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濫觴の四月[April of Beginning]
Mission22 静寂なる狂想曲
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俺たちはヘリから降りると早速目の前にある商店街へと向かう。
〈いいか?何度も言う様だが敵を殲滅する必要はない。兵器さえ破壊できればいいからな〉
「ああ。判ってる。兵器を見つけ出して、爆破しろ……って言ってたしね」
〈その通りだ。私はヘリから君たちの様子を見ている。君たちは“コンタクト”をつけているな?〉
神崎さんはそう言った。
俺は耳につけているイヤホン型の無線機に指を当てる。
「ああ。……そういや、視界になにか表示されてるけどこれは?」
先ほどから俺の視界の端には心電図が存在している。
心電図だけじゃなく、地図の様なものもある。
〈君たちに出撃前につけてもらったものはコンタクト型のコンピュータだ。君たちの生体データ、地形図などが拡張現実で表示されているはずだ〉
「……じゃあ、この心電図って自分の?地形図は……」
〈商店街までの地図だ。私はそのコンタクトを通して君たちの見ているものを見ることができる。戦闘員1人ひとりの行動を監視できるというわけだ。いい時代になったものだ〉
俺たちの一挙手一投足は彼女によって監視されているのか。
しかし、コンタクト型のコンピュータだなんて……今はそんなに技術が進んでいるとは思いもしなかった。
「監視か……いい気分はしないな」
〈だろうな、私も悪趣味だとは思うよ。しかし、それには他にもカメラや位置情報システム、時計も搭載されている。それはミッションの手助けをしてくれるはずだ。有効活用してくれ〉
有効活用してくれと言われてもまだ使い方はよく判らない。
使い方に関しては徐々に慣れていくとしよう。
変わり果てた紙越町を駆けていた時のことだった。
「!」
突然俺たちの後方から高速でなにかが迫ってきた。
敵地だというのに敵が全くいないことで鈍っていた脳がそれは車だと認識し、咄嗟に横に飛び退いた。
それもただの車ではない──高機動車だ。
それを避けると俺たちの目の前で高機動車はブレーキをかけて止まった。
するとその中から目出し帽で顔を隠した人間が8人ばかり出てきた。
GRの戦闘員だろう。手には機銃が握られている。
「やれッ!」
誰か──目出し帽を被っているせいで誰か判らない──の命令によって一斉に機銃を構える。
そして引き金を引いて銃弾を俺たちへとバラ撒く。
「隠れてッ!」
俺たちの部隊の所属ではない、誰かがそう叫んだ。
俺たちは言われる通りに偶然近くにあった白ワゴン車に隠れ、銃撃を防ぐ。
「……ここが危険な場所だって忘れてた。いきなり銃撃されるなんてね」
「近くに遮蔽物があって助かったわね。なかったら蜂の巣よ」
「さらりと怖いこと言うね……ナギサ」
渚は銃撃されたにも関わらず俺たちの様に焦っている様子はなかった。
……流石元暗殺者だ。自身が生命の危機にあっても落ち着き払っている。
「別の部隊の人たちは違う遮蔽物に隠れたみたい……無事そうでよかった」
森さんはそう言った。
彼女の言う通り、路地への通路に隠れたり、横転しているトラックを遮蔽物にして隠れている人たちもいた。
「……でもいつまでも隠れているわけにはいかないわ。反撃しないと」
確かにずっと隠れていられるわけがない。
けれど銃撃の音はいつまで経っても止む気配はない。
どうすれば、と悩んでいると……
ドンッ
「ッ!?」
突然銃声の嵐の中でも判る乾いた音が響いた。
瞬間ぴたりと銃声が止む。
一体なにが起こったのか、確認するために物陰から覗いてみると戦闘員の1人が右腕を押さえて倒れていた。
何者かに撃たれた様だ。しかし誰に?
「狙撃だっ!狙撃手を探せっ!」
狙撃だって?
俺たちは辺りを見回してスナイパーを探した。
「あ、あれって──」
俺たちはスナイパーを探しているとレイが口を開いた。
(しっ!静かに!)
けれど瞬時に渚が彼女の口を塞ぐ。
(んむむ……ぷはっ。苦しいって、ナギサ!)
