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濫觴の四月[April of Beginning]
Mission34 覚醒める刃
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紙越町イージス管轄地区、イージス学園学園長室──
対テロ戦闘員養成学校であるイージス学園の長、宇治橋礼子は1人の女性と向き合う様な形でソファに座っていた。
「“エクセリクシチップ”を搭載した武器はどういうわけか使用者の行動原理に応じて武器に力を与える……」
そう言うとソファから立ち上がり、自身の事務机の後ろにある窓の側へと歩いていく。
そこからは管轄地区全体が見渡せる。
窓外の景色へと視線をやりながら宇治橋は町の遠くで藍色に輝く閃光を確認した。
「……東条先生、あなたの弟さんの行動原理は?」
その閃光を見つめながら彼女は部屋にいるもう1人の女性、東条仙に問うた。
「“奪還”です」
「奪還?」
「ええ。この町と平和……奪われたもの全てを奪還するために彼は、大和は戦っているんです」
町を覆う様な曇天、それを切り裂く様な藍の閃光が更に輝きを増していく。
それは遠くから目視でも判るほどだった。
「あの閃光……あれは東条君によるものでしょう。あれだけ大きなエネルギー……相当な行動原理を抱かないと……」
「彼の町を取り戻すという想いの強さは人一倍でしょうから、優秀な戦闘員になってくれると思ったので学園長には“オメガチップ”の搭載許可を貰ったんです。彼の想いは町を取り戻すための刃になるだろうから……」
「奪還、ですか。彼ならば過去のイージスも取り戻して……いや」
なんでもありません、と言いかけていた言葉を飲み込む。
その表情はどこか悲愴感を漂わせていた。
「……祈りましょう。彼らが神の名を持つ兵器に勝利することを」
「ええ」
しばらくの間、学園長室で2人は彼らの勝利を祈った。
その祈りに応える様に紫電が空へと素早く伸び、町を囲む壁の向こうを一瞬照らした。
◇
「これは……」
俺は地に背をつけたままその刃を慎重に握った。
〈まさか……その武器は……!〉
〈“エクセリクシチップ”を搭載しているのか……!?〉
直巳と神崎さんが驚いている様だった。
エクセリクシチップ……?一体なんのことだろう。
俺は刀身が淡い藍色に輝いている脇差を手に無理やり立ち上がった。
(よく判らないけど……こんなとこで倒れてる場合じゃない……ッ!)
立ち上がった瞬間に全身に鋭い痛みが叩きつけられる。
まるで木の棍棒で殴られたかの様だ。攻撃によるダメージは思っている以上のものの様だ。
けれど俺はそんな痛みに若干顔を歪めつつも、脇差を手に駆けていった。
「うおおおお──ッ!」
走ると全身が揺れ、鋭い痛みが身体中を這い回る。
そんな痛みを押さえつける様に俺は叫びながらタケミカヅチへの距離を詰めていく。
タケミカヅチもそんな俺の動きを警戒したのか剣を振り上げる。
「させないよッ!」
「っ!」
俺へと剣が振り下ろされる前にレイが雷の剣を自身の刀で受け止める。
雷は本来形のないもののはずだがどういうわけかレイの刀によって受け止められていた。
「ヤマトっ!倒してっ!」
「レイ……!判った!」
レイが自身の身体の数十倍はあろうその巨大な剣を刀一本で受け止めている間に俺はタケミカヅチの足元へとやってくる。
そんな時、俺の身体が突然宙へと浮かんだ。
「森さんっ!」
森さんが俺に抱きついている。
彼女の腰にある機械からはワイヤーが伸びている。
その先端は直巳たちの乗っているヘリの底部に突き刺さっている。
〈足元を切っても軽微なダメージしか与えられないだろう。狙うべきはその頭部だ〉
「うん。だから東条くん、行ってきて!」
森さんが俺を抱く両の腕をぱっと放す。
──俺が宙に浮かんだのはワイヤーをヘリの底部に放った森さんが俺に抱きついていたからだ。
つまり俺は十数メートルの高さから落下することになる。
「うわああああああっ!」
声にならない悲鳴をあげる。
自分の身体が重力に従って勢いよく地面へと降下していく。
落下傘なしの降下だ。数十メートルの高さとはいえ、落ちればあの世行き、よくて大怪我だろう。
森さんはワイヤーによってヘリの底部にぶら下がったままこちらを見ている。
そして俺の身体が落下し、そのままタケミカヅチへと接近した瞬間──
「はああああっ!」
──その頭と身体を繋ぐ頸部へと横一文字を叩き込む。
すると先ほどまで堅牢な装甲で難儀していたというのにその首は驚くほどに脆く、一刀で頭と胴の2つに分かれた。
瞬間、タケミカヅチの紫に輝く輪光は輝きを失い黒く、右の掌に握っていた雷の剣も空間に吸い込まれる様にして消えていった。
……そして俺はそのまま地面への落下を続けることになる。
「うわあああああ──って、あれ?」
地面に衝突する前に落下は止められる。
そして俺の身体に右腕を回し、支える者がいた。
「……やれやれ、大人しそうな見た目とは裏腹に空中で手放すなんて随分と恐ろしいことをするわね、森さんは」
「渚……!」
彼女は片腕で俺を支え、左腕でワイヤーを放つ銃を握っていた。
そのワイヤーの先端はというと倒れかけているタケミカヅチの身体だ。
俺たちはそのままブランコの様にして、地面に着地する。
「……そういや女の子がそう簡単に男に触って大丈夫なの?」
「なっ……!?そ、そういえばそうだったわね……」
(敵を倒すことで完全に忘れていたわ……!)
