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兵革の五月[May of Struggle]
Mission5 散歩
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「いやー、それにしても食べたね」
「ああ。卓上から溢れんばかりの量だったな。結構食べたと思ったんだがまだ冗談の様に残っていたしな」
食事を終えた俺たちはそんなたわいもない会話をしながら緩やかな坂道を歩いていた。
外を歩いている理由は大したものではなく、食後の散歩だ。
土地勘のない俺たちは湖城先輩の後を歩いている。
「……ああそれなら大丈夫。残った分は夕食だったり、ご近所さんに分けるから」
湖城先輩はそう言う。
けれど近所の人に分けたりしても消費し切れる量には見えなかった。
「あれって全部作ったんですか?」
「うん。女中さんとお母さんたちで作ったんだ。質より量って感じで大味になってなかったかな?」
「いいえ、そんなことはないです。どれも美味しかったですよ」
森さんがそう微笑みを浮かべ、言った。
「……それならよかった」
彼女の言葉にそう安堵の胸を撫でおろした。
そしてとある家の前でその足を止めた。
「……湖城先輩?」
「……少し考え事してたらこんなところまで来ちゃった……」
そう言ってその家を見つめる。
湖城家同様に築地塀で囲われ、その中央に鎮座している純和風の邸宅だ。
その家の規模は間近で見ているため、具体的には判らないが湖城家より少し小さいくらいだろう。
「……この家は?」
俺はそう問うた。
彼女の瞳はその家のみを映しており、俺たちの声など聞こえていない様だった。
「──なにしてるの?」
そんな時だった。
その家から1人の人物が出てきて、そうなにか怪しいものでも見るかの様な目を向けたまま俺たちに問うた。
「あ、いや、別に怪しいことはしてないです……!」
「……レイ、堂々としてた方が怪しまれないわよ」
渚は肘で軽くレイを突き、小声でそう言った。
……いや、今それを言う方が怪しまれないだろうか。
「……家の前で変なことをするのはやめて欲しい」
青年は冷たい瞳をこちらに向けている。
それに思わず萎縮していると突然青年が消えた。
「──っ!?」
「消え──」
ぞくりとした。まるで直接背中を蛇が這っているかの様は寒気に総毛立つ。
突然目の前の青年が消えたかと思ったら次の瞬間には俺の背後に立ち、抱きつく様にして片手で持っていた箒の柄を俺の喉元に当てる。
「──こうすることになるからね」
彼はもう片方の手で柄を捻ると柄の半分から先が地面に落ちて、もう半分から柄の先から白い刃が見える。
仕込み刀というものだ。喉元に刃を突きつけられた俺は動くことを許されずに固まったままでいた。
「──彼を離しなさい」
渚がそう言って狙撃銃を構える。その銃口は勿論青年のこめかみに向けられている。
「ちょ、ちょっとナギサ……!それをやるとややこしいことになっちゃうよ……!」
「……へぇ、彼がどうなってもい──」
青年の意識が一瞬自身に銃口を向けた渚へと向く。
その僅かな隙を突き、勢いよくしゃがんで青年の拘束から逃れる。
「!」
彼は自身の拘束から逃れた俺を見て、すぐに持っていた仕込み刀で俺の喉を貫こうと刺突する。
けれどレイが切っ先が俺に迫ってきたところで抜刀、仕込み刀を弾き飛ばした。
仕込み刀は空中で何度か弧を描きながら飛んでいき、地面に落ちる。
「戦う気かい?そっちがその気なら──」
「待って!」
得物を失った青年が刀を拾わずに素手で構えを取ろうとしたところで誰かがそう制止する。
俺たちの視線は一斉に制止した人物へと向けられる。
「……七菜?」
青年がそう制止した者の名を呼ぶ。
これから繰り広げられる青年との戦いを止めたのは湖城先輩だった。
彼女は構えずに青年の元まで歩み寄る。
「……たぁくん。久し振り」