(スナイパーの場所をバラそうとするんじゃないわよ!敵に見られたらどうするの!あなたご丁寧に指で場所を指しかけたわよね!?)
レイにそう小声で叱る渚。
確かに彼女の指しかけた方向──俺たちの後方にあるマンションの屋上を見てみるとキラリとなにかが輝いて見えた。
目を凝らしてみるとそれは狙撃銃で、スナイパーも見えた。
輝いて見えたのはどうやらスコープの様だ。
「…………」
姿自体はよく見えないがなんとなく女子である様に見えた。
彼女は狙撃銃を構え、戦闘員へともう1発放った。
乾いた銃声が辺りに響き、先ほど撃たれた戦闘員とは別な戦闘員が倒れる。
しかし被弾させた箇所は急所ではなく、右腕だった。
「いたぞっ!殺せッ!」
2回目の狙撃で居場所を完全に特定され、戦闘員全員の意識がそのスナイパーへと向く。
狙撃手は『誰が味方を攻撃したのか』が完全に判ってしまうために集中攻撃を受けてしまいやすいと聞く。
全員の意識が狙撃手へと向き、銃を構えた瞬間に──
「がは……ッ」
突然戦闘員全員が倒れた。
一体なにが起こったんだ。脳が出来事を理解できずにいた。
「……これで全員、だね」
倒れた戦闘員たちを見下ろす影があった。
黒い刀身を持つ2つの刃、一対の刃を睨む灰色の瞳、風になびく黒い外套を羽織ったアッシュグレイの短髪を持つ女子がそう言った。
〈……“リッパー”〉
「リッパー……ってイギリスの?」
直巳がそう言ったので俺は19世紀のイギリスを騒がせた切り裂きジャックのことを言っているのかと尋ねた。
するとその単語に反応したのか彼女がこちらを向いた。
「……“切り裂き魔”、か。そう呼ばれるのも久しいね」
彼女は構えていた刃を鞘に収める。
そして俺たちに対して微笑んだ。
「そういや君たちに自己紹介してなかったね。アタシは藍川麻季。ちなみに3年生ね。サイレント・カプリチオの隊長をやらせてもらってる」
「リッパー……っていうのは?」
「ああ。それ、アタシの異名みたいなもの。気恥ずかしいのに誰かがそう呼び始めるからもう定着しちゃって……」
困っちゃうよね、と彼女は笑う。
その表情は先ほど敵を斬った瞬間に見せた冷たいものではなかった。
(サイレント・カプリチオ……確か学園内でもトップクラスの実力を誇る部隊って神崎さんが言ってたな……。そんな部隊の隊長をやってるなんて……相当な実力者だ)
邪心の混じっていない笑顔からは想像もできないくらい、彼女は強い。
どこをどうすればあどけなさの残る彼女の笑顔が敵を斬った際の冷酷そうな表情に変わるのかが謎だ。
「あ、そうだ。七菜もおいでよ。紹介しておこう?」
〈えー……わたしも?……あまり自己紹介とかはしたくないんですけど……〉
「そんなこと言わずに。ほら」
〈うぅ……っ、判りました〉
彼女は耳につけている無線機で“七菜”と呼んだ人物と無線でやり取りをしている様だ。
やり取りを終えるとビルの屋上から先ほどのスナイパーの女子へと視線をやる。
彼女は既に屋上から離れた様で狙撃銃を両手に持ったまま、俺たちのいるところまで歩いてきた。
「……2年。サイレント・カプリチオ副隊長、湖城七菜。……よろしく」
(短い自己紹介だな……)
「七菜は少し人見知りなところがあるからね、部隊のみんなと湖城先生以外の人とはちょっと愛想がない様に見えるかも」
俺の心を読む様に藍川先輩はそう言った。
「あれ?湖城って……」
「そう。湖城先生の従妹。湖城先生と違って童顔だし、身長も低いからあまり似てないってよく言われるんだよね」
「──身長のことには触れないで下さい。頭、ブチ抜きますよ?」
そう言って彼女は狙撃銃を遠慮なく構える。
湖城先生が『年齢』と『恋人がいないこと』に対して触れられるのを嫌う様に、彼女は『身長が低いこと』に触れられるのを嫌っている様だった。
確かに雰囲気などは似ていないかもしれないが触れられたくないことに触れられると攻撃態勢に入るのは似ているかもしれない。