俺がそう言うと渚は頬を赤らめる。
それもそうだろう。抵抗がないわけがない。俺もあるのだから。
「?なんのこと?」
けれどいつの間にかヘリの底部から降りてきていた森さんは頬を赤く染める様子はない。どうやらそういったことは気にしない様だ。彼女の純真さが窺える。
頭を失ったタケミカヅチの胴体が地面に倒れる。アスファルトを砕き、砂塵を舞い上げる。
「やったね、ヤマトっ!」
俺の背後からレイがそう言って抱きついてくる。
「うわっと!だからそう簡単に……」
言いかけたが天真爛漫な性格の彼女のことだ。そんなこと気にしていないだろう。
「ごめんね、東条くん。いきなり放して……」
「いいけど、中々心臓に悪かったよ……今度やる時は直前に教えてよ?」
苦笑いを浮かべ、「はは……ごめん」と言う森さん。
渚の言う通り、大人しそうな彼女がするとは思えない行動だったから余計に驚いた。
「……驚いた」
「ええ。まさか神機を撃破するなんて……」
そんな俺たちのやり取りを少し遠くで見る者がいた。
サイレント・トラップとセイクリッドワルツの隊長2人だ。
2人はのそりと立ち上がると俺たちを見つめる。
〈うん、驚いたね〉
「……あんま驚いてなさそうだね、拓海ちゃん」
「幼馴染……でしたっけ。こうなるって判ったんですか?」
藍川先輩とルーチェさんがそう拓海姉に問うた。
〈まあね。どうにかするって思ってたからね〉
「本当にですか?やられそうな時、思い切り彼の名前を叫んでいましたけれど」
〈あ、あれは……!やられそうになれば誰だって叫ぶでしょ!〉
そんな拓海姉のセリフを聞いてふふっと笑う2人。
強大な敵を倒した俺たちは勝利の空気に身を任せ、すっかり油断しきっていた。
そんな時だった。
〈え、誰……!?なにを──〉
突然無線機の向こう側でバキリとなにかが叩きつけられる様な音が響き渡った。
対テロ戦闘員養成学校であるイージス学園の長、宇治橋礼子は1人の女性と向き合う様な形でソファに座っていた。
「“エクセリクシチップ”を搭載した武器はどういうわけか使用者の行動原理に応じて武器に力を与える……」
そう言うとソファから立ち上がり、自身の事務机の後ろにある窓の側へと歩いていく。
そこからは管轄地区全体が見渡せる。
窓外の景色へと視線をやりながら宇治橋は町の遠くで藍色に輝く閃光を確認した。
「……東条先生、あなたの弟さんの行動原理は?」
その閃光を見つめながら彼女は部屋にいるもう1人の女性、東条仙に問うた。
「“奪還”です」
「奪還?」
「ええ。この町と平和……奪われたもの全てを奪還するために彼は、大和は戦っているんです」
町を覆う様な曇天、それを切り裂く様な藍の閃光が更に輝きを増していく。
それは遠くから目視でも判るほどだった。
「あの閃光……あれは東条君によるものでしょう。あれだけ大きなエネルギー……相当な行動原理を抱かないと……」
「彼の町を取り戻すという想いの強さは人一倍でしょうから、優秀な戦闘員になってくれると思ったので学園長には“オメガチップ”の搭載許可を貰ったんです。彼の想いは町を取り戻すための刃になるだろうから……」
「奪還、ですか。彼ならば過去のイージスも取り戻して……いや」
なんでもありません、と言いかけていた言葉を飲み込む。
その表情はどこか悲愴感を漂わせていた。
「……祈りましょう。彼らが神の名を持つ兵器に勝利することを」
「ええ」
しばらくの間、学園長室で2人は彼らの勝利を祈った。
その祈りに応える様に紫電が空へと素早く伸び、町を囲む壁の向こうを一瞬照らした。
◇
「これは……」
俺は地に背をつけたままその刃を慎重に握った。
〈まさか……その武器は……!〉
〈“エクセリクシチップ”を搭載しているのか……!?〉
直巳と神崎さんが驚いている様だった。
エクセリクシチップ……?一体なんのことだろう。
俺は刀身が淡い藍色に輝いている脇差を手に無理やり立ち上がった。
(よく判らないけど……こんなとこで倒れてる場合じゃない……ッ!)
立ち上がった瞬間に全身に鋭い痛みが叩きつけられる。
まるで木の棍棒で殴られたかの様だ。攻撃によるダメージは思っている以上のものの様だ。
けれど俺はそんな痛みに若干顔を歪めつつも、脇差を手に駆けていった。
「うおおおお──ッ!」
走ると全身が揺れ、鋭い痛みが身体中を這い回る。
そんな痛みを押さえつける様に俺は叫びながらタケミカヅチへの距離を詰めていく。
タケミカヅチもそんな俺の動きを警戒したのか剣を振り上げる。
「させないよッ!」
「っ!」
俺へと剣が振り下ろされる前にレイが雷の剣を自身の刀で受け止める。
雷は本来形のないもののはずだがどういうわけかレイの刀によって受け止められていた。
「ヤマトっ!倒してっ!」
「レイ……!判った!」
レイが自身の身体の数十倍はあろうその巨大な剣を刀一本で受け止めている間に俺はタケミカヅチの足元へとやってくる。
そんな時、俺の身体が突然宙へと浮かんだ。
「森さんっ!」
森さんが俺に抱きついている。
彼女の腰にある機械からはワイヤーが伸びている。
その先端は直巳たちの乗っているヘリの底部に突き刺さっている。
〈足元を切っても軽微なダメージしか与えられないだろう。狙うべきはその頭部だ〉
「うん。だから東条くん、行ってきて!」
森さんが俺を抱く両の腕をぱっと放す。
──俺が宙に浮かんだのはワイヤーをヘリの底部に放った森さんが俺に抱きついていたからだ。
つまり俺は十数メートルの高さから落下することになる。
「うわああああああっ!」
声にならない悲鳴をあげる。
自分の身体が重力に従って勢いよく地面へと降下していく。
落下傘なしの降下だ。数十メートルの高さとはいえ、落ちればあの世行き、よくて大怪我だろう。
森さんはワイヤーによってヘリの底部にぶら下がったままこちらを見ている。
そして俺の身体が落下し、そのままタケミカヅチへと接近した瞬間──
「はああああっ!」
──その頭と身体を繋ぐ頸部へと横一文字を叩き込む。
すると先ほどまで堅牢な装甲で難儀していたというのにその首は驚くほどに脆く、一刀で頭と胴の2つに分かれた。
瞬間、タケミカヅチの紫に輝く輪光は輝きを失い黒く、右の掌に握っていた雷の剣も空間に吸い込まれる様にして消えていった。
……そして俺はそのまま地面への落下を続けることになる。
「うわあああああ──って、あれ?」
地面に衝突する前に落下は止められる。
そして俺の身体に右腕を回し、支える者がいた。
「……やれやれ、大人しそうな見た目とは裏腹に空中で手放すなんて随分と恐ろしいことをするわね、森さんは」
「渚……!」
彼女は片腕で俺を支え、左腕でワイヤーを放つ銃を握っていた。
そのワイヤーの先端はというと倒れかけているタケミカヅチの身体だ。
俺たちはそのままブランコの様にして、地面に着地する。
「……そういや女の子がそう簡単に男に触って大丈夫なの?」
「なっ……!?そ、そういえばそうだったわね……」
(敵を倒すことで完全に忘れていたわ……!)
俺がそう言うと渚は頬を赤らめる。
それもそうだろう。抵抗がないわけがない。俺もあるのだから。
「?なんのこと?」
けれどいつの間にかヘリの底部から降りてきていた森さんは頬を赤く染める様子はない。どうやらそういったことは気にしない様だ。彼女の純真さが窺える。
頭を失ったタケミカヅチの胴体が地面に倒れる。アスファルトを砕き、砂塵を舞い上げる。
「やったね、ヤマトっ!」
俺の背後からレイがそう言って抱きついてくる。
「うわっと!だからそう簡単に……」
言いかけたが天真爛漫な性格の彼女のことだ。そんなこと気にしていないだろう。
「ごめんね、東条くん。いきなり放して……」
「いいけど、中々心臓に悪かったよ……今度やる時は直前に教えてよ?」
苦笑いを浮かべ、「はは……ごめん」と言う森さん。
渚の言う通り、大人しそうな彼女がするとは思えない行動だったから余計に驚いた。
「……驚いた」
「ええ。まさか神機を撃破するなんて……」
そんな俺たちのやり取りを少し遠くで見る者がいた。
サイレント・トラップとセイクリッドワルツの隊長2人だ。
2人はのそりと立ち上がると俺たちを見つめる。
〈うん、驚いたね〉
「……あんま驚いてなさそうだね、拓海ちゃん」
「幼馴染……でしたっけ。こうなるって判ったんですか?」
藍川先輩とルーチェさんがそう拓海姉に問うた。
〈まあね。どうにかするって思ってたからね〉
「本当にですか?やられそうな時、思い切り彼の名前を叫んでいましたけれど」
〈あ、あれは……!やられそうになれば誰だって叫ぶでしょ!〉
そんな拓海姉のセリフを聞いてふふっと笑う2人。
強大な敵を倒した俺たちは勝利の空気に身を任せ、すっかり油断しきっていた。
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