91 / 92
六月
Mission15 仲間への問い
しおりを挟む
その声の主は鶫だった。
対テロ戦闘員でない彼女の声がこの無線機から流れる……ありえない出来事に肝を潰した。
「なんで鶫がこの無線に……!?」
驚きを隠せない。
しかし彼女は落ち着き払っており、ゆっくりとその答えを教えてくれる。
〈実は大和クンたちの……任務、だっけ。見せてもらってたんだ〉
「なんでそんなこと……っていうか鶫が見てもOKなの?ミッションの様子って」
〈……私と森さんで学園長に掛け合ったんだ。彼女がミッションの様子を見られる様に〉
神崎さんがそう説明をする。
「うん、ダメ元でね……でも学園長が頷いてくれてね」
〈ああ。『それが生徒のためになるならば』と許可してくれた〉
「それなら教えてくれればよかったのに……」
しかもみんなは知っているらしく、俺だけ知らなかったらしい。
なんだか除け者にされている様だ。気分が悪い。
しかし鶫は〈ううん〉と首を横に振った。
〈お願いしたの。私がミッションを見てるってことを内緒にしてって〉
「なんでそんなことを……」
森さんをはじめとしたみんなに答えを求める様に視線を向けるが皆静かだ。
その数瞬の静寂を破る様にして、
〈……普段の大和クンを見たかったんだ〉
鶫は答えた。
「普段の、俺……?」
〈あんなことがあった後だし……人との関わりを怖くて避けてるんじゃないかって思って〉
「……もしかしてこっちに来たのって……」
〈大和クンの様子を見るためだよ。大和クンを見るまで心配だったけど……うん、大丈夫そうだね〉
彼女はそう言った。
自分だって暴行を加えられる寸前だったというのに俺の心配をしていたとは……。
〈それと……ごめんね、大和クン。私のせいであんなことに……〉
「……いや、大丈夫だよ」
鶫は謝罪をするがその必要はない。首を横に振った。
〈え、でも……〉と申し訳なさそうにする彼女にその理由を説明する。
「俺が選んだことだしね、鶫が謝るのはお門違いだ」
〈…………〉
「それに……元々あいつらは嫌いだったんだ、ああいう他人を自分たちと同じ位置に引きずり込もうとするだけで努力をしないあいつらが」
せっかく私立の進学校に来てまで学びに来たというのに彼らは学ぼうとする姿勢が、努力しようとする意気が見られなかった。
それどころか他人を水底に沈めてしまおうという心持ちが気に入らない。
「ああいう人間を追い払えたんだから学校にいい貢献ができたんだから気にしてないよ」
〈でも……〉
「……俺自身が自分の別の顔を見るいい機会になった。その授業料だと思えば安いよ」
とにかく鶫に「気にしていない」などの類の言葉を言った。
そしてようやくそれを信じられたらしく、ほっと一息ついた。
〈……本当にごめん、それにありがとう。守ってくれて〉
「この後もミッションの様子を?」
〈うん、できれば見たい〉
「判った。それじゃあそろそろ行こう……」
と、したがぴたりと足を止めた。
「……その前にみんなに聞いておきたいことがあるんだ」
「わたしたちに……?」
対テロ戦闘員でない彼女の声がこの無線機から流れる……ありえない出来事に肝を潰した。
「なんで鶫がこの無線に……!?」
驚きを隠せない。
しかし彼女は落ち着き払っており、ゆっくりとその答えを教えてくれる。
〈実は大和クンたちの……任務、だっけ。見せてもらってたんだ〉
「なんでそんなこと……っていうか鶫が見てもOKなの?ミッションの様子って」
〈……私と森さんで学園長に掛け合ったんだ。彼女がミッションの様子を見られる様に〉
神崎さんがそう説明をする。
「うん、ダメ元でね……でも学園長が頷いてくれてね」
〈ああ。『それが生徒のためになるならば』と許可してくれた〉
「それなら教えてくれればよかったのに……」
しかもみんなは知っているらしく、俺だけ知らなかったらしい。
なんだか除け者にされている様だ。気分が悪い。
しかし鶫は〈ううん〉と首を横に振った。
〈お願いしたの。私がミッションを見てるってことを内緒にしてって〉
「なんでそんなことを……」
森さんをはじめとしたみんなに答えを求める様に視線を向けるが皆静かだ。
その数瞬の静寂を破る様にして、
〈……普段の大和クンを見たかったんだ〉
鶫は答えた。
「普段の、俺……?」
〈あんなことがあった後だし……人との関わりを怖くて避けてるんじゃないかって思って〉
「……もしかしてこっちに来たのって……」
〈大和クンの様子を見るためだよ。大和クンを見るまで心配だったけど……うん、大丈夫そうだね〉
彼女はそう言った。
自分だって暴行を加えられる寸前だったというのに俺の心配をしていたとは……。
〈それと……ごめんね、大和クン。私のせいであんなことに……〉
「……いや、大丈夫だよ」
鶫は謝罪をするがその必要はない。首を横に振った。
〈え、でも……〉と申し訳なさそうにする彼女にその理由を説明する。
「俺が選んだことだしね、鶫が謝るのはお門違いだ」
〈…………〉
「それに……元々あいつらは嫌いだったんだ、ああいう他人を自分たちと同じ位置に引きずり込もうとするだけで努力をしないあいつらが」