……湖城先生の場合、攻撃態勢に入る前に反省文を書かせたが。
「……ま、それはともかく……七菜は“鷹の目”の異名で呼ばれてるんだ。狙撃に関しては学園の中で一番だと思うよ」
「……鷹の目って……そんなに目付き悪かったかな……」
彼女はそう小さな声で言った。
切れ長の涼やかな目を持つ湖城先生と違い、彼女は大きな瞳を持ち、穏やかそうな印象を与えている。
身長は170はあるだろう湖城先生とは違い、150センチくらいだ。
──けれどその胸部は湖城先生のものを上回っている。
湖城先生も決して『ない』訳ではないが彼女のものはそれ以上だ。
「さて……構えるよ」
「え?」
藍川先輩は再び一対の刀を抜いて構える。
湖城先輩もそれに合わせて高機動車に陰に隠れ、狙撃銃を構えた。
他の隊員も全員同じだ。それぞれ自身の武器を構える。
「……来る」
「来る?」
俺たちはなにが来るのか判らなかった。
けれど遠くから走行音がこちらに近付いているのを聞いて理解した。
高機動車だ。それも先ほどの様に1台だけではない。
1、2、3……10台もの高機動車が2列になってこちらに向かっている。
「え、あれ全部……」
「GRのものだね。とりあえず今回のミッションは兵器の破壊が目的だから……ここはアタシたちが引き受けるよ。君たちは先に行って。どう?七菜、やれそう?」
「……はい」
湖城先輩の眼がこちらへと走行する車輌を捉える。
彼女はそのまま銃のトリガーを引いた。
1発の銃弾が打ち出され、先頭を走る車輌のタイヤを撃ち抜いた。
瞬間車輌がバランスを崩し、近くのビルへと突っ込む。
「さぁ、ここは先輩たちに任せて先に行って!」
「……行くわよ、大和」
「ああ。頑張って下さい!」
サイレント・カプリチオは4人の部隊だが……相手は数十人はいる。
たった4人だけで全員を相手にできるのか、と疑問に思ったが俺たちはこの場を彼女たちに任せて先に進む。
〈いいか?何度も言う様だが敵を殲滅する必要はない。兵器さえ破壊できればいいからな〉
「ああ。判ってる。兵器を見つけ出して、爆破しろ……って言ってたしね」
〈その通りだ。私はヘリから君たちの様子を見ている。君たちは“コンタクト”をつけているな?〉
神崎さんはそう言った。
俺は耳につけているイヤホン型の無線機に指を当てる。
「ああ。……そういや、視界になにか表示されてるけどこれは?」
先ほどから俺の視界の端には心電図が存在している。
心電図だけじゃなく、地図の様なものもある。
〈君たちに出撃前につけてもらったものはコンタクト型のコンピュータだ。君たちの生体データ、地形図などが拡張現実で表示されているはずだ〉
「……じゃあ、この心電図って自分の?地形図は……」
〈商店街までの地図だ。私はそのコンタクトを通して君たちの見ているものを見ることができる。戦闘員1人ひとりの行動を監視できるというわけだ。いい時代になったものだ〉
俺たちの一挙手一投足は彼女によって監視されているのか。
しかし、コンタクト型のコンピュータだなんて……今はそんなに技術が進んでいるとは思いもしなかった。
「監視か……いい気分はしないな」
〈だろうな、私も悪趣味だとは思うよ。しかし、それには他にもカメラや位置情報システム、時計も搭載されている。それはミッションの手助けをしてくれるはずだ。有効活用してくれ〉
有効活用してくれと言われてもまだ使い方はよく判らない。
使い方に関しては徐々に慣れていくとしよう。
変わり果てた紙越町を駆けていた時のことだった。
「!」
突然俺たちの後方から高速でなにかが迫ってきた。
敵地だというのに敵が全くいないことで鈍っていた脳がそれは車だと認識し、咄嗟に横に飛び退いた。
それもただの車ではない──高機動車だ。
それを避けると俺たちの目の前で高機動車はブレーキをかけて止まった。
するとその中から目出し帽で顔を隠した人間が8人ばかり出てきた。