「……七菜もいたのか。……それでこの人たちは?」
彼は俺たちに怪訝そうな目を向けながら湖城先輩にそう問うた。
「わたしの知り合い」
「ああ、知り合いだったのか。いきなり刃物なんて突き付けて申し訳ない」
彼はそう言って俺に頭を下げた。
「……いや、大丈夫です。それで、あなたは?」
「ああ。僕は流城環、七菜の従兄さ」
彼はそう名乗る。
「湖城先輩の?……って、ことは」
「……うん。湖城家と仲が悪い分家の人」
「ああ。残念なことにね。けど、僕らは普通に従兄妹として交流はある」
そうなのか。確かに見た感じ彼と湖城先輩の仲は悪くなさそうだ。
そうでもないのならば湖城先輩は彼の渾名であろう「たぁくん」とやらで彼のことを呼びはしないはずだ。
「どうやら君たちは流城家と湖城家の関係を知ってるみたいだけど……君たちが会議中の警備を行ってくれる人たちだったのかな?」
彼は箒を拾い上げるとそう問うた。
俺は「はい」と頷くと彼は拾い上げた箒を片手に再び頭を下げた。
「……本当に申し訳ない。警備の人間を雇ったというのは聞いたんだけど顔までは知らなかったからね、それに加えて我が家は会議前ってこともあって少しピリピリしてるのもあって……」
「いや、それなら仕方ないですよ。でも、ピリピリしているならあまり長居はしない方がよさそうですね」
「……それもそっか。それなら行こう。じゃあね、たぁくん」
「……さよなら」
俺たちは流城家の前から去る。
そして湖城家へと戻る途中で俺は彼女に1つ聞いた。
「湖城先輩、湖城家と流城家って……何故仲が悪いんですか?」
言ってから踏み込んだ質問だったか、と思ったが言ったことは取り消せない。
その質問を聞いて湖城先輩は歩く速さを緩めた。
「……うん。君たちには知る権利があるよね」
「あ、いや……すみません、踏み入った質問でしたよね……」
……やはり踏み込んだ質問で答えづらいのだろう。もう少し考えてから発言するべきだった。
そう自省していると彼女は首を横に振った。
「……ううん。わたしが話したいから話すよ」
湖城先輩は一度深呼吸をし、両家の不和の経緯を話し始める。
「ああ。卓上から溢れんばかりの量だったな。結構食べたと思ったんだがまだ冗談の様に残っていたしな」
食事を終えた俺たちはそんなたわいもない会話をしながら緩やかな坂道を歩いていた。
外を歩いている理由は大したものではなく、食後の散歩だ。
土地勘のない俺たちは湖城先輩の後を歩いている。
「……ああそれなら大丈夫。残った分は夕食だったり、ご近所さんに分けるから」
湖城先輩はそう言う。
けれど近所の人に分けたりしても消費し切れる量には見えなかった。
「あれって全部作ったんですか?」
「うん。女中さんとお母さんたちで作ったんだ。質より量って感じで大味になってなかったかな?」
「いいえ、そんなことはないです。どれも美味しかったですよ」
森さんがそう微笑みを浮かべ、言った。
「……それならよかった」
彼女の言葉にそう安堵の胸を撫でおろした。
そしてとある家の前でその足を止めた。
「……湖城先輩?」
「……少し考え事してたらこんなところまで来ちゃった……」
そう言ってその家を見つめる。
湖城家同様に築地塀で囲われ、その中央に鎮座している純和風の邸宅だ。
その家の規模は間近で見ているため、具体的には判らないが湖城家より少し小さいくらいだろう。
「……この家は?」
俺はそう問うた。
彼女の瞳はその家のみを映しており、俺たちの声など聞こえていない様だった。
「──なにしてるの?」
そんな時だった。
その家から1人の人物が出てきて、そうなにか怪しいものでも見るかの様な目を向けたまま俺たちに問うた。
「あ、いや、別に怪しいことはしてないです……!」
「……レイ、堂々としてた方が怪しまれないわよ」
渚は肘で軽くレイを突き、小声でそう言った。
……いや、今それを言う方が怪しまれないだろうか。
「……家の前で変なことをするのはやめて欲しい」
