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六月
Mission16 隊長である証
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「ああ。隊長として、ね」
「それは一体なにかしら?」
渚に問われ、心を落ち着けるために軽く息を吸った。
肺を満たす甘美な空気はほどよく緊張を和らげてくれた。
「……俺は鶫を助けるために彼らを半殺しにした。しかも傷付けた時に楽しんでいた……」
──こんな俺でも隊長として認めてくれるか。
そう言おうと思った時、
「あーもうっ!まだるっこしい!」
金髪の少女はそう叫ぶ。敵地のど真ん中だというのに、だ。
それに思わず気圧される。
「れ、レイ……?」
一体どうしたのだろうか。
彼女に手を伸ばそうとしたがその前に彼女は俺の両肩をがしりと掴んだ。
「どんな顔を持っててもヤマトはヤマトだって!」
そして俺に言った。
レイは叫ぶ様に言ったのでその勢いに負けてぽかんとしてしまう。
しかし数秒後にベアがそれに反応する様にくすっと笑った。
「ふふ、そうですわね。あなたは密入国者のわたくしを部隊に入れてくれた……」
「……監視目的とはいえワタシも部隊に入れてくれたわね、大和は」
滅多に見せぬ微笑みを浮かべながら渚も言った。
「みんな……俺が隊長でいいのかい?」
「うん」
間を置かずに森さんは頷いた。
「どんな一面を持っていても……みんな、君は優しいって知ってるから」
〈そーだな、俺たちはみんなお前を信じてる。だからついていってんだ〉
〈ああ。そういうわけだ。我々を導いてくれ、隊長〉
皆から信用の言葉を与えられる。
それに思わず涙が湧き出しそうになったが堪えた。
「……ありがとう」
同級生を半殺しにした罪の意識は残り続けるがみんなのお陰で薄れた。
そんな彼女たちに対して礼を言う。
「さぁ、それじゃあ行こうか。まだやるべきことは残ってる」
縛り付ける鎖がなくなった心は晴れやかだ。
俺は隊長として部隊を導くべく、走り出す。
それに従ってみんなも駆け出した。
「それは一体なにかしら?」
渚に問われ、心を落ち着けるために軽く息を吸った。
肺を満たす甘美な空気はほどよく緊張を和らげてくれた。
「……俺は鶫を助けるために彼らを半殺しにした。しかも傷付けた時に楽しんでいた……」
──こんな俺でも隊長として認めてくれるか。
そう言おうと思った時、
「あーもうっ!まだるっこしい!」
金髪の少女はそう叫ぶ。敵地のど真ん中だというのに、だ。
それに思わず気圧される。
「れ、レイ……?」
一体どうしたのだろうか。
彼女に手を伸ばそうとしたがその前に彼女は俺の両肩をがしりと掴んだ。
「どんな顔を持っててもヤマトはヤマトだって!」
そして俺に言った。
レイは叫ぶ様に言ったのでその勢いに負けてぽかんとしてしまう。
しかし数秒後にベアがそれに反応する様にくすっと笑った。
「ふふ、そうですわね。あなたは密入国者のわたくしを部隊に入れてくれた……」
「……監視目的とはいえワタシも部隊に入れてくれたわね、大和は」
滅多に見せぬ微笑みを浮かべながら渚も言った。
「みんな……俺が隊長でいいのかい?」
「うん」
間を置かずに森さんは頷いた。
「どんな一面を持っていても……みんな、君は優しいって知ってるから」
〈そーだな、俺たちはみんなお前を信じてる。だからついていってんだ〉
〈ああ。そういうわけだ。我々を導いてくれ、隊長〉
皆から信用の言葉を与えられる。
それに思わず涙が湧き出しそうになったが堪えた。
「……ありがとう」
同級生を半殺しにした罪の意識は残り続けるがみんなのお陰で薄れた。
そんな彼女たちに対して礼を言う。
「さぁ、それじゃあ行こうか。まだやるべきことは残ってる」
縛り付ける鎖がなくなった心は晴れやかだ。
俺は隊長として部隊を導くべく、走り出す。
それに従ってみんなも駆け出した。
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