GRの戦闘員だろう。手には機銃が握られている。
「やれッ!」
誰か──目出し帽を被っているせいで誰か判らない──の命令によって一斉に機銃を構える。
そして引き金を引いて銃弾を俺たちへとバラ撒く。
「隠れてッ!」
俺たちの部隊の所属ではない、誰かがそう叫んだ。
俺たちは言われる通りに偶然近くにあった白ワゴン車に隠れ、銃撃を防ぐ。
「……ここが危険な場所だって忘れてた。いきなり銃撃されるなんてね」
「近くに遮蔽物があって助かったわね。なかったら蜂の巣よ」
「さらりと怖いこと言うね……ナギサ」
渚は銃撃されたにも関わらず俺たちの様に焦っている様子はなかった。
……流石元暗殺者だ。自身が生命の危機にあっても落ち着き払っている。
「別の部隊の人たちは違う遮蔽物に隠れたみたい……無事そうでよかった」
森さんはそう言った。
彼女の言う通り、路地への通路に隠れたり、横転しているトラックを遮蔽物にして隠れている人たちもいた。
「……でもいつまでも隠れているわけにはいかないわ。反撃しないと」
確かにずっと隠れていられるわけがない。
けれど銃撃の音はいつまで経っても止む気配はない。
どうすれば、と悩んでいると……
ドンッ
「ッ!?」
突然銃声の嵐の中でも判る乾いた音が響いた。
瞬間ぴたりと銃声が止む。
一体なにが起こったのか、確認するために物陰から覗いてみると戦闘員の1人が右腕を押さえて倒れていた。
何者かに撃たれた様だ。しかし誰に?
「狙撃だっ!狙撃手を探せっ!」
狙撃だって?
俺たちは辺りを見回してスナイパーを探した。
「あ、あれって──」
俺たちはスナイパーを探しているとレイが口を開いた。
(しっ!静かに!)
けれど瞬時に渚が彼女の口を塞ぐ。
(んむむ……ぷはっ。苦しいって、ナギサ!)
(スナイパーの場所をバラそうとするんじゃないわよ!敵に見られたらどうするの!あなたご丁寧に指で場所を指しかけたわよね!?)
レイにそう小声で叱る渚。
確かに彼女の指しかけた方向──俺たちの後方にあるマンションの屋上を見てみるとキラリとなにかが輝いて見えた。
目を凝らしてみるとそれは狙撃銃で、スナイパーも見えた。
輝いて見えたのはどうやらスコープの様だ。
「…………」
姿自体はよく見えないがなんとなく女子である様に見えた。
彼女は狙撃銃を構え、戦闘員へともう1発放った。
乾いた銃声が辺りに響き、先ほど撃たれた戦闘員とは別な戦闘員が倒れる。
しかし被弾させた箇所は急所ではなく、右腕だった。
「いたぞっ!殺せッ!」
2回目の狙撃で居場所を完全に特定され、戦闘員全員の意識がそのスナイパーへと向く。
狙撃手は『誰が味方を攻撃したのか』が完全に判ってしまうために集中攻撃を受けてしまいやすいと聞く。
全員の意識が狙撃手へと向き、銃を構えた瞬間に──
「がは……ッ」
突然戦闘員全員が倒れた。
一体なにが起こったんだ。脳が出来事を理解できずにいた。
「……これで全員、だね」
倒れた戦闘員たちを見下ろす影があった。
黒い刀身を持つ2つの刃、一対の刃を睨む灰色の瞳、風になびく黒い外套を羽織ったアッシュグレイの短髪を持つ女子がそう言った。
〈……“リッパー”〉
「リッパー……ってイギリスの?」
直巳がそう言ったので俺は19世紀のイギリスを騒がせた切り裂きジャックのことを言っているのかと尋ねた。
するとその単語に反応したのか彼女がこちらを向いた。
「……“切り裂き魔”、か。そう呼ばれるのも久しいね」
彼女は構えていた刃を鞘に収める。
そして俺たちに対して微笑んだ。
「そういや君たちに自己紹介してなかったね。アタシは藍川麻季。ちなみに3年生ね。サイレント・カプリチオの隊長をやらせてもらってる」
「リッパー……っていうのは?」
「ああ。それ、アタシの異名みたいなもの。気恥ずかしいのに誰かがそう呼び始めるからもう定着しちゃって……」
