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第1章 ふたり、始まりの数分間
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六月の空は、もう夏を少しだけ
予告しているように、
陽射しがまぶしかった。
グラウンドに整列する
生徒たちの中で、俺――
ユウトは、妙に
落ち着かない気持ちで立っていた。
「次、ペアダンスのペアを発表します。」
放送部のマイクの声が響き渡るたび、
どこかそわそわした空気が流れる。
誰と組まされるのか。それは、
クラスの垣根を超えて、
まるで“運命”のように割り当てられていた。
「一年四組、鈴本ハルカさん。
二年四組、大庭ユウトくん。」
……え?
一瞬、聞き間違えたかと思った。
その名前は、たまに
校舎の廊下で見かける静かな子――
そう、“あの子”の名前だった。
「えっと……よろしくお願いします。」
小さくて透き通るような声。
俺の前に立つその子は、
丁寧にお辞儀をしてくれた。
短い髪、小さな瞳。
俺は言葉を返した。
「あ、うん……よろしく。」
それだけしか言えなかった自分が
情けなかった。
けど、胸の奥が、じわっと
熱くなったのを感じた。
ペアダンス。
手と手を繋ぎ、距離は近く、
時間は短い。
ほんの数分の演目。けれどその間、
俺の目はずっと彼女を追っていた。
表情は真面目で、一生懸命で、
だけどどこか楽しそうで――
「この子と、もっと話したい」
そう思ったのは、何の前触れもなく、
まるで自然現象みたいだった。
ダンスが終わったあと、
「お疲れ様」と彼女に言うと、
「お疲れ様です」と返してくれた。
その時の笑顔が、
どうしても忘れられなかった。
教室に戻っても、帰り道でも、
夜ベッドに入っても――
頭の中にいるのは、
ずっと鈴本ハルカという存在だった。
まだ、何も始まっていない。
でも、あの日のダンスから、
確かに何かが始まった気がした。
予告しているように、
陽射しがまぶしかった。
グラウンドに整列する
生徒たちの中で、俺――
ユウトは、妙に
落ち着かない気持ちで立っていた。
「次、ペアダンスのペアを発表します。」
放送部のマイクの声が響き渡るたび、
どこかそわそわした空気が流れる。
誰と組まされるのか。それは、
クラスの垣根を超えて、
まるで“運命”のように割り当てられていた。
「一年四組、鈴本ハルカさん。
二年四組、大庭ユウトくん。」
……え?
一瞬、聞き間違えたかと思った。
その名前は、たまに
校舎の廊下で見かける静かな子――
そう、“あの子”の名前だった。
「えっと……よろしくお願いします。」
小さくて透き通るような声。
俺の前に立つその子は、
丁寧にお辞儀をしてくれた。
短い髪、小さな瞳。
俺は言葉を返した。
「あ、うん……よろしく。」
それだけしか言えなかった自分が
情けなかった。
けど、胸の奥が、じわっと
熱くなったのを感じた。
ペアダンス。
手と手を繋ぎ、距離は近く、
時間は短い。
ほんの数分の演目。けれどその間、
俺の目はずっと彼女を追っていた。
表情は真面目で、一生懸命で、
だけどどこか楽しそうで――
「この子と、もっと話したい」
そう思ったのは、何の前触れもなく、
まるで自然現象みたいだった。
ダンスが終わったあと、
「お疲れ様」と彼女に言うと、
「お疲れ様です」と返してくれた。
その時の笑顔が、
どうしても忘れられなかった。
教室に戻っても、帰り道でも、
夜ベッドに入っても――
頭の中にいるのは、
ずっと鈴本ハルカという存在だった。
まだ、何も始まっていない。
でも、あの日のダンスから、
確かに何かが始まった気がした。
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