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兵革の五月[May of Struggle]
Mission37 ベアトリクス入隊
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──翌日
俺たちは自分たち以外いない静かな教室に集まっていた。
俺が部隊の皆に放課後に集まる様に言っておいたからだ。
そして俺が皆を集めた理由はベアを部隊に入れるか否かを聞くためだ。
「……で、スプリンガーさん。あなたが密入国をした理由は家出をしたから……って、どういうことなのかしら」
渚は腕を組みながらそうベアへと問うた。
「そのままの意味ですわ。家出をして、逃げるために日本に来たんですの」
彼女は問いに答えた。
「海を越えた家出……ってことでいいのかしら」
「ええ。ドイツから日本……半日くらいかかりましたわ」
「国を超えた家出なんて初めて聞いたよ……」
家出のスケールが巨大すぎる。
あまりのスケールの大きさに思わず呆れてしまうほどだ。
「それで、なんであなたは家出を?」
「……居心地が悪かったんですのよ」
「居心地が悪い?」
ええ、とベアが頷く。
そして一度深呼吸をすると言った。
「……わたくしの両親は七年前のあの日、逝ったんですの」
七年前のあの日……2020年のオリンピックか。
五万人もの生命が一瞬にして空へと消えていった人類史上最悪のテロだ。
彼女の両親もあのテロの被害者だったのか。
「二人が身を盾にして守ってくれたお陰でわたくしは助かった。そしてわたくしは叔父様の家に引き取られたんですの」
「引き取られたんならよかったんじゃあ……」
「ええ、叔父様はわたくしを実の子と同じくらいに可愛がってくれましたわ」
でも、と一瞬表情を曇らせた。
「そんな優しさに触れていると……時々寂しくなるんですの。叔父様には申し訳ないんですけれど……」
「…………」
彼女の寂しさの原因は亡くなった両親だろう。
大切な人を失って負った傷を癒すための手段を持たない俺たちはなにも言えずに黙ってしまった。
「……うん、それなら仕方ないよね」
俺たちの間を流れる沈黙を破ったのは森さんだった。
彼女は一度目を伏せてから渚の方を向いて言った。
「渚ちゃん、もうベアちゃんは充分話したと思う。だから……」
「……そうね。ちゃんとした理由みたいだしね」
「……お心遣いありがとう」
ベアはそう短く礼を言った。
「さて、それじゃあ……」
最低限の素性を知った俺は彼女へと手を差し出した。
「ようこそ、俺たちの部隊へ」
「ええ。こちらこそお願いしますわ」
彼女は差し出した手に手を重ね、握った。
こうして俺たちの部隊に新たな仲間が加わり、俺たちの奪還譚は進められていく。
◇
──東京、とある駅
無数の人が行き交うその場所を一人の少女が歩いていた。
「大和クン、元気にしてるかな……」
少女が言葉にし、脳裏に浮かべるのは他でもない東条大和の姿だ。
彼は壮健であるか、どの様にして日々を過ごしているのか……彼女が考えていることは全て彼に関係したことだ。
「駅まで来たけど……迎えの人っぽいのはいないなぁ……」
どこだろう。辺りを見回してみる。
「伯父さんに連絡したら迎えを送るって言ってたけど……」
けれど迎えに来たらしき者はどこにもいない。
いないのならどうしようか。そう考えていた時だった。
「あなたが───様ですね」
「っ!」
突然背後から声をかけられ、彼女は咄嗟に振り向いた。
するとそこにはスーツに身を包んだ女性が立っていた。
「なんで私の名前を知って……」
「明慶様から貴女の警備を依頼されたので」
「伯父さんが……?っていうか、警備って……」
大袈裟じゃないだろうか。
そう言いかけたが女性は、
「大袈裟ではありませんよ」
と心の中を読んだかの様に答えた。
「紙越町は今危険な状態にあるんです。警備なしで行こうものなら墓標が立つことになります」
「ええ……?」
「詳しいことは駅ビル屋上に停めてあるヘリ機内で話します。ついて来て下さい」
そう言って女性は先導する様に歩き始める。
彼女はよく判らないが女性の後ろをついて行く。
(大和クン、ホントに元気にしてるといいんだけど……)
