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兵革の五月[May of Struggle]
Mission38 七人の王
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──対テロ組織“イージス”本社
テロ鎮圧、身辺警護、テロ被害者への支援などを行う民間軍事会社の一つ、イージス。
その本社にある会議室に七人の人間が集まっていた。そんな彼らは七角の卓を囲む様にして座っている。
「……さて、全員集まったな」
会議室中に一人の男の冷たく太い声が反響する。
彼はイージスの総帥、つまりイージスの全てを束ねる立場にある者だ。
そして他の六人も総帥に近い位にある者たちだった。
「今回全員に集まって貰ったのは対テロ党に関しての話をするためだ」
「話?電話じゃダメだったのかい?わざわざ中東総支部からやって来るのは大変だったんだけどね」
六人のうちの一人が腰のホルスターから拳銃を抜き、それを回しながら問うた。
総帥はその問いに深く頷き答えた。
「ダメだ。無線通信では対テロ党に傍受される危険性があるからな」
「傍受されちゃまずい話なんですか?」
白衣をまとった少女がそう総帥へと訊いた。
彼女は十代後半であるが他の六人同様に上級職員であり、その若さからは考えられない実力を持っている。
そのため、彼女を若輩者だと見下げる者は社内にはいない。
「ああまずい。故に完全防音、外部からの攻撃を完全に遮断するこの部屋に呼んだんだ」
「原始的ではあるが安全な方法を取ったってワケだな」
眼鏡をかけた理知的な黒人男性がそう言った。
彼は筋肉質且つ引き締まった身体を持ち、スーツを崩さずに着ている。
「そういうことだ。それじゃあ話すとしようか」
総帥である男は一度卓を指で叩いた。
すると卓の表面に二人の人物の画像が表示される。
それはベアトリクス・スプリンガー、そして紅宮篝の二人だった。
「先日イージス学園に二人の編入生がやって来た。一人はドイツからやって来て、もう一人は対テロ党所属の戦闘員だ」
総帥は卓の表面を指で滑らせる。
すると対テロ党所属の紅宮篝の画像が大きく表示された。
「彼女が対テロ党所属の戦闘員だ。彼女が学園に編入した理由はもう一人の編入生、ベアトリクス・スプリンガーがテロリストであるという容疑がかけられていたからだ」
「……テロリストである彼女を捕縛するためにやってきた。そういうことなの?レイコ」
そう問うたのは快適な室温だというのにも関わらず毛皮の帽子に毛皮製のオーバーという暑苦しい装いの女性だ。
その問いに隣に座る人物はゆっくりと頷いた。
「ええ。そして二人は勝負をするんですが対テロ党の紅宮さんは敗北、スプリンガーさんが勝利をしました」
「それじゃあ逮捕できなかったんですか?」
「ええ。それにテロリストではないということが判明しましたしね。その後二人は仲の良い友人となりました」
微笑みを浮かべつつ、紙越学園学園長 宇治橋礼子は言った。
しかし、
「それだけならば良かったんですがねぇ……」
と微笑みはやや悲しげなものへと変わっていった。
「……?なにかあったんですか?」
「これを見て下さい」
そう言って彼女は懐からとあるものを取り出す。
ICチップだ。複数の回路が張り巡らされたそれは小さな袋に入れられている。
一見すると変哲もないただのチップだがそれを見てその場にいた全員が内心で驚きを必死に隠していた。
「それは……」
「紅宮さんの武器から見つかりました」
「エクセリクシチップ、ですの?対テロ党が持っているだなんて……」
軍服風の装いの上に外套をまとった女性は彼女へと問うた。
宇治橋はその問いに首を横に振った。
「いえ、エクセリクシとは違う様です。模造品……といったところでしょう」
「チップの模造品……そんなものが?」
エクセリクシチップは全容が明らかにされていない。
対テロ党がそんなものを模倣して贋物を作り出せるなどイージス上層部も把握していなかった。