困っちゃうよね、と彼女は笑う。
その表情は先ほど敵を斬った瞬間に見せた冷たいものではなかった。
(サイレント・カプリチオ……確か学園内でもトップクラスの実力を誇る部隊って神崎さんが言ってたな……。そんな部隊の隊長をやってるなんて……相当な実力者だ)
邪心の混じっていない笑顔からは想像もできないくらい、彼女は強い。
どこをどうすればあどけなさの残る彼女の笑顔が敵を斬った際の冷酷そうな表情に変わるのかが謎だ。
「あ、そうだ。七菜もおいでよ。紹介しておこう?」
〈えー……わたしも?……あまり自己紹介とかはしたくないんですけど……〉
「そんなこと言わずに。ほら」
〈うぅ……っ、判りました〉
彼女は耳につけている無線機で“七菜”と呼んだ人物と無線でやり取りをしている様だ。
やり取りを終えるとビルの屋上から先ほどのスナイパーの女子へと視線をやる。
彼女は既に屋上から離れた様で狙撃銃を両手に持ったまま、俺たちのいるところまで歩いてきた。
「……2年。サイレント・カプリチオ副隊長、湖城七菜。……よろしく」
(短い自己紹介だな……)
「七菜は少し人見知りなところがあるからね、部隊のみんなと湖城先生以外の人とはちょっと愛想がない様に見えるかも」
俺の心を読む様に藍川先輩はそう言った。
「あれ?湖城って……」
「そう。湖城先生の従妹。湖城先生と違って童顔だし、身長も低いからあまり似てないってよく言われるんだよね」
「──身長のことには触れないで下さい。頭、ブチ抜きますよ?」
そう言って彼女は狙撃銃を遠慮なく構える。
湖城先生が『年齢』と『恋人がいないこと』に対して触れられるのを嫌う様に、彼女は『身長が低いこと』に触れられるのを嫌っている様だった。
確かに雰囲気などは似ていないかもしれないが触れられたくないことに触れられると攻撃態勢に入るのは似ているかもしれない。
……湖城先生の場合、攻撃態勢に入る前に反省文を書かせたが。
「……ま、それはともかく……七菜は“鷹の目”の異名で呼ばれてるんだ。狙撃に関しては学園の中で一番だと思うよ」
「……鷹の目って……そんなに目付き悪かったかな……」
彼女はそう小さな声で言った。
切れ長の涼やかな目を持つ湖城先生と違い、彼女は大きな瞳を持ち、穏やかそうな印象を与えている。
身長は170はあるだろう湖城先生とは違い、150センチくらいだ。
──けれどその胸部は湖城先生のものを上回っている。
湖城先生も決して『ない』訳ではないが彼女のものはそれ以上だ。
「さて……構えるよ」
「え?」
藍川先輩は再び一対の刀を抜いて構える。
湖城先輩もそれに合わせて高機動車に陰に隠れ、狙撃銃を構えた。
他の隊員も全員同じだ。それぞれ自身の武器を構える。
「……来る」
「来る?」
俺たちはなにが来るのか判らなかった。
けれど遠くから走行音がこちらに近付いているのを聞いて理解した。
高機動車だ。それも先ほどの様に1台だけではない。
1、2、3……10台もの高機動車が2列になってこちらに向かっている。
「え、あれ全部……」
「GRのものだね。とりあえず今回のミッションは兵器の破壊が目的だから……ここはアタシたちが引き受けるよ。君たちは先に行って。どう?七菜、やれそう?」
「……はい」
湖城先輩の眼がこちらへと走行する車輌を捉える。
彼女はそのまま銃のトリガーを引いた。
1発の銃弾が打ち出され、先頭を走る車輌のタイヤを撃ち抜いた。
瞬間車輌がバランスを崩し、近くのビルへと突っ込む。
「さぁ、ここは先輩たちに任せて先に行って!」
「……行くわよ、大和」
「ああ。頑張って下さい!」
サイレント・カプリチオは4人の部隊だが……相手は数十人はいる。
たった4人だけで全員を相手にできるのか、と疑問に思ったが俺たちはこの場を彼女たちに任せて先に進む。
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