そう思いつつ、少女は彼女の先導によってターミナルビル屋上へと向かう。
そして紙越町へと向かうのだった。
俺たちは自分たち以外いない静かな教室に集まっていた。
俺が部隊の皆に放課後に集まる様に言っておいたからだ。
そして俺が皆を集めた理由はベアを部隊に入れるか否かを聞くためだ。
「……で、スプリンガーさん。あなたが密入国をした理由は家出をしたから……って、どういうことなのかしら」
渚は腕を組みながらそうベアへと問うた。
「そのままの意味ですわ。家出をして、逃げるために日本に来たんですの」
彼女は問いに答えた。
「海を越えた家出……ってことでいいのかしら」
「ええ。ドイツから日本……半日くらいかかりましたわ」
「国を超えた家出なんて初めて聞いたよ……」
家出のスケールが巨大すぎる。
あまりのスケールの大きさに思わず呆れてしまうほどだ。
「それで、なんであなたは家出を?」
「……居心地が悪かったんですのよ」
「居心地が悪い?」
ええ、とベアが頷く。
そして一度深呼吸をすると言った。
「……わたくしの両親は七年前のあの日、逝ったんですの」
七年前のあの日……2020年のオリンピックか。
五万人もの生命が一瞬にして空へと消えていった人類史上最悪のテロだ。
彼女の両親もあのテロの被害者だったのか。
「二人が身を盾にして守ってくれたお陰でわたくしは助かった。そしてわたくしは叔父様の家に引き取られたんですの」
「引き取られたんならよかったんじゃあ……」
「ええ、叔父様はわたくしを実の子と同じくらいに可愛がってくれましたわ」
でも、と一瞬表情を曇らせた。
「そんな優しさに触れていると……時々寂しくなるんですの。叔父様には申し訳ないんですけれど……」
「…………」
彼女の寂しさの原因は亡くなった両親だろう。
大切な人を失って負った傷を癒すための手段を持たない俺たちはなにも言えずに黙ってしまった。
「……うん、それなら仕方ないよね」
俺たちの間を流れる沈黙を破ったのは森さんだった。
彼女は一度目を伏せてから渚の方を向いて言った。
「渚ちゃん、もうベアちゃんは充分話したと思う。だから……」
「……そうね。ちゃんとした理由みたいだしね」
「……お心遣いありがとう」
ベアはそう短く礼を言った。
「さて、それじゃあ……」
最低限の素性を知った俺は彼女へと手を差し出した。
「ようこそ、俺たちの部隊へ」
「ええ。こちらこそお願いしますわ」
彼女は差し出した手に手を重ね、握った。
こうして俺たちの部隊に新たな仲間が加わり、俺たちの奪還譚は進められていく。
◇
──東京、とある駅
無数の人が行き交うその場所を一人の少女が歩いていた。
「大和クン、元気にしてるかな……」
少女が言葉にし、脳裏に浮かべるのは他でもない東条大和の姿だ。
彼は壮健であるか、どの様にして日々を過ごしているのか……彼女が考えていることは全て彼に関係したことだ。
「駅まで来たけど……迎えの人っぽいのはいないなぁ……」
どこだろう。辺りを見回してみる。
「伯父さんに連絡したら迎えを送るって言ってたけど……」
けれど迎えに来たらしき者はどこにもいない。
いないのならどうしようか。そう考えていた時だった。
「あなたが───様ですね」
「っ!」
突然背後から声をかけられ、彼女は咄嗟に振り向いた。
するとそこにはスーツに身を包んだ女性が立っていた。
「なんで私の名前を知って……」
「明慶様から貴女の警備を依頼されたので」
「伯父さんが……?っていうか、警備って……」
大袈裟じゃないだろうか。
そう言いかけたが女性は、
「大袈裟ではありませんよ」
と心の中を読んだかの様に答えた。
「紙越町は今危険な状態にあるんです。警備なしで行こうものなら墓標が立つことになります」
「ええ……?」
「詳しいことは駅ビル屋上に停めてあるヘリ機内で話します。ついて来て下さい」
そう言って女性は先導する様に歩き始める。
彼女はよく判らないが女性の後ろをついて行く。
(大和クン、ホントに元気にしてるといいんだけど……)
そう思いつつ、少女は彼女の先導によってターミナルビル屋上へと向かう。
そして紙越町へと向かうのだった。
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