守りたい、君のこと

プロローグ：静かな午後の風

僕の名前はユアト。
人を守りたい、と思うことが多い。特別な力があるわけじゃない。
ただ、目の前にいる誰かが傷つくのを見たくない、それだけだ。

二学期の始まり、校舎の廊下を歩くと、
まだ夏休みの余韻が残る空気が流れていた。
教室の中から聞こえる声、廊下を通る部活帰りの足音。
どれも普段通りで、なんの変哲もない日常。
でも僕にとっては、それが心地いい。

誰もが自分のことに精一杯で、
誰かのことまで気にかける余裕はあまりない。
だからこそ、僕は気づく。静かに悩んでいる人、
ちょっとしたことで心を痛める人。
そんな人たちを守ることが、
自分にできる小さな使命なのかもしれない。

「優しく、強く。」
それが僕の座右の銘というわけでもないけれど、
自然とそういう自分でいたいと思ってしまう。
優しさだけじゃ守れないときもあるし、
強さだけじゃ相手の心は温められない。
でも両方あれば、少しは誰かの力になれるかもしれない。

この物語は、特別な事件が起こる話じゃない。
ただ、僕が誰かと出会い、少しずつ心を通わせ、
そして守りたいと思う瞬間の連なりだ。

今日は、渡り廊下で――ユズホと出会う、
そんな小さな始まりの一日になる。