「ええ。このチップも使用者に力を与える様ですが紅宮さんは戦闘中になにかに取り憑かれた様な状態になりました」
「それはそのチップによるもの……なのか」
「恐らくは。行動原理を力にできるという点はエクセリクシチップと似ていますがあれは使用者を操る様なことはしません」
そう言って彼女は卓上にチップを置いた。
すると早速彼女の隣にいた総帥がそれを指でつまんで持ち上げて、吟味する様に見た。
「ふむ……こんなものまで作り出した対テロ党の目的を知りたい。しかし下手に行動はできないな……」
「……正直言って対テロ党はきな臭い。それに民間企業であるイージスを快く思っていない様だしな、隙を見て潰そうとしてくるかもしれん」
眼鏡のブリッジを指で押し上げ、黒人の男性は言った。
「そうだな、礼子。お前には引き続き学園の長として彼女の監視を行ってもらうとして……沙織」
「はーい、なんですか?」
「このチップはお前が管理していてくれ」
総帥は卓上に滑らせる様にしてチップを白衣の少女へと渡した。
すると少女は年相応の笑みを見せ、
「いいんですかっ?やったぁ」
とそのまま大事そうに懐中に仕舞った。
「今後対テロ党の動向は更に注目しておかねばならない。故に欧州、中東、ロシア、アフリカ……各総支部から集まって貰ったばかりで申し訳ないがお前たちにはしばらく日本に滞在してもらう」
「……それは対テロ党の動向を監視するためか」
「そうだ。偽物のチップに対テロ党所属の編入生……向こうはこちらを監視するつもりの様だからな。こちらも奴らの出方を窺う必要がある」
総帥がそう言うと全員が沈黙した。
それは彼の意見に対して肯定をしたということだ。
「GR、対テロ党……我々にとって厄介な存在は他にもある。それらを排除するために総帥である私とお前たちがいる」
「ええ。判っていますわ、総帥様」
「ああ。俺たちがやるべきことは判ってる」
「ならばよし。テロのなき世を、怒りのなき世を創るために……我々は戦い続けなくてはならない」
彼らはテロを根絶し、世の平安を保つために戦うということを改めて決意をする。
そして物語は六月へと続く──……
テロ鎮圧、身辺警護、テロ被害者への支援などを行う民間軍事会社の一つ、イージス。
その本社にある会議室に七人の人間が集まっていた。そんな彼らは七角の卓を囲む様にして座っている。
「……さて、全員集まったな」
会議室中に一人の男の冷たく太い声が反響する。
彼はイージスの総帥、つまりイージスの全てを束ねる立場にある者だ。
そして他の六人も総帥に近い位にある者たちだった。
「今回全員に集まって貰ったのは対テロ党に関しての話をするためだ」
「話?電話じゃダメだったのかい?わざわざ中東総支部からやって来るのは大変だったんだけどね」
六人のうちの一人が腰のホルスターから拳銃を抜き、それを回しながら問うた。
総帥はその問いに深く頷き答えた。
「ダメだ。無線通信では対テロ党に傍受される危険性があるからな」
「傍受されちゃまずい話なんですか?」
白衣をまとった少女がそう総帥へと訊いた。
彼女は十代後半であるが他の六人同様に上級職員であり、その若さからは考えられない実力を持っている。
そのため、彼女を若輩者だと見下げる者は社内にはいない。
「ああまずい。故に完全防音、外部からの攻撃を完全に遮断するこの部屋に呼んだんだ」
「原始的ではあるが安全な方法を取ったってワケだな」
眼鏡をかけた理知的な黒人男性がそう言った。
彼は筋肉質且つ引き締まった身体を持ち、スーツを崩さずに着ている。
「そういうことだ。それじゃあ話すとしようか」
総帥である男は一度卓を指で叩いた。
すると卓の表面に二人の人物の画像が表示される。
それはベアトリクス・スプリンガー、そして紅宮篝の二人だった。
「先日イージス学園に二人の編入生がやって来た。一人はドイツからやって来て、もう一人は対テロ党所属の戦闘員だ」
総帥は卓の表面を指で滑らせる。
すると対テロ党所属の紅宮篝の画像が大きく表示された。
