月夜の闇に煌めく星〜ゲイビの世界に愛はあるのか〜

はちこ

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リョウ

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「サクラがお前のこと気に入ってる」

まず、サクラがなにを指すのか理解すること。
お前のこと気に入ってる、というその音の意味を理解すること。

そこに、おそらく数秒要した。

「は?」

学食のラーメンをすすりながら朔良は、目の前に座るリョウを見上げた。リョウもまた、ラーメンをずるずるとすする。

「あ、シナチクいらん、ミツキ食べて」

朔良のラーメンに、リョウは当然のようにぽいぽいシナチクを入れる。

「お前嫌いなモンなんでも俺に押し付けんなよ」
「ミツキには感謝してるって」
「は?」

眉間にシワを寄せ、朔良は鋭い視線をリョウに送る。

そんな鋭い視線の裏で朔良は、あの日を思い浮かべていた。



あの日、小学生だったあの日。
家が近くて、幼い頃からよく遊んでいて。
あの日も、リョウの家で朔良は遊んでいた。

買ったばかりのゲームを持ち寄って、ワーワー騒いでいたところに飛び込んできたリョウの母親の顔は、真っ青で、今でも鮮明に思い出すことができる。

「ミツキ! 病院行くよ!」
「なんで?」
「お父さんが……運ばれたって」

事故だった。
突然父親がいなくなり、母子家庭になった。


それ以降、母親を支えたのはきっと、リョウの両親で、そして変わらず自分が楽しくやれたのは、リョウが変わらず隣にいてくれたからだと、朔良は思う。


「ミツキ最近なんかあった?」
「なにが?」
「いや……なんか変わったよな」
「え、なにが?」
「いやなんだろな? こうわずかーな変化なんだけど」
「別になんもねぇけど」
「なんか、前みたいにつまんなそうじゃなくなった」
「そーか? 今も前もつまんなくねぇよ?」
「いや前はつまんなそうだったよ、つーか、イライラしてる感じがあったな」
「ふぅん……」

明るくて、なんでもペラペラ話すリョウ。1人でペラペラ話し続ける。

「つーか話変えんなよ、サクラだよ」
「俺は別に変えてねぇよ」
「いちいちうるせぇな。サクラがな、ミツキくんいいよねって、言ってたぞ」
「いや、アイツはリョウが好きなんじゃねぇの? リョウの話すげぇしてたぞ」
「お前と話す話題が俺しかなかったんじゃねぇの?」
「えー? そんな感じじゃなかったけど……」
「前の彼女と別れてだいぶ経つじゃねぇか、いいんじゃねぇの? サクラ。可愛いし」
「アイツさ、なんかちょっとリョウと似てるよな」
「そーか? じゃぁ多分お前と上手くいくな」

リョウはズズッとスープをすすり、空になったどんぶりをドンっと机に置いた。

リョウが言うならそうかもしれない。

そんなことが、朔良の頭をよぎる。

「とりあえずミツキはさー、誤解されやすいんだよ。それをわかってくれて気に入ってくれただけで感謝しろよ」

今度は水をゴクゴクと喉を鳴らしながら飲み、ガツンとトレイに置いた。

リョウは、横目に朔良を見ながら、過ごしてきた日々を思い出す。

いつも頬杖をついて、何かを考えているようで、結局それを口には殆ど出さない。何を考えているか分からなくて。でも話すと、しっかりと思考していて、それを早く言えと何度も怒ったことがある。

「なんだよ……」
「別に……ミツキをわかってくれる奴いねぇかなぁー?」

そう言いながら、リョウは大きく伸びをした。


食べ終えたラーメンを返却口に片付けて、学食を出た。大学の広い中庭。高い太陽が、ジリジリと肌を焼き付ける。

「あっちぃなぁ」

吹き出した汗を拭くリョウの背中は、いつも、大きく見えた。昔から、自分の前を歩いて、引っ張って、そして周りに人を寄せ集めて。

それぞれに彼女ができたり、別のカテゴリーの友達ができたり、それでもたまにはこうして飯を食べて、いつも一緒にいるわけではないからこその、心地よさがあるような気がする。

そんなことを考えながら朔良は、遠くの雲を眺めた。

「あー! リョウくん! ミツキくん!」

前からぶんぶん手を振って走ってきたのは、噂をしていたサクラ。出会った頃より少し伸びた髪をなびかせて、反応の薄いふたりを気にも留めず、キラッキラと瞳を輝かせている。

そのキラキラした瞳は、リョウに向けられているものだと、さっきまでの朔良なら思っていただろう。そうじゃないかもしれないという自惚のような感覚に朔良は、なぜかゾワゾワと嫌な感覚が走った。それはサクラへの嫌悪感ではなくて、自惚れそうな自分への、苛立ち。







自惚れてしまえばいいのに。
感情に流されてしまえばいいのに。

そう思う自分を徹底的に潰してしまう、自分の理性。

こんな自分をどうしても俺は、好きになれない。


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