青年は冷たい瞳をこちらに向けている。
それに思わず萎縮していると突然青年が消えた。
「──っ!?」
「消え──」
ぞくりとした。まるで直接背中を蛇が這っているかの様は寒気に総毛立つ。
突然目の前の青年が消えたかと思ったら次の瞬間には俺の背後に立ち、抱きつく様にして片手で持っていた箒の柄を俺の喉元に当てる。
「──こうすることになるからね」
彼はもう片方の手で柄を捻ると柄の半分から先が地面に落ちて、もう半分から柄の先から白い刃が見える。
仕込み刀というものだ。喉元に刃を突きつけられた俺は動くことを許されずに固まったままでいた。
「──彼を離しなさい」
渚がそう言って狙撃銃を構える。その銃口は勿論青年のこめかみに向けられている。
「ちょ、ちょっとナギサ……!それをやるとややこしいことになっちゃうよ……!」
「……へぇ、彼がどうなってもい──」
青年の意識が一瞬自身に銃口を向けた渚へと向く。
その僅かな隙を突き、勢いよくしゃがんで青年の拘束から逃れる。
「!」
彼は自身の拘束から逃れた俺を見て、すぐに持っていた仕込み刀で俺の喉を貫こうと刺突する。
けれどレイが切っ先が俺に迫ってきたところで抜刀、仕込み刀を弾き飛ばした。
仕込み刀は空中で何度か弧を描きながら飛んでいき、地面に落ちる。
「戦う気かい?そっちがその気なら──」
「待って!」
得物を失った青年が刀を拾わずに素手で構えを取ろうとしたところで誰かがそう制止する。
俺たちの視線は一斉に制止した人物へと向けられる。
「……七菜?」
青年がそう制止した者の名を呼ぶ。
これから繰り広げられる青年との戦いを止めたのは湖城先輩だった。
彼女は構えずに青年の元まで歩み寄る。
「……たぁくん。久し振り」
「……七菜もいたのか。……それでこの人たちは?」
彼は俺たちに怪訝そうな目を向けながら湖城先輩にそう問うた。
「わたしの知り合い」
「ああ、知り合いだったのか。いきなり刃物なんて突き付けて申し訳ない」
彼はそう言って俺に頭を下げた。
「……いや、大丈夫です。それで、あなたは?」
「ああ。僕は流城環、七菜の従兄さ」
彼はそう名乗る。
「湖城先輩の?……って、ことは」
「……うん。湖城家と仲が悪い分家の人」
「ああ。残念なことにね。けど、僕らは普通に従兄妹として交流はある」
そうなのか。確かに見た感じ彼と湖城先輩の仲は悪くなさそうだ。
そうでもないのならば湖城先輩は彼の渾名であろう「たぁくん」とやらで彼のことを呼びはしないはずだ。
「どうやら君たちは流城家と湖城家の関係を知ってるみたいだけど……君たちが会議中の警備を行ってくれる人たちだったのかな?」
彼は箒を拾い上げるとそう問うた。
俺は「はい」と頷くと彼は拾い上げた箒を片手に再び頭を下げた。
「……本当に申し訳ない。警備の人間を雇ったというのは聞いたんだけど顔までは知らなかったからね、それに加えて我が家は会議前ってこともあって少しピリピリしてるのもあって……」
「いや、それなら仕方ないですよ。でも、ピリピリしているならあまり長居はしない方がよさそうですね」
「……それもそっか。それなら行こう。じゃあね、たぁくん」
「……さよなら」
俺たちは流城家の前から去る。
そして湖城家へと戻る途中で俺は彼女に1つ聞いた。
「湖城先輩、湖城家と流城家って……何故仲が悪いんですか?」
言ってから踏み込んだ質問だったか、と思ったが言ったことは取り消せない。
その質問を聞いて湖城先輩は歩く速さを緩めた。
「……うん。君たちには知る権利があるよね」
「あ、いや……すみません、踏み入った質問でしたよね……」
……やはり踏み込んだ質問で答えづらいのだろう。もう少し考えてから発言するべきだった。
そう自省していると彼女は首を横に振った。
「……ううん。わたしが話したいから話すよ」
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