「彼女が対テロ党所属の戦闘員だ。彼女が学園に編入した理由はもう一人の編入生、ベアトリクス・スプリンガーがテロリストであるという容疑がかけられていたからだ」
「……テロリストである彼女を捕縛するためにやってきた。そういうことなの?レイコ」
そう問うたのは快適な室温だというのにも関わらず毛皮の帽子に毛皮製のオーバーという暑苦しい装いの女性だ。
その問いに隣に座る人物はゆっくりと頷いた。
「ええ。そして二人は勝負をするんですが対テロ党の紅宮さんは敗北、スプリンガーさんが勝利をしました」
「それじゃあ逮捕できなかったんですか?」
「ええ。それにテロリストではないということが判明しましたしね。その後二人は仲の良い友人となりました」
微笑みを浮かべつつ、紙越学園学園長 宇治橋礼子は言った。
しかし、
「それだけならば良かったんですがねぇ……」
と微笑みはやや悲しげなものへと変わっていった。
「……?なにかあったんですか?」
「これを見て下さい」
そう言って彼女は懐からとあるものを取り出す。
ICチップだ。複数の回路が張り巡らされたそれは小さな袋に入れられている。
一見すると変哲もないただのチップだがそれを見てその場にいた全員が内心で驚きを必死に隠していた。
「それは……」
「紅宮さんの武器から見つかりました」
「エクセリクシチップ、ですの?対テロ党が持っているだなんて……」
軍服風の装いの上に外套をまとった女性は彼女へと問うた。
宇治橋はその問いに首を横に振った。
「いえ、エクセリクシとは違う様です。模造品……といったところでしょう」
「チップの模造品……そんなものが?」
エクセリクシチップは全容が明らかにされていない。
対テロ党がそんなものを模倣して贋物を作り出せるなどイージス上層部も把握していなかった。
「ええ。このチップも使用者に力を与える様ですが紅宮さんは戦闘中になにかに取り憑かれた様な状態になりました」
「それはそのチップによるもの……なのか」
「恐らくは。行動原理を力にできるという点はエクセリクシチップと似ていますがあれは使用者を操る様なことはしません」
そう言って彼女は卓上にチップを置いた。
すると早速彼女の隣にいた総帥がそれを指でつまんで持ち上げて、吟味する様に見た。
「ふむ……こんなものまで作り出した対テロ党の目的を知りたい。しかし下手に行動はできないな……」
「……正直言って対テロ党はきな臭い。それに民間企業であるイージスを快く思っていない様だしな、隙を見て潰そうとしてくるかもしれん」
眼鏡のブリッジを指で押し上げ、黒人の男性は言った。
「そうだな、礼子。お前には引き続き学園の長として彼女の監視を行ってもらうとして……沙織」
「はーい、なんですか?」
「このチップはお前が管理していてくれ」
総帥は卓上に滑らせる様にしてチップを白衣の少女へと渡した。
すると少女は年相応の笑みを見せ、
「いいんですかっ?やったぁ」
とそのまま大事そうに懐中に仕舞った。
「今後対テロ党の動向は更に注目しておかねばならない。故に欧州、中東、ロシア、アフリカ……各総支部から集まって貰ったばかりで申し訳ないがお前たちにはしばらく日本に滞在してもらう」
「……それは対テロ党の動向を監視するためか」
「そうだ。偽物のチップに対テロ党所属の編入生……向こうはこちらを監視するつもりの様だからな。こちらも奴らの出方を窺う必要がある」
総帥がそう言うと全員が沈黙した。
それは彼の意見に対して肯定をしたということだ。
「GR、対テロ党……我々にとって厄介な存在は他にもある。それらを排除するために総帥である私とお前たちがいる」
「ええ。判っていますわ、総帥様」
「ああ。俺たちがやるべきことは判ってる」
「ならばよし。テロのなき世を、怒りのなき世を創るために……我々は戦い続けなくてはならない」
彼らはテロを根絶し、世の平安を保つために戦うということを改めて決意をする。
そして物語は六月へと続く──……
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