ヴァイオレント・ノクターン

乃寅

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六月

Mission2 ブリーフィングby 大和

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──翌朝

放課後、俺たちは教室に集められた。
その理由はこの後任務ミッションだからだ。
ミッション前のブリーフィングとして集められた俺たちは部隊ごとで固まって空いている席に座り、湖城こじょう先生の話を聞く。

「──で、以上が今回のミッションの内容だ。三十分後ミッション開始だ。それまで各自準備を済ませておく様に」

彼女が解散と言い、皆がバラバラと席から立って教室から出て行っても俺たちはまだ残っていた。

「…………」
「みんな、どうした?」

俺は考え事でもしているのかぼうっとしている皆にそう声をかけた。
するとびくりと身体を震わせ、「な、なに……?」と言った。

「もうブリーフィング、終わったよ?」
「ああ……」

皆辺りを見回して俺たち以外いないことに気付く。
俺が声をかけたことで我に返った様だ。

「いいの?早く用意しないと……」
「……それもそうだな。赤城あかぎくん、ヘリの用意をしに行くぞ」
「……りょーかい」

俺たちの後方支援を担当する直巳と神崎さんは二人揃って足早に去っていった。

「……さて、わたくしたちも用意をしませんとね」
「みんな大丈夫?ぼーっとしてたみたいだけど」
「うん……大丈夫」

そうは言うが一人ではなく、皆揃ってぼぅっとしているというのはどうなのだろうか。
ミッション前だというのにこれではまずい。俺が引っ張っていかなくては。
俺はそう意気込むと手早く出撃準備を済ませ、ヘリに乗り込む。

「……そういや、今回のミッションの内容ってなんだっけ?」

ヘリが離陸して数分、レイは言いにくそうに言った。

「あら、先生が言っていたじゃない。今回のミッションは……あら?」

渚は一度首を傾げる。

「渚?」
「……ごめんなさい、ワタシも内容を忘れて……いえ、聞いていなかったわ」

髪に手をやると自身の毛先をいじりながらそう言った。
彼女ならば話を聞いているだろうと思ったので意外だった。

「……すまない。私もだ」
「わたしも……」
「わたくしもですわ……」
「……俺も」

話を聞いていなかったのは二人だけかと思ったらそれは違った。
神崎さん、森さん、ベア、直巳の四人もだ。

「直巳はとにかく……他のみんなは聞いてそうなのに?」
「俺はとにかくって……バカにされてね?」
「気のせいだよ」

そう言うと直巳は「気のせいだったか」と納得した様にヘリの操縦に専念する。
……やはり彼はかなり単純だ。

「まさかみんな聞いてなかったなんてなぁ……」
「東条くんは聞いてた?」
「一応ね。じゃあ俺が判りやすくミッションの内容について話すよ」

俺以外聞いていなかったのであれば仕方がない。
一度息を吸うと俺は皆に説明を始める。

「今回のミッションは神機しんきの破壊だよ」
「神機か……」

その単語を聞いて皆しち面倒だという様な表情を浮かべた。
神機というのはアームズメイカーという軍需企業が開発した次世代の兵器だ。一機だけで一国の軍事力を変えると言われている。
俺たちがこれまでに遭遇した神機は巨大な人型ロボット“スサノオ”と雷を操る“タケミカヅチ”の二種類だけだ。

「めんどくさいね……それって起動してない状態?」
「いや、湖城先生によるとそれは既に起動している状態になってるらしい」
「……なら、交戦は必至ね……」

狙撃銃の銃身に指を這わせる様にしながら渚は言った。

「うん、でも今回の神機は特殊らしい……」
「特殊?」
「そう。GR占領地の真ん中に大穴があるけど、そこ付近にしか現れないとか……」

GRの占領する土地の中心には直径一キロほどの大穴が穿たれている。
隕石が落ちてできたクレーターの様な形状をしており、それは間違いなくGRかれらの仕業だろうとイージスは推測している。

「大穴ァ?あそこってなにかあったっけ?」
「いや、まだイージスは調査してないって聞いた」
「……怪しいわね。調査していない場所に現れるだなんて……」
「うん、まるで調査するのを阻んでいるみたい……」

今回破壊する神機は大穴付近に現れる。
あたかもそこを守る守護者の様である。

「うん。それで大穴の調査をするためにまずは神機を破壊して欲しいってさ」
「それで……その神機の情報はないんですの?」
「あるにはあるけど……」

いくつか先生からブリーフィングの際に聞いた。
やはりこれも皆聞いていなかった様だ。
一体どうしたのだろう、何故ブリーフィングの間ぼぅっとしていたのだろうか。それも俺を除く全員が。

「けど?」
「あまり役に立ちそうなものとは思えない」
「大丈夫。聞かないよりは聞いといた方がいいだろうし」
「……ブリーフィングの時点で聞いておいた方がいいと思うけどね」

そうしていれば今こうして俺が説明をするという手間も省けるのだから。
それにミッションは命のかかった仕事だ。惚けた状態でいるのは非常に危険である。

「まあいいや。その神機は素早い動きでイージスの一個分隊を全滅させたらしいってさ」
「全滅……神機と交戦するんならそれも覚悟しないとだよね」
「それで神機の姿形ってどんな感じなのかな?」
「それも判らないらしい。素早い動きに加えて死角からやられたらしくて情報が得られなかったらしいから」

真っ正面からやられたとすれば目につけているコンタクト型コンピュータがその神機の姿を捉えて、リアルタイムで姿の情報を送るはずだ。
だというのに姿の情報がないというのは死角、つまりコンタクトで捉えられない位置からやられたという証左になる。

「情報がない神機……厄介ですわね」
「ああ。敵の情報がないというのは不利だからな」
「とにかく死角からの攻撃に警戒して、神機を倒すしかないね……」

──そう、そうするしか攻略法はない。
つまり今回のミッションは今まで以上に一瞬たりとも油断はできない。
一瞬の油断、それは死へと直結する。

「……もうすぐ目的地に着くぜ」

操縦しながら直巳はそう言った。
俺たちは最後に武器や装備の確認などを軽く行う。

「よし、今回のミッションも頑張ろう」
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