せっかく私立の進学校に来てまで学びに来たというのに彼らは学ぼうとする姿勢が、努力しようとする意気が見られなかった。
それどころか他人を水底に沈めてしまおうという心持ちが気に入らない。
「ああいう人間を追い払えたんだから学校にいい貢献ができたんだから気にしてないよ」
〈でも……〉
「……俺自身が自分の別の顔を見るいい機会になった。その授業料だと思えば安いよ」
とにかく鶫に「気にしていない」などの類の言葉を言った。
そしてようやくそれを信じられたらしく、ほっと一息ついた。
〈……本当にごめん、それにありがとう。守ってくれて〉
「この後もミッションの様子を?」
〈うん、できれば見たい〉
「判った。それじゃあそろそろ行こう……」
と、したがぴたりと足を止めた。
「……その前にみんなに聞いておきたいことがあるんだ」
「わたしたちに……?」
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。
ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。
真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。
引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。
偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。
ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。
優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。
大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。
邪神の祭壇へ無垢な筋肉を生贄として捧ぐ
零
BL
鍛えられた肉体、高潔な魂――
それは選ばれし“供物”の条件。
山奥の男子校「平坂学園」で、新任教師・高尾雄一は静かに歪み始める。
見えない視線、執着する生徒、触れられる肉体。
誇り高き男は、何に屈し、何に縋るのか。
心と肉体が削がれていく“儀式”が、いま始まる。
Amor et odium
佐藤絹恵(サトウ.キヌエ)
ファンタジー
時代は中世ヨーロッパ中期
人々はキリスト教の神を信仰し
神を軸(じく)に生活を送っていた
聖書に書かれている事は
神の御言葉であり絶対
…しかし…
人々は知らない
神が既に人間に興味が無い事を
そして…悪魔と呼ばれる我々が
人間を見守っている事を知らない
近頃
人間の神の信仰が薄れ
聖職者は腐敗し
好き勝手し始めていた
結果…民が餌食の的に…
・
・
・
流石に
卑劣な人間の行いに看過出来ぬ
人間界に干渉させてもらうぞ
サイレント・サブマリン ―虚構の海―
来栖とむ
SF
彼女が追った真実は、国家が仕組んだ最大の嘘だった。
科学技術雑誌の記者・前田香里奈は、謎の科学者失踪事件を追っていた。
電磁推進システムの研究者・水嶋総。彼の技術は、完全無音で航行できる革命的な潜水艦を可能にする。
小与島の秘密施設、広島の地下工事、呉の巨大な格納庫—— 断片的な情報を繋ぎ合わせ、前田は確信する。
「日本政府は、秘密裏に新型潜水艦を開発している」
しかし、その真実を暴こうとする前田に、次々と圧力がかかる。
謎の男・安藤。突然現れた協力者・森川。 彼らは敵か、味方か——
そして8月の夜、前田は目撃する。 海に下ろされる巨大な「何か」を。
記者が追った真実は、国家が仕組んだ壮大な虚構だった。 疑念こそが武器となり、嘘が現実を変える——
これは、情報戦の時代に問う、現代SF政治サスペンス。
【全17話完結】
サディストの私がM男を多頭飼いした時のお話
トシコ
ファンタジー
素人の女王様である私がマゾの男性を飼うのはリスクもありますが、生活に余裕の出来た私には癒しの空間でした。結婚しないで管理職になった女性は周りから見る目も厳しく、私は自分だけの城を作りまあした。そこで私とM男の週末の生活を祖紹介します。半分はノンフィクション、そして半分はフィクションです。
母の下着 タンスと洗濯籠の秘密
MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。
颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。
物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。
しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。
センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。
これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。
どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる