41 / 92
兵革の五月[May of Struggle]
Mission3 湖城家①
しおりを挟む
「さて……着いたわね」
乗り物酔いで永劫とも思える苦しさとの戦いに終わりを告げる言葉が車内に響く。
その声を聞いた瞬間に俺と北見さんは車から真っ先に降りた。
「はぁ~……空気が美味しい……!」
「ボクたちは戦いに勝った……!」
精一杯肺を澄み切った空気で満たそうとする。
そうすると酔いが徐々に和らいでいく。
「はは……よかったね」
「マジで辛そうにしてたもんな。2人ともよかったな」
拓海姉と直巳も車から降りて、空気を全力で吸っている俺たちにそう言った。
「でも、確かにここの空気、美味しいかも……」
凛華がそう言う。
あまり酔っていなかった彼女がそう言うのだからきっとここの空気は普通に美味しいのだろう。
そんな時、俺たちの乗っていた車の前方に停めてある黒ワゴン車から黒髪青眼の白皙の美少女が降りてくる。
「あれ、東条くんも一颯ちゃんも顔色が悪いね。酔ったの?」
彼女──森美波は心配そうな目でこちらを見ている。
俺たち全員で
「ああ……ちょっと、ね……」
「前から見てたよ、ヤマト。メチャクチャな運転だったね」
「ああ。あれは酔って当然だろうな」
森さんに続いてレイと神崎さんも車から降りる。
──俺たちは全員合わせて13人だ。
湖城先生はこの人数を乗せられる車を手配しようとしたらしいができずに二つに分かれて車に乗ることになった。
前の黒ワゴン車を運転していたのは湖城先生だ。彼女の運転は至って普通だった。その証拠に降りてきた人の中で酔っていそうな人間は誰1人としていない。
「さて、先に行っていてくれ。荷物を持ったらすぐに行く。七菜、彼らの案内を任せた」
黒ワゴンの運転席から降りた1人の女性がそう言った。
黒いワークキャップにサングラス、迷彩柄のジャケットと黒タンクトップ、ジャケット同様迷彩柄のパンツ、タクティカルブーツ……そして首にかけられたドッグタグ。
その装いはまるで鬼教官だ。弾帯を前で交差させる様に巻いて、両手にサブマシンガンでも持たせれば似合いそうだ。
湖城先輩に聞けば「あれが柚ちゃん(湖城先生の下の名前)の私服」だそうだ。
「……判った」
こくりと頷くと湖城先輩は俺たちに「……ついてきて」と短く言って先導する様に駐車場から歩き始める。
彼女は黒い長髪を後ろで結っており、歩く度にそれが揺れるのが見えた。
「……大きいですね」
俺は数十メートル先に見える家を見てそう言った。
湖城先輩は歩きながらちらりと目線をやる。
「……田舎だし、昔の家だからね」
「や、七菜……田舎の家でもここまで大きな家は滅多にないと思うよ」
藍川先輩がそう言う。
若干ひび割れている築地塀に囲われる様にして、その中央に鎮座している純和風の邸宅──
彼女曰く湖城家の所有する土地の坪数は3000坪くらいあるらしい。所有している土地を惜しみなく広々と使って建てられたのであろう家は開いた口が塞がらなくなるほどに大きい。
湖城家は武術の名家だと聞いてはいたがここまで大きな家だとは思わなかった。
家の大きさも敷地の広さも他の家に比べて遥かに凌駕している。
「へぇ……ニッポンの家ってこうなってるんだ」
家の中に入るとレイは辺りを興味深そうに見回しながらそう言った。
「そういえばレイちゃんは日本の文化が好きなんだっけ」
「うん。ニッポンのカルチャーって面白いからね。マンガとかアニメとかも。ニッポンの建物とかの歴史を感じさせる感じも好きだよ」
レイはそう嬉々として言う。
日本人としては日本の文化を喜んでもらえるのは嬉しいことだ。
「……ここが寝室ね。ここの襖で男女に分けられる」
そう言って左右端に寄せられている襖を軽く動かしてみせる。
「えー?別に俺ぁ、雑魚寝でもいいですけど?」
「君の様な禽獣と同じ寝室で寝られるものか」
神崎さんがそう氷点下の視線を向け、いかにも「無理だ」と言う様な表情を浮かべる。
禽獣って。辛辣すぎる。
「じょ、冗談だって……ンな、冷たい目で見るなって」
「冗談には見せなかったがな。……まぁいい」
「……ああそうだ。伯母さんたちが今ご飯作ってるから、手伝ってくる」
湖城先輩はそう言って部屋から出て行く。
しかし部屋から出て1歩目で止まって、俺たちの方へと振り向く。
「……できたら呼ぶね」
「あ、アタシも手伝うよ。七菜」
「……大丈夫です。お客さんに手伝わせるわけにはいきませんから」
そう丁寧に断ると彼女はそのまま廊下を歩いて行った。
「七菜、張り切ってたなぁ」
その後ろ姿を見て、藍川先輩はそう言った。
「え、そうなんですか?」
とてもそうは見えなかった。彼女はあまり表情を変えたりしないから。
