月夜の闇に煌めく星〜ゲイビの世界に愛はあるのか〜

はちこ

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想いのカタチ

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『なぁ碧生……』
『なに?』
『お前……腹……』
『うわっ! それ言わないでよぉー』 

少しだけついた、腹回りの肉を朔良が摘む。
ニヤリと笑う朔良に碧生は慌てて腹を抱えた。

『運動しなくなったらすぐ肉ついた』
『運動辞めて食べる量変えなかったら太るなぁ』
『正論…』
『見られてるからな?』
『はぁーい……』

座って、そんな会話をして、落ち込む碧生に朔良は、優しく微笑む。

髪を撫で、腕に触れて、そして碧生を組み敷き、ゆっくりと挿入する。

愛おしそうに碧生と見つめ合いながら、お互いに触れながら進む行為は、これが、ふたりで過ごす最後の時間であり、その時間がただ、愛おしいものであることを表していた。

『碧生、そのまんまでいてな……』
『朔良くん……』
『腹以外な……』
『ふふっ……』

長い長いキスの後、画面が暗転した。


「まさか朔良がそう来るとはなぁ」

パソコンでそれをチェックしていたSUUは、机に肘を突きながら呟いた。

寡黙でなにを考えているかわからない子だった。
それがミステリアスで、妖艶さを引き出せるかもしれないと思った。

そんなのは自分の思い上がりで、現実はモデル同士で、それぞれの良さを引き出した。

笑うと可愛らしい表情。
ウチに秘める熱い想い。
そして、溢れ出る、妖艶さ。


斗真がいて、凌空、弦、櫂。
彼らがそれを、引き出した。

そして今、後輩を育てるという想い。
事務所やこの世界に対する誠実な想いを見た。

それは、関係性に悩み、それを育む難しさの中で、後輩たちが引き出した朔良の新たな顔。

おそらく本人も気付いていない。
これこそが、相手あって生まれる化学反応。

そして、そんな朔良が涙ながらに言ったという。
ファンへ返したい、感謝の想い。
彼の想いが凌空を、弦を、動かした。

そして先ほど、櫂から連絡があった。
 

「朔良との絡みを、撮ってほしい」と。


あの頃、大変な思いをさせたメンバーたち。

嫌な撮影も。
プライベートを脅かされる事件も。

それでも続けてくれて、そして旅立って行ったあの子たちが、また集結してくれる。

朔良という、派手ではない。
地道に、真面目に誠実に。
実績を積んだモデルの想いが、カタチになる。

こんな嬉しいことはない。

前例がない。
普通じゃない。

ないなら作ればいい。
普通にしてしまえばいい。

引退しても、戻れる場所。
引退しても、また、出演できる場所。

そんな場所で、在り続けたい。

SUUは付箋を1枚剥がしてパソコンから取り出したDVDに貼り付けた。

『OK』と赤で大きく、印をつけて。







本当はまた、旅もの撮影をしたかった。

現実には、やはりそれは厳しくて。
凌空と弦は結局、絡みはしないと結論を出した。ふたりで、話し合って出した結論だった。代わりに2人が行うのは、ライブ収録。

ライブを楽しみにしていたファンも多く、それを収録し、DVDにのせる。

それぞれのやり方で、それがカタチになろうとしていた。


「櫂と朔良といえばあの海辺のキスよなぁー再現したるわ」


オレンジの照明で、それを再現するとKANは打ち合わせから息巻いていた。


馴染みある事務所の撮影用のベッドで、最後の絡みを、撮影する。何度となく、そこに横たわり、誰かと肌を重ね合い、そして、長い長い撮影を終え、朝を迎えた。


最後の撮影を終えた後、そこにはどんな景色が見えるのだろうか。


朔良は静かにその日を迎え、自宅を出た。
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