
しかしその日は昼すぎになっても、夜になってもミーアは戻ってこず、シオンの妹であるエリカが侍女たちと近所を探し回ったそうだが見つからなかった。
それから一週間――、どれだけ探してもミーアが見つからないという。
話を聞きながら、ヴィクトールはこの情報だけでは何もわからないなと嘆息した。
猫なんて気ままな生き物だ。帰省本能があるとはいえ、住みやすい場所を見つけたらふらりといなくなるかもしれない。
散歩中に馬車にひかれているかもしれない。
それこそ、珍しいからと誰かが拾って連れ帰ったりしたら――
ヴィクトールはそこまで考えて、何かが引っかかった。
(珍しい、か)
そう言えば、スノウがいなくなった白猫も、少し珍しい毛並みの猫だった。
王太后が可愛がっていたフランソワーズもそう。
そして、シオンの話を聞くかぎり、ミーアという猫も海を渡ってきた珍しい品種の血を引く猫のようだ。
ヴィクトールは顎に手を当てて唸る。
(ひょっとして、ひょっとするかもな……。少し調べてみるか)
どうせ、王太后のフランソワーズを探さなくてはいけないのだ。ついでと言ったらついでだったし、もしかすると、もう一つの仕事の方も片付くかもしれない。
ヴィクトールは顔をあげると、「猫なんて気ままなものだし、放っておいても戻ってくる気がするんだけど」とぶつぶつ言っているシオンに向かって微笑んだ。
「探してあげてもいいよ」
「え!? 本当!?」
あれだけヴィクトールを怪しんでいたというのに、純粋培養のシオンは、ぱっと顔を輝かせた。
(あー……、陛下に遊ばれる理由がよくわかる)
あまりに簡単に人を信じすぎて――、いじめたくなる。
ヴィクトールの中にむくむくといたずら心が育ったが、人が良く真面目なシオンは気がついていないようだった。
人の善意を疑わないシオンは、助かったとばかりにヴィクトールに手まで合わせている。
(これは一度痛い目を見た方がいいな、うん)
それがきっと彼のためだろう。
口元をニヤリとゆがめたヴィクトールは、ヴィクトールの優しさに感動しているシオンに向けてこう言った。
「そのかわり、君も猫を探すのを手伝ってくれるかな?」
シオンはその猫のなかにほかのものも含まれていることなど露知らず、「もちろん!」と満面の笑顔で頷いている。
「……ほどほどにしてあげなさいね」
ヴィクトールの悪い笑顔に気がついているシュゼットだけは、あきれたようにそう言ったが、それでもヴィクトールを止めようとはしなかった。
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