けれど今俺たちの中で付き合いが最も長いのは藍川先輩だろう。
そんな彼女なら湖城先輩の機微も判るのだろう。
「うん。長年悪かった両家の仲が改善するかもしれないせっかくのチャンスが巡ってきたんだもん。そりゃあ嬉しいし、改善するために張り切りもするよ」
「それもそうか……良くなるといいですね」
「うん。それでとりあえず……暇だし、昼食ができるまでなにしよっか?」
「あ、それならあたしトランプ持ってきてます」
レイはそう言って鞄からトランプを取り出す。
「それじゃあ彼女が戻ってくるまで時間を潰せそうね」
「よーし、いっちょゲームに興じるとしますか」
俺たちは様々なトランプゲームでしばらくの間暇を潰していた。
大富豪、神経衰弱、ページワン……皆様々なトランプゲームについて知っていた。
──そしてババ抜き。
「あっ、またババ……!」
ジョーカーを引いてしまったのかレイは「しまった」という様な表情を浮かべる。
「そういうのは引いても顔に出さない方がいいんじゃなかったかしら?」
「……レイには無理な話だ」
渚の指摘に神崎さんがそう言ってくすりと微笑む。
確かにレイは隠し事とかが向いていないタイプの人間だ。
「それにしても姉さんと神崎さん、結構強いね……」
「まぁこれでも科学者の端くれだから。人情の機微に触れるのは得意なのよ」
「ああ。瞬き、癖、目線……それらから選ぶべきカードを判断することは容易だ」
事実、彼女たちはこれまでに一度もジョーカーを引いていない。
最初からジョーカーを持っていたとしても上手く誘導し、相手に引かせている。
彼女たち2人がババ抜き世界大会にでも行ったなら余裕で大勝を博せるだろう。
「……失礼いたします。お食事が出来上がりました」
着物に身を包んだ女性が静かに障子を開けて、ゲームに興じていた俺たちにそう報告をする。
湖城家の女中さんだ。この家に入ってから既に数人見かけている。
「ああはい。判りました」
「ではお茶の間まで案内させていただきます」
俺たちは準備をすると女中さんに先導されてお茶の間まで行く。
……それにしても広い家だ。どこになんの部屋があるのか覚えられない。
もしトイレにでも行ったなら元の場所に戻って来られなさそうだ。それくらいに広い。
「……あ、来たね」
茶の間に入ると既に湖城先生と先輩、2人とも座っていた。
そして2人以外に食卓を囲んでいる人々も俺たちの姿を見るなりぺこりと軽く会釈をした。
俺たちもそれに応じる様に会釈をする。
「うむ、これで全員揃ったな。とりあえず君たちも座ってくれ」
乗り物酔いで永劫とも思える苦しさとの戦いに終わりを告げる言葉が車内に響く。
その声を聞いた瞬間に俺と北見さんは車から真っ先に降りた。
「はぁ~……空気が美味しい……!」
「ボクたちは戦いに勝った……!」
精一杯肺を澄み切った空気で満たそうとする。
そうすると酔いが徐々に和らいでいく。
「はは……よかったね」
「マジで辛そうにしてたもんな。2人ともよかったな」
拓海姉と直巳も車から降りて、空気を全力で吸っている俺たちにそう言った。
「でも、確かにここの空気、美味しいかも……」
凛華がそう言う。
あまり酔っていなかった彼女がそう言うのだからきっとここの空気は普通に美味しいのだろう。
そんな時、俺たちの乗っていた車の前方に停めてある黒ワゴン車から黒髪青眼の白皙の美少女が降りてくる。
「あれ、東条くんも一颯ちゃんも顔色が悪いね。酔ったの?」
彼女──森美波は心配そうな目でこちらを見ている。
俺たち全員で
「ああ……ちょっと、ね……」
「前から見てたよ、ヤマト。メチャクチャな運転だったね」
「ああ。あれは酔って当然だろうな」
森さんに続いてレイと神崎さんも車から降りる。
──俺たちは全員合わせて13人だ。
湖城先生はこの人数を乗せられる車を手配しようとしたらしいができずに二つに分かれて車に乗ることになった。
前の黒ワゴン車を運転していたのは湖城先生だ。彼女の運転は至って普通だった。その証拠に降りてきた人の中で酔っていそうな人間は誰1人としていない。
「さて、先に行っていてくれ。荷物を持ったらすぐに行く。七菜、彼らの案内を任せた」
黒ワゴンの運転席から降りた1人の女性がそう言った。
黒いワークキャップにサングラス、迷彩柄のジャケットと黒タンクトップ、ジャケット同様迷彩柄のパンツ、タクティカルブーツ……そして首にかけられたドッグタグ。
その装いはまるで鬼教官だ。弾帯を前で交差させる様に巻いて、両手にサブマシンガンでも持たせれば似合いそうだ。
湖城先輩に聞けば「あれが柚ちゃん(湖城先生の下の名前)の私服」だそうだ。
「……判った」
こくりと頷くと湖城先輩は俺たちに「……ついてきて」と短く言って先導する様に駐車場から歩き始める。
彼女は黒い長髪を後ろで結っており、歩く度にそれが揺れるのが見えた。
「……大きいですね」
俺は数十メートル先に見える家を見てそう言った。
湖城先輩は歩きながらちらりと目線をやる。
「……田舎だし、昔の家だからね」
「や、七菜……田舎の家でもここまで大きな家は滅多にないと思うよ」
藍川先輩がそう言う。
若干ひび割れている築地塀に囲われる様にして、その中央に鎮座している純和風の邸宅──
彼女曰く湖城家の所有する土地の坪数は3000坪くらいあるらしい。所有している土地を惜しみなく広々と使って建てられたのであろう家は開いた口が塞がらなくなるほどに大きい。
湖城家は武術の名家だと聞いてはいたがここまで大きな家だとは思わなかった。
家の大きさも敷地の広さも他の家に比べて遥かに凌駕している。
「へぇ……ニッポンの家ってこうなってるんだ」
家の中に入るとレイは辺りを興味深そうに見回しながらそう言った。
「そういえばレイちゃんは日本の文化が好きなんだっけ」
「うん。ニッポンのカルチャーって面白いからね。マンガとかアニメとかも。ニッポンの建物とかの歴史を感じさせる感じも好きだよ」
レイはそう嬉々として言う。
日本人としては日本の文化を喜んでもらえるのは嬉しいことだ。
「……ここが寝室ね。ここの襖で男女に分けられる」
そう言って左右端に寄せられている襖を軽く動かしてみせる。
「えー?別に俺ぁ、雑魚寝でもいいですけど?」
「君の様な禽獣と同じ寝室で寝られるものか」
神崎さんがそう氷点下の視線を向け、いかにも「無理だ」と言う様な表情を浮かべる。
禽獣って。辛辣すぎる。
「じょ、冗談だって……ンな、冷たい目で見るなって」
「冗談には見せなかったがな。……まぁいい」
「……ああそうだ。伯母さんたちが今ご飯作ってるから、手伝ってくる」
湖城先輩はそう言って部屋から出て行く。
しかし部屋から出て1歩目で止まって、俺たちの方へと振り向く。
「……できたら呼ぶね」
「あ、アタシも手伝うよ。七菜」
「……大丈夫です。お客さんに手伝わせるわけにはいきませんから」
そう丁寧に断ると彼女はそのまま廊下を歩いて行った。
「七菜、張り切ってたなぁ」
その後ろ姿を見て、藍川先輩はそう言った。
「え、そうなんですか?」
とてもそうは見えなかった。彼女はあまり表情を変えたりしないから。
けれど今俺たちの中で付き合いが最も長いのは藍川先輩だろう。
そんな彼女なら湖城先輩の機微も判るのだろう。
「うん。長年悪かった両家の仲が改善するかもしれないせっかくのチャンスが巡ってきたんだもん。そりゃあ嬉しいし、改善するために張り切りもするよ」
「それもそうか……良くなるといいですね」
「うん。それでとりあえず……暇だし、昼食ができるまでなにしよっか?」
「あ、それならあたしトランプ持ってきてます」
レイはそう言って鞄からトランプを取り出す。
「それじゃあ彼女が戻ってくるまで時間を潰せそうね」
「よーし、いっちょゲームに興じるとしますか」
俺たちは様々なトランプゲームでしばらくの間暇を潰していた。
大富豪、神経衰弱、ページワン……皆様々なトランプゲームについて知っていた。
──そしてババ抜き。
「あっ、またババ……!」
ジョーカーを引いてしまったのかレイは「しまった」という様な表情を浮かべる。
「そういうのは引いても顔に出さない方がいいんじゃなかったかしら?」
「……レイには無理な話だ」
渚の指摘に神崎さんがそう言ってくすりと微笑む。
確かにレイは隠し事とかが向いていないタイプの人間だ。
「それにしても姉さんと神崎さん、結構強いね……」
「まぁこれでも科学者の端くれだから。人情の機微に触れるのは得意なのよ」
「ああ。瞬き、癖、目線……それらから選ぶべきカードを判断することは容易だ」
事実、彼女たちはこれまでに一度もジョーカーを引いていない。
最初からジョーカーを持っていたとしても上手く誘導し、相手に引かせている。
彼女たち2人がババ抜き世界大会にでも行ったなら余裕で大勝を博せるだろう。
「……失礼いたします。お食事が出来上がりました」
着物に身を包んだ女性が静かに障子を開けて、ゲームに興じていた俺たちにそう報告をする。
湖城家の女中さんだ。この家に入ってから既に数人見かけている。
「ああはい。判りました」
「ではお茶の間まで案内させていただきます」
俺たちは準備をすると女中さんに先導されてお茶の間まで行く。
……それにしても広い家だ。どこになんの部屋があるのか覚えられない。
もしトイレにでも行ったなら元の場所に戻って来られなさそうだ。それくらいに広い。
「……あ、来たね」
茶の間に入ると既に湖城先生と先輩、2人とも座っていた。
そして2人以外に食卓を囲んでいる人々も俺たちの姿を見るなりぺこりと軽く会釈をした。
俺たちもそれに応じる様に会釈をする。
「うむ、これで全員揃ったな。とりあえず君たちも座ってくれ」
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。
ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。
真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。
引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。
偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。
ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。
優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。
大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。
邪神の祭壇へ無垢な筋肉を生贄として捧ぐ
零
BL
鍛えられた肉体、高潔な魂――
それは選ばれし“供物”の条件。
山奥の男子校「平坂学園」で、新任教師・高尾雄一は静かに歪み始める。
見えない視線、執着する生徒、触れられる肉体。
誇り高き男は、何に屈し、何に縋るのか。
心と肉体が削がれていく“儀式”が、いま始まる。
Amor et odium
佐藤絹恵(サトウ.キヌエ)
ファンタジー
時代は中世ヨーロッパ中期
人々はキリスト教の神を信仰し
神を軸(じく)に生活を送っていた
聖書に書かれている事は
神の御言葉であり絶対
…しかし…
人々は知らない
神が既に人間に興味が無い事を
そして…悪魔と呼ばれる我々が
人間を見守っている事を知らない
近頃
人間の神の信仰が薄れ
聖職者は腐敗し
好き勝手し始めていた
結果…民が餌食の的に…
・
・
・
流石に
卑劣な人間の行いに看過出来ぬ
人間界に干渉させてもらうぞ
サイレント・サブマリン ―虚構の海―
来栖とむ
SF
彼女が追った真実は、国家が仕組んだ最大の嘘だった。
科学技術雑誌の記者・前田香里奈は、謎の科学者失踪事件を追っていた。
電磁推進システムの研究者・水嶋総。彼の技術は、完全無音で航行できる革命的な潜水艦を可能にする。
小与島の秘密施設、広島の地下工事、呉の巨大な格納庫—— 断片的な情報を繋ぎ合わせ、前田は確信する。
「日本政府は、秘密裏に新型潜水艦を開発している」
しかし、その真実を暴こうとする前田に、次々と圧力がかかる。
謎の男・安藤。突然現れた協力者・森川。 彼らは敵か、味方か——
そして8月の夜、前田は目撃する。 海に下ろされる巨大な「何か」を。
記者が追った真実は、国家が仕組んだ壮大な虚構だった。 疑念こそが武器となり、嘘が現実を変える——
これは、情報戦の時代に問う、現代SF政治サスペンス。
【全17話完結】
サディストの私がM男を多頭飼いした時のお話
トシコ
ファンタジー
素人の女王様である私がマゾの男性を飼うのはリスクもありますが、生活に余裕の出来た私には癒しの空間でした。結婚しないで管理職になった女性は周りから見る目も厳しく、私は自分だけの城を作りまあした。そこで私とM男の週末の生活を祖紹介します。半分はノンフィクション、そして半分はフィクションです。
母の下着 タンスと洗濯籠の秘密
MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。
颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。
物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。
しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。
センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。
